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2018年2月11日(日)

「影のNo.2」――威風堂々の金与正の「知られざる実像」

金正恩委員長と与正氏のツーショット


 北朝鮮は平昌五輪に金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長と金正恩党委員長の実妹・金与正(キム・ヨジョン)党宣伝先導部第一副部長らから成る高位級代表団を送り込んだ。

 最高権力機関の労働党執行部は政治局員(19人)と政治局員候補(11人)で構成されているが、御年91歳の金永南委員長は5人しかいない最高幹部の政治局常務委員である。金正日総書記の時代から党序列では常にNo.2の座にある。

 一方、昨年10月に政治局員候補に抜擢されたばかりの与正氏は序列では25位にランクされている。金永南委員長に比べてはるかに格下である。ところが、韓国政府もメディアも団長の金永南氏よりも、団員の一人に過ぎない与正氏にスポットを当てていた。それもこれも、最高権力者である金正恩委員長の実妹である与正氏が「影のNo.2」であり、兄の特使として派遣されてきたからに他ならない。

 与正氏は歳の割には威風堂々としていた。敵地である韓国に乗り込んできたにもかかわらず物怖じすることもなく、大統領官邸を訪れ、文在寅大統領と会見した際にも冗談を言うほどの余裕を見せるなど対等に渡り合っていた。

 与正氏については、ほとんどデーターがない。

 様々な情報を総合すると、与正氏は父・正日総書記と在日帰国者である母・高容姫(コ・ヨンヒ)氏との間に1987年9月26日に生まれている。国内ではなく、オーストリアのウィーンの病院で産まれたとの説もある。

 兄(1984年生まれ)よりも3歳年下の与正氏は幼児の頃から母親に連れられ外国を旅行しているが、1991年5月には兄ともども来日し、ディズニーランドに行ったことも確認されている。翌1992年にも7月20日から8月7日まで母親と一緒にスウェーデンでバカンスを過ごしていたことも確認されている。この時のパスポートの名前は「ジョンス」と記載されていた。

 与正氏は1998年(11歳)から2000年(13歳)まで正恩兄と同じスイスのべルン公立学校に留学しているが、その時の名前は「ジョン・スン」で、当時の学友らの話では趣味はイラストを描くことと踊りで、ダンス部に属していたそうだ。

 兄と共に2000年に帰国してからは消息が途絶えたが、10年後の2010年9月に開催された労働党代表者会の記念写真に「金正日総書記の第四夫人」と噂された秘書の金玉(キム・オク)氏の横に並んで写真に納まっていたことから俄然注目を集めた。

 父・正日総書記が死去(2011年12月17日)した際の追悼大会では後継者となった正恩氏の後ろに立っていたことから今後、兄をサポートする重要な地位に就くのではみられていた。

 与正氏が北朝鮮のメディアによって公然と報道されたのは2014年3月9日の最高人民会議選挙の時で、投票場に現れた金正恩第一書記(当時)に「同行した」と報じられた。最高幹部の崔龍海政治局常務委員や黄炳瑞軍総政治局長、さらには党組織部の金敬玉第一副部長の次に紹介されたことから党の重要な職に就いていることが明らかとなった。

 この日を境に兄の視察に公然と随行するようになり、同年3月17日には軍将兵らとともにモランボン楽団の公演も観覧した。また、5月10日の戦闘飛行技術競技大会の受賞式の写真には兄の後ろで受賞者に授与するメダルを手にしていた場面が映し出されていた。それでも、この時点ではどのような職責に就いていたかは不明だった。

 与正氏の職責が明らかにされたのは2014年11月27日で、兄の「4.16漫画映画撮影所」の視察に同行した際に「労働党中央委員会副部長」の肩書で、金基南政治局員兼書記、李在逸党第一副部長(宣伝担当)の次に紹介された。この日の労働新聞には兄の後ろでメモ用紙を片手に微笑を浮かべている写真も掲載された。

 父の正日総書記が28歳で、叔母の慶喜(ギョンヒ)書記が30歳で、それも指導員から課長と段階を経て副部長になっているのに比べ、若干27歳でいきなり党副部長抜擢とは明らかに異例の出世であった。与正氏が夫・張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長の失脚・処刑(2013年12月12日)で表舞台から姿を消した叔母に取って代わる存在になるのは自明だった。

 そして、昨年(2017年)10月に開催された労働党中央委員総会で若干30歳の若さで政治局員候補に選出された。政治局員候補に抜擢されたことで与正氏は党幹部の一人となった。金委員長以外は60〜80代までの高齢男性らで占められている政治局に若い女性がそれも副部長の地位で入局するのは前代未聞であった。父の実妹で与正氏の叔母にあたる慶喜氏が2010年に64歳で政治局入りしたことと比較すると、与正氏が異例の超高速出世を果たしたことがわかる。そして、今回、韓国に派遣された際には第一副部長に昇進していたことが確認された。

 与正氏もまたそのプライバシーは謎に包まれている。

 27歳となった2014年10月頃から「結婚しているのでは」との噂が流れた。翌2015年1月2日に左手の薬指に指輪がはめられている写真が公開されたことからほぼ確実とみられた。同年3月12日の部隊視察に同行した際には膨らんだお腹を隠すかのようにゆったりした服を着ていたことや踵の低いシューズを履いていたことから妊娠の可能性が取り沙汰された。この日を最後に5月29日にまでの47日間、動静が途絶えていたことからこの間に第一子を出産したものと推測される。

 金正日総書記の料理人として知られる藤本健二氏は2016年4月12日に訪朝した際に「与正氏は独身だと聞いている」と話しているが、韓国の情報機関・国家情報院は与正氏の夫の身元は把握できてないが、「2015年5月に出産したのは間違いない」と分析している。

 相手の男性については「崔龍海の次男説」から「大学教授説」まで様々流れているが、韓国政府は「どれも確認されてない」とコメントしている。

 なお、与正氏についてもしばしば健康不安説が取り沙汰されており、数年前から骨結核を患っており、抗結核藥を服用していると言われているが、これまた真偽は定かではない。



2018年2月4日(日)

トランプ政権が平昌五輪後に密かに検討している「鼻血作戦(戦略)」とは!

バンカーバスターの破壊力


 米国の次期駐韓大使に内定していた元6カ国協議次席代表のビクター・チャ氏が内定を取り消された理由がトランプン政権の対北軍事オプションの一つである「鼻血(ブラッディ・ノーズ Bloody nose)戦略」に異を唱えたことにあると報道されている。

 平昌五輪の開幕式に出席するアントニオ・グテーレス国連事務総長は2日、国連本部での韓国特派員らとのインタビューで北朝鮮の核問題を解決する手段として「良い軍事手段」としてトランプ政権内で検討されているこの「鼻血戦略」、又は「鼻血作戦」について「非常に悲劇的な状況の始まりとなる」と述べ、反対の立場を表明していた。

 ホワイトハウスは「鼻血作戦」について「あずかり知らない」としてトランプ政権内では「一度も使ったこともない概念である」と否認しているが、この用語を最初に使ったのはどうやら英国のメディアで、米国の予防攻撃を称して使ったことからその後、独り歩きしてしまったようだ。しかし、この言葉が現実味を帯び始めたのは今年1月8日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の報道がきっかけで、同紙は「米国の一部高官が全面戦争を避けた北朝鮮先制攻撃を論議している」として、彼らはこの方法を「鼻血作戦」と呼んでいると伝えていた。

 「鼻血作戦」とは先に殴って、出血させることで震え上がらせ、反撃する気を喪失させる作戦のことである。あるいは、相手の報復を招かないレベルでの制限的打撃を加え、反撃したら、破壊も辞さないとの警告を発する作戦を指す。どちらにしても、先制攻撃であることには変わりはない。

 ホワイトハウス内でこの作戦を強く進言しているのはマクマスター大統領補佐官とポンペオCIA長官、それにNSC(国家安全保障会議)アジア担当専任補佐官ポッティンジャーら強硬派と囁かれている。「ソウルに重大な脅威を与えない軍事オプション」を公言しているマティス国防長官もトランプ大統領が決断すれば、従う考えのようだ。

(参考資料:「北朝鮮を容赦しない」一般教書演説で見せたトランプ大統領の「本気度」 )   

 「鼻血作戦」を実行に移す場合の攻撃対象としては米国が死活的脅威とみなしている核とミサイル施設が挙げられている。北朝鮮の核とミサイルは米国にとっての言わば、がん細胞でこれを外科手術で摘出するのが「鼻血作戦」の目的である。

 米国はすでに寧辺の核施設と咸鏡北道の豊渓里にある核実験施設、ミサイルが貯蔵されている平壌の山陰洞にある兵器研究所と日本海に面した新浦の潜水艦弾道ミサイル(SLBM)基地などのリストアップを終えているとされているが、北朝鮮からの報復という万一の場合も想定して、北朝鮮の施設への空爆ではなく、50年前に北朝鮮に拿捕されたまま返還されず、北朝鮮の軍事勝利品として展示され、一般公開されている米情報収集艦「プエブロ号」を爆撃、撃沈する案も検討されているようだ。どちらにしても、あくまで見せしめのための攻撃が「鼻血作戦」のようだ。

 攻撃手段として巡航ミサイル50〜80発搭載しているイージス艦や原子力潜水艦、合同直撃弾JDAMを搭載した米国の誇る「F−22」最先鋭ステルス戦闘機や930km離れた場所から半径2〜3km内で精密打撃が可能で、地下施設を貫通する空対地巡航ミサイル24基が搭載された「B-1B」戦略爆撃機、さらに空対地ミサイルを搭載した垂直離着陸可能な「F−35B」ステルス戦闘機などが動員される。

 米国はすでに米本土から「B―2」核戦略爆撃機を3機、射程200〜3000kmの空対地ミサイルを搭載した「B−52」核戦略爆撃機を6機、そして「B―2」だけに搭載される地下60メートルまで破壊できるバンカーバスター(GBU-57 MOP)もグアムに移して、実戦配備していると言われている。

 爆撃機24機、対潜ヘリ10機、早期警報器4機を含め90機が搭載されている原子力空母「カールビンソン」もすでにグアムに到着しており、これから朝鮮半島に向かう。原子力潜水艦も佐世保に寄港しており、「F−22」も2機が沖縄の嘉手納基地に配備されている。トランプ大統領の命令が下れば、いつでも作戦遂行は可能だ。

 米国のコラムニストであるデイビッド・イグナティウ氏は米紙「ワシントン・ポスト」(2月2日)での記事で「トランプ政権が北朝鮮攻撃を望むなら、何よりもイスラエルの教訓から学ぶべきである」として「鼻血作戦」に早まらないよう警告を発しているが、その教訓とは「(鼻血作戦は)迅速な打撃という利点はあるものの一旦攻撃を開始すれば、衝突を回避できないのがイスラエルの教訓である」と同氏は指摘している。

 国家安保研究所(INSS)の会議出席のためイスラエルのテレアビブを訪問したイグナティブ氏はこの「鼻血作戦」が会議での討論の中心テーマになったとして「イスラエルの事例」を通じて▲即時攻撃する場合、事前に知られないこと▲攻撃目標への十分な情報を持ってなければ攻撃しないこと▲敵が血まみれになれば戦争に引きずりこむことはないだろうと即断しないことであるとの三つの教訓をあげている。何よりも、「北朝鮮はイスラエルが過去に攻撃した敵(イラクやシリア)らと違って、核兵器を保有していることを留意すべきである」と同氏は警鐘を鳴らしている。

 トランプ大統領は1981年にイスラエルがイラクのオシラク原子炉を爆撃したことについて「国際社会から非難されたが、イスラエルは生存のためにするべきことをした」と当時、評価していた。

(参考資料:トランプ政権への北朝鮮の7枚の「対抗カード」 )    



2018年2月1日(木)

「北朝鮮を容赦しない」一般教書演説で見せたトランプ大統領の「本気度」

国連安保理理事国15か国に北朝鮮問題で協力を呼びかけたトランプ大統領


 トランプ大統領は大統領就任後初の一般教書演説で外交問題の解決策として「力による平和」を強調していた。とりわけ、当面の標的である北朝鮮については7度にわたって言及し、批判を展開し、金正恩政権の圧迫していた。

 昨年のように「北朝鮮が米国を脅かすなら今すぐに世界が見たことのない火炎と激しい怒りに直面するだろう」とか、国連演説での「米国と同盟を防御すべき状況になれば、他の選択の余地なく北朝鮮を完全に破壊するだろう」との威嚇的な言葉を使用しなかったことから韓国のメディアは総じて「節制された」と批評していたが、北朝鮮を「堕落した、残酷で無謀な政権」との烙印を押すことには変わりがなかった。

 共和党の先輩大統領のジョージ・ブッシュ大統領は北朝鮮を「悪の枢軸国」と位置づけ、時の権力者・金正日総書記を「ならず者」あるいは「暴君」と評し、また、前任者のオバマ大統領も政権末期に北朝鮮を「地球上で同じように作り出すのもほとんど不可能な最も残酷で暴圧的で独裁体制」と形容し、「このような体制は結局崩れることになるだろう」と酷評していたが、「金正恩政権ほど国民を残忍に圧制する独裁政権はない」と断じたトランプ大統領の北朝鮮認識は歴代大統領の中でも最悪である。

 国連演説でも「不良国家」「犯罪者集団」「完全破壊」「堕落した政権」などの用語を頻繁に用い、昨年11月に訪韓した際も「私がここ(韓国)に来たのは、北朝鮮の独裁体制指導者に直接伝えるメッセージを伝えるためだ。お前が持っている核兵器はお前を守るのではなく、お前の体制を深刻な脅威に陥れているのだ。暗い道に向かう一歩一歩はお前が直面する脅威を増加させるだろう。北はお前の祖父が描いていた天国ではなく、誰も行ってはならない地獄である」と、北朝鮮に「トランプ政権は最も望まないものを身の毛がよだつほど体験することになる。悪夢で思い浮かべた物凄い光景を確実に見ることになる」と激怒させるほどそれは痛烈なものだった。

 トランプ大統領は焦点の北朝鮮の核ミサイルについて「北朝鮮の無謀な核ミサイル開発はかなり近いうちに(very soon)米国脅かす。我々はそのようなことが発生しないように最大の圧迫作戦を展開している」と述べたが、軍事オプションも含めた最大限の圧力を掛ける理由については「私は我々を危険にさらした過去の政府の失敗を繰り返さない」からだと強調していた。

 トランプ大統領は過去にクリントン政権が北朝鮮との間に交わした「ジュネーブ合意」やブッシュ政権下での6か国合意(「9.19合意」)を取り上げ、これら合意はいずれも「米国を危険な状況に陥れてしまった失策」と一刀両断にし、北朝鮮に対する妥協や譲歩は侵略と挑発だけを招くことになる」と述べ、北朝鮮が白旗を上げない限り、北朝鮮との対話、交渉による問題解決に全く関心がないことを「宣言」した。

 「ジュネーブ合意」は1994年10月に交わされたもので重油支援や軽水炉建設など経済支援を見返りに北朝鮮に核施設の凍結、破棄を約束させた。また、「9.19合意」は2005年9月に米朝と日韓、それに中露の6か国による共同声明という形式で発表されたものでこれまたエネルギー支援や人道支援を担保に北朝鮮に核放棄を約束させていた。

 トランプ大統領の一連の強硬発言に対して北朝鮮の労働新聞は昨年11月21日付に「トランプは共和国の法に従って最高の極刑に処さねばならない」と言及していたが、今回のトランプ大統領の発言を見る限り、韓国の文在寅大統領が描く平昌五輪後の米朝対話の可能性は望み薄である。

 マクマスター大統領補佐官は昨年12月、CBSとのインタビューで「核を持った北朝鮮との共存は堪えられない」と語ったほか、今年もVOAとのインタビュ―(1月3日)で平昌五輪への参加表明など柔軟姿勢を示した金委員長の新年辞について「新年辞を聞いて安心する人がいるとすれば、正月にシャンペーンを飲みすぎたからだろう」と述べた上で「経済制裁がうまくいかない場合の次の選択は何か?」との問いに「軍事選択も含まれる。これは秘密でも何でもない。北朝鮮政権の協力をなく北朝鮮の非核化を強制的に導く」と北朝鮮への武力行使を示唆していた。

 トランプ大統領は「南北対話が行われている間はいかなる軍事行動もとらない」と文大統領に約束しているが、平昌五輪(2月9日―2月25日)とパラリンピック(3月9日―3月18日)が終了すれば、米韓連合軍は合同軍事演習に突入する。

 北朝鮮は平昌五輪の前日の8日に軍事パレードを予定しているが、北朝鮮が昨年11月29日に「発射に成功した」と豪語した米本土攻撃用のICBM「火星15号」を数基でも登場させれば、トランプ政権は「生産、配備の段階に入った」とみなし、米国の軍事オプションが作動するかもしれない。

 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(1月14日付)は「米国は静かに北朝鮮との戦争準備を進めている」と報じていたが、すでに原子力空母「カールビンソン」も朝鮮半島に向かっており、米特殊部隊も五輪期間中に韓国に「潜入」している。グアムには米本土から核戦略爆撃機「B−2]が3機、「B−52」6機がすでに配備されている。

 平昌五輪後に何が起きるのか、早くも祭りの後が心配になってきた。



2018年1月14日(日)

韓国が注目する「北朝鮮のマドンナ」―ヒョン・ソンウォル「モランボン楽団」団長

北朝鮮の国民的歌手「モランボン楽団」の団長(ヒョン・ソンウォル)


 平昌(ピョンチャン)五輪への北朝鮮の芸術団派遣を巡り明日(15日)、板門店で南北実務者会談が開かれる。

 単なる実務会談だが、北朝鮮側交渉団に元国民的人気歌手である玄松月(ヒョン・ソンウォル=本名はハン・ソンウォル)「モランボン(牡丹峰)楽団」団長が出席することとなり、韓国メディアの注目を浴びている。

 ヒョン・ソンウォルは金正日総書記の肝煎りで1985年に結成され、1990年代に一大ブームを巻き起こしたポップスユニット「ポチョンボ(普天堡)電子楽団」の専属歌手としてデビュー。今から15年前の2003年に歌った「駿馬(しゅんめ)の処女」が大ヒットして一躍トップ歌手として人気を博した。

 訪日歴もあり、1990年代初に来日公演した際に発売された「ポチョンボ電子楽団」の記念公演CDには彼女の歌が5曲含まれている。そのうち4曲が日本の歌で、小柳ルミ子の「瀬戸の花嫁」と森昌子の「おかさん」のほか戦前に流行った「タバコ屋の娘」もあった。

 「ポチョンボ電子楽団」は金総書記死去後の2012年7月6日に後継者の金正恩委員長の発案で「モランボン(牡丹峰)楽団」に名称が変更された。そのことは当時、朝鮮中央放送(2012年7月3日)が「元帥様(金正恩委員長)は将軍様(金正日総書記)が創られたポチョンボ電子楽団を継承した我々式の新たな軽音楽団を自ら結成して下さり、その楽団の名称を将軍様が好きだったモランボンと名付けられた」と伝えたことで明るみとなった。

 一方で「モランボン楽団」の結成は李雪主夫人の進言によるとの説もある。

 「ウナス(銀河水)管弦楽団」(2009年5月結成)の歌手だった李雪主夫人は「モランボン楽団」の運営に深く関わっていると言われている。実際に李夫人は結成直後の2012年8月25日の先軍革命発令2周年公演にも、同年10月29日に行われた金日成軍事総合大学創立記念公演にも、さらに翌2013年元旦の新年慶祝公演にも姿を見せていた。

 「モランボン楽団」に入団するには抜きんでた美貌と音楽的才能、すらりとした身体を兼ね備えてなければならない。未婚が前提で、身長は165cm、体重は50kgが条件。このうち一つでも欠けていれば、不合格となる。

 新人団員は当然、労働党宣伝先導部が選抜する。多くは少女の頃から英才コースを受け、北朝鮮の芸術家を養成する最高教育機関である「クムソン(金星)学院」や「平壌音楽舞踊大学」の卒業生で構成されるが、7人の歌手と10人の楽器演奏者から構成される最終的な選抜は李夫人の意見が反映されていると言われている。

 李夫人のアイデアなのか定かではないが、金委員長夫妻が鑑賞した楽団結成日(2012年7月6日)の模範公演では米国映画を舞台のバックスクリーンで流す一方、ディズニーのキャラクターそっくりの着ぐるみを登場させるなど異色的な公演を披露し、世界をあっと言わしめた。

 ヒョン・ソンウォルは結婚を機に一線から退いていたが、2012年3月8日の国際婦人デーの日に金正恩委員長が鑑賞した音楽会に現われた身重のヒョン・ソンウォルは司会者に促され、舞台に上がり、持ち歌の「駿馬の処女」を歌い、会場を大いに沸かせた。年齢不詳だが、現在40代とみられる。

 人気者であるがゆえに韓国メディアの格好のターゲット、餌食にされ、2013年8月にはポルノを製作し、販売に関わったとして「ウナス管弦楽団」や「ワンジェサン(旺載山)芸術団」など他の芸術人らと共に「公開処刑された」と韓国で報道されたこともあった。

 有力紙「朝鮮日報」(8月29日付)の「北朝鮮の『ウナス管弦楽団』所属芸術人十数人が淫乱物を作成、銃殺された」との記事に続き、朝鮮日報系の「TV朝鮮」が「ヒョン・ソンウォルも淫乱物関連で(8月)17日に逮捕され、20日に処刑された」と報道したため当時「ヒョン・ソンウォル死亡」は既成事実化されていた。またこの時「金正恩第一書記の昔の愛人として知られている歌手ヒョン・ソンウォル」と報じられたこともあって韓国では誰もが「金正恩の愛人」と受け止めていた。

 「モランボン楽団」で最初に功勲俳優となった人気歌手・リュウ・ジナもこの時、2013年12月に粛清され、処刑された金正恩の叔父、張成沢国防副委員長の「愛人であった」として「政治犯収容された」と報じられていた。

 しかし、ヒョン・ソンウォルは翌年の2014年9月に開かれた第9回全国芸術人大会に何と「モランボン楽団」の団長として現われた。軍服姿の彼女は最初の討論者として演壇に立ち、楽団の活動報告をしていたのだ。この大会ではリュウ・ジナも討論者として演壇に立っていた。韓国メディアの報道は誤報で、二人とも健在が確認された。

 「強盛大国」建設の宣伝隊でもある「モランボン楽団」は2015年10月に訪朝した中国序列5位の劉雲山政治局常務委員の訪朝を受け、中朝関係改善のシンボルとして功勲国家合唱団と共にこの年の12月に中国で公演をやる予定だったが、出し物をめぐって主催者の中国側とトラブり、公演直前にキャンセルして、引き揚げてしまった。この時、「モランボン楽団」訪中団を引率していたのがヒョン・ソンウォル団長であった。

 ドタキャン理由については諸説あるが、中国のネットに氾濫した「金正恩愛人説」などの中傷を中国当局が規制しなかったことに激怒したとか、演目に人工衛星の発射を称える歌が含まれ、その際、バックスクリーンにミサイル発射シーンが映り出されることをリハーサルで知り、中国側が曲目の変更を要求したことに反発したのでないかと言われていた。

 ヒョン・ソンウォルは昨年10月に開かれた労働党中央委員会第4期第2次全員会議で党中央委員候補に選出され、党幹部の仲間入りを果たしている。



2018年1月7日(日)

注目の金正恩委員長の仕事初めはいつ?経済視察か、軍部隊の視察か

新年辞を読み上げる金正恩委員長


 今年も背広姿で現われ、新年辞を読み上げていた金正恩委員長だが、マイクの前に立ったのが必ずしも1月1日の元旦とは限らない。昨年同様に事前収録の可能性も考えられる。

 元旦の午前0時に行われている恒例の錦繍山太陽宮殿参拝は報道されなかったところをみると、今年はなかったようだ。金委員長は最高指導者に就任して以来、毎年欠かさずに祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体が安置されている太陽宮殿を参拝していた。

 直近の3年間だけをみても、2015年は黄炳誓・軍総政治局長、玄永哲・人民武力相(この年の4月に処刑されている)、李永吉・軍総参謀長(2016年2月解任)ら軍指揮官だけを引き連れ、2016年は党幹部と軍指揮官らを伴い参拝していた。また、昨年の2017年は金永南・最高人民会議常任委員長、黄炳誓・軍総政治局長(11月失脚説が流れる)、朴奉柱・総理、崔龍海・国務副委員長ら4人の政治局常務委員を筆頭に党、軍幹部らがこぞって随行していた。それが今年は、不思議なことに「金委員長が参拝した」との報道がない。

 朝鮮中央通信によると元旦は金永南最高人民会議常任委員長を筆頭に朴奉柱総理ら党と政府関係者らだけが参拝していた。その中には金正恩委員長の実妹の金与正・政治局員候補も含まれていた。金与正氏は二列目に整列していた。しかし、これまた不思議なことに昨年10月に開催された労働党第7期第2次全員会議で黄炳誓、朴奉柱両氏を抜き、NO.3に浮上した崔龍海政治局常務委員の姿はなかった。また、軍幹部らの集団参拝もなかった。これまた異例のことである。

 軍幹部らの参拝は昨年12月から行われている冬季軍事訓練に追われているため見送られたのかは定かではない。しかし、元旦に軍司令官らの宮殿参拝が行われなかったのは極めて異例のことである。

 このことと直接関係はないが、1月7日現在、新年辞の発表以外、金正恩委員長の仕事初めに関する報道がないのもこれまた異例である。

 金委員長が最高指導者に就任した2012年から過去6年間の仕事初め(元旦の宮殿参拝を除く)をみると、以下のとおりである。

 2012年1月2日 銀河水管弦楽団の新年音楽会の鑑賞
 2013年1月1日 牡丹峰楽団の新年慶祝公演を鑑賞
 2014年1月7日 人民軍が建設した水産物冷凍施設を視察
 2015年1月1日 平壌育児園を視察
 2016年1月5日 人民軍大連合部隊の砲射撃を視察
 2017年1月5日 平壌カバン工場を視察

 年初めの金委員長の活動が一週間経っても伝えられないのは今年が初めだが、順当ならば、一両日中にも何らかの動静発表があってしかるべきだ。

 新年辞で経済に力を入れることを強調しているので、昨年同様に経済部門への視察が仕事初めになる可能性が高い。ただ、人民軍による軍事訓練が真っただ中にあることから軍部隊視察の可能性もゼロではない。

(参考資料:トランプ政権への北朝鮮の7枚の「対抗カード」 )  

 昨年末から今年元旦にかけてCNNやCBSなど米国のメディアはICBM「火星−15型」が発射された平安南道平城一帯で北朝鮮による新たなICBMの試験発射があると伝えているが、過去3年間を検証すると;

 2015年は1月中のミサイル発射はなく、2月になって6日に日本海に面した江原道・元山から新型艦隊艦ミサイルを、27日に同じく日本海に面した咸鏡南道・新浦で潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の水中実験を行っている。

 2016年は1月6日に核実験、2月7日に黄海に面した平安北道の東倉里から人工衛星(光明星4号)と称して事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を発射している。

 2017年は2月12日に平安北道・亀城からSLBMを地上型に改良した「北極星2型」発射している。

 金委員長が新年辞で「北と南は情勢を激化させることをこれ以上やるべきではない。軍事緊張を緩和し、平和的環境を作り出すため共同で努力しなければならない」と言っている以上、常識に考えれば、近々のミサイルは考えにくいが、それもこれも、9日の南北高官会談での北朝鮮側の対応で見えてくるだろう。

(参考資料:対話か、衝突か、どうなる?朝鮮半島 注目される金正恩委員長の新年辞  )   



2017年12月31日(日)

対話か、衝突か、どうなる?朝鮮半島 注目される金正恩委員長の新年辞

金正恩委員長


 元旦に行われる金正恩党委員長の新年辞が注目されている。

 昨年一年を総括し、新たな方針や政策を打ち出す新年辞は言わば、トランプ大統領の年頭教書や安倍総理の所信表明のようなものだ。

 但し、日米のそれと異なるのは、北朝鮮では金委員長の指示が絶対的で、無条件受け入れ、貫徹することが党・政府・軍幹部にとどまらず全国民に義務付けられている点だ。

 従って、北朝鮮は政治も経済も外交も軍事も何もかもすべてが金委員長の新年辞で始まると言っても過言ではない。実際に昨年も金委員長の「大陸間弾道ロケット(ミサイル)試験発射準備が最終段階に達した」の新年辞でのこの一言で北朝鮮のミサイルの乱射とトランプ政権との「チキンレース」が始まっている。

(参考資料:ゴングが鳴った「トランプvs金正恩」の危険な「ガチンコ対決」 )  

 新年辞は祖父・金日成主席の時代(1948―1994年)は今と同じように肉声で流されていた。それが、父・金正日総書記の時代(1995−2011年)になって突如廃止されてしまった。元旦の労働党機関誌「労働新聞」と軍の機関誌「朝鮮人民軍」、青年同盟の機関誌「青年前衛」による共同社説が新年辞の代替となった。

 金正日総書記が死去し、2011年12月に金正恩氏が最高指導者に就任したものの翌年(2012年)も新年辞ではなく、3紙共同社説であった。新年辞が復活したのは2013年からで、金正恩委員長は祖父の統治スタイルを真似、自らカメラの前で新年辞を読み上げ始めた。

 金正恩委員長の新年辞はライブではなく、事前収録したもので、2015年までは午前9時に発表されていた。それが、昨年(2016年)から正午12時(北朝鮮時間)に変更されている。理由は不明だ。

 金正恩軍最高司令官就任6周年となる昨日(30日)、労働新聞が「世界は2018年、自力自強(自力更生)の偉大な力を余すところなく発揮する我が国の姿にさらに大きな衝撃を受けることになるだろう」と不気味な予告をしたことから明日発表される新年辞で金委員長が何を語るのか、大いに注目されるが、過去3年間の軍事、対米、南北に関する言及は以下のとおり。

 軍事部門

 2015年 「核武力建設と国防力強化で新たな転換を起こし、軍事強国の威力を一層高めなければならない。人民軍は軍力強化の4大戦略路線と3大課業を徹底的に貫徹しなければならない」「国防工業部門では党の並進路線を貫徹し、軍需生産の主体化、現代化、科学科を終え、我々式の威力のある最先端武装装備を積極的に開発し、一層完成させなければならない」

 2016年 「人民軍を党の軍隊として一層強化発展させ、党が提示した4大強軍化路線貫徹で転換を起こさなければならない」「軍需工業部門は国防工業の主体化、現代化、科学科水準を一層高め、敵らを完全に制圧できる我々式の軍事的打撃手段をより多く開発・生産しなければならない」

 2017年 「朝鮮人民軍創建85周年となる今年は軍力強化で熱風を起こさなければならない」「国防部門では我々式の威力のある主体武器をより多く生産しなければならない」

 対米関係

 2015年 「米国は時代錯誤的対朝鮮敵視政策と無分別な侵略策動を止め、大胆な政策転換を行うべきだ」「我々は今後、国際情勢がどう変わろうと、周辺の関係構図がどう変わろうと、我々の社会主義制度を圧殺しようとする敵の策動が続く限り、先軍政治と並進路線を変わらず堅持し、国の自主権と民族の尊厳を守っていく」

 2016年 「米国は停戦協定を平和協定に替え、朝鮮半島で戦争脅威を除去し、緊張を緩和し、平和的環境を作ろうとする我々の公明正大な要求を一貫して無視し、時代錯誤の対朝鮮敵視政策にしがみつき、情勢を緊張激化に追いやっている」「米国は危険千万な侵略戦争演習を止め、朝鮮半島の緊張を激化する軍事挑発を中止すべきである」

 2017年 「米国は時代錯誤的な対朝鮮敵視政策を撤回する勇断をすべきだ」「米国とその追随勢力の核脅威と恐喝が続く限り、また我々の門前で『定例』のベールをかぶった戦争演習騒動を止めないならば、核武力を中枢とした自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化する」

 南北関係

 2015年 「民族が外勢によって分裂されてから70年の歳月が流れた。民族分裂の悲劇をこれ以上我慢もできなければ、容認もできない。朝鮮半島で戦争脅威を除去し、緊張を緩和し、平和的環境を作らなければならない」「我々は南朝鮮(韓国)当局が真に対話を通じて南北関係を改善する立場なら中断した高位級(高官)接触も再開できるし、部門別会談も開くことができると思っている。また、雰囲気と環境が整えられれば、最高位級(首脳)会談もやれないことはない。我々は今後も対話と交渉を実質的に進展させるためあらゆる努力を行う」

 2016年 「祖国統一3大原則と南北宣言などを含む民族共同の合意を大切にし、それに基づいて南北関係改善の道を切り開いていかなければならない」「我々は南北対話と関係改善のため今後も積極的に努力し、真に民族の和解と団結、平和と統一を望む人ならば誰とでも会って、統一問題を虚心坦懐、話し合う用意がある」

 2017年 「今年は歴史的な7.4共同声明発表45周年、10.4宣言(南北首脳会談共同声明)発表の10周年の年に当たる。今年、我々は全ての民族が力を合わせて、統一の大通路を開かなければならない」「南北関係を改善し、南北間の先鋭化した軍事的衝突と戦争脅威を解消するため積極的に対策を講じていく。我々は民族の根本利益を重視し、南北関係の改善を望む人とは誰とでも躊躇わず手を握るだろう」

 なお、昨年の新年辞では珍しくも最後に「新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなる。いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送った」と謙虚さを示したうえで「今年は一層奮発して全身全霊を傾けて、人民のためにより多くの仕事をするつもりである」と述べ、「人民の真の忠僕になる」と誓っていた。

(参考資料:トランプ政権への北朝鮮の7枚の「対抗カード」 )  



2017年12月29日(金)

北朝鮮が発射するのはICBMか、衛星ロケットか? 発射時期は?

グアム制圧を想定した地図を背にした金正恩委員長


 米CNNテレビは2日前(12月27日)、米情報当局者の話として北朝鮮が新たなミサイル発射を準備している兆候が確認されたと伝えていた。韓国のメディアも北朝鮮が近いうちに弾道ミサイルもしくは人工衛星用ロケットを発射する可能性があると一斉に報じている。

 日本海に面した咸鏡北道花台郡の東海衛星発射場なのか、黄海(西海)側の平安北道東倉里の西海衛星発射場なのか、あるいはその他のミサイル発射場なのか、発射場については明らかにされてないが、関連装備が移動している姿が米韓情報当局の監視装置によってキャッチされたことがその根拠となっているようだ。こうしたことから韓国軍は「米国と共助してあらゆる可能性に備え」(合同参謀本部広報室長)先週から非常待機状態にある。

(参考資料:どこからでも発射可能! 北朝鮮ミサイル発射場の全貌 ) 

 衛星について言うならば、金正恩委員長は昨年2月に地球観測衛星「光明星4号」を発射した際に「実用衛星をもっと多く発射せよ」との指示を出していた。北朝鮮の国家宇宙開発局(NADA)はこの指示を受け、7か月後には新型の停止衛星運搬ロケット用大出力エンジン地上噴出実験を行い、成功させている。これに気を良くした金委員長は今年(2017年)の新年辞で「これにより宇宙征服に向かう道が敷かれた」と胸を張っていた。

 当時、米航空宇宙研究機関の「エアロスペース」のジョン・シリング研究員は北朝鮮の核とミサイルを監視している米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」への寄稿文で「北朝鮮が公開したエンジンは小型無人月探索装備を発射するには充分である。停止軌道に通信衛星など多様な低高度偵察衛星を発射するに適合している」と解析していた。

 「光明星4号」の1段推進体は27tfのノドン・ミサイルエンジンを4つ束ねて発射されていたが、新型の大出力エンジンの推進力は80tfある。北朝鮮は僅か7か月で推力が約3倍のエンジンを開発したことになる。

 「白頭山エンジン」と称されるこのエンジンはグアムを狙った「火星12号」や米国の西海岸に届く「火星14号」の一段エンジンに使われているが、11月29日に発射に成功した米本土を網羅するICBM「火星15号」では二つ束ねて使用されていた。こうしたことから北朝鮮が「火星15号」を今度はロフテッド(高角度)ではなく、正常角度で発射させるため、また、核爆弾搭載に向けて衛星を発射させるのではとみる向きもある。

 人工衛星を管轄する北朝鮮の国家宇宙開発局の幹部は11月中旬に平壌を訪れたロシアの軍事専門家との面談で「数メートルの解像度を持つ重さ100kg以上の地球観測衛星と静止軌道に投入する数トン以上の通信衛星をほぼ完成させた」と語っているが、衛星発射が目的であったとしても、北朝鮮の狙いは軍事衛星にあると米韓軍当局は警戒している。

 ミサイルにせよ、衛星にせよCNNによれば「数日〜数週間で発射される可能性がある」とのことだが、CNNの報道から2日も経過しているので「数日内」ならば、明日(30日)がタイムリミットとなる。ちなみに12月30日は金正恩委員長が父・金正日総書記の急死を受け、最高司令官に就任した日である。

 韓国紙「中央日報」(12月26日付)は「発射されるのは光明星5号」で「移動式発射台から発射されるかもしれない」と報じているが、ならば、「数日内」に発射されるのはミサイルの可能性が大だ。移動式発射台からの人工衛星発射は前代未聞であるからだ。また、人工衛星ならば、1998年のテポドン1号を例外として、北朝鮮から必ず事前予告がある。国際民間航空機構(ICAO)や国際海事機構(IMO)、国際電気通信連合(ITU)にも事前通告がある。

 北朝鮮は人工衛星と称して事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を過去6回発射しているが、2009年からの過去4回はいずれも発射前に事前予告している。

 金正日政権下の2009年4月5日に発射された「光明星2号」は朝鮮宇宙空間技術委員会が2月24日に東海衛星発射場で「人工衛星打ち上げの準備を行っている」と発表。早くも3月13日には「4月4−8日の間に人工衛星を打ち上げる」とICAOとIMOに通告していた。そして発射前日の4月4日に朝鮮宇宙空間技術委員会は「間もなく発射する」と発表して、打ち上げていた。

 外国からマスコミを招請し、鳴り物入りで宣伝して失敗した2012年4月13日の「光明星3号」も宇宙空間技術委員会が3月16日に「4月12−16日の間に発射」と予告していた。

 再度トライした同年12月12日の発射も12月1日に朝鮮宇宙空間技術委員会が「12月10〜22日の間に発射する」と発表していた。

 直近の昨年2月7日の「光明星4号」も2月2日に「8−25日の間に発射する」とITUに通告していた。しかし、この時は、6日になって「7−14日に」に変更すると通告し、予告開始日の7日に発射していた。いずれにせよ最初の予告から5日目の発射であった 。

 仮に「数日」、即ち、年内ではなく「数週間内」の発射ならば、1月中ということになるが、昨年も北朝鮮が発射を正式に公表する4日前に「38ノース」が1月25日に撮影された衛星写真から▲西海衛星発射場の雪がきれいにはけていた▲車両や作業員の姿が確認された▲発射台のクレーンタワーを含め発射準備の重要な作業場がすべて白い幕に覆われていたことなど「疑わしき動き」を伝えていた。

 米国による迎撃を恐れてか、回数を重ねる度に予告から発射までの時間が短縮されているものの仮に北朝鮮が人工衛星を発射するならば必ず宇宙空間技術委員会の名による予告があるはずだ。

(参考資料:米国は北朝鮮のICBMを撃墜できるか )  

 仮に1月中の発射ならば、朝鮮人民軍正規軍創建70周年と金正恩委員長の誕生日が重なる8日前後が「Xデー」となる公算が高いが、2月に延びるならば16日の金正日総書記の生誕日に合わせるかもしれない。ミサイルにせよ、人工衛星にせよ、冬季の発射は悪条件とされているが、北朝鮮の直近の2度の衛星発射は12月と1月に行われている。

 北朝鮮が発射を強行すれば、2月9日から開幕する平昌冬季五輪への影響は避けられないだろう。

(参考資料トランプ政権への北朝鮮の7枚の「対抗カード」 )  

 

2017年12月24日(日)

自制か、対抗かー注目される安保理制裁決議への北朝鮮の反応

自制すべきか、対抗すべきか、ハムレットの心境の金正恩委員長


 国連安保理は昨日(12月23日)、先月(11月29日)の北朝鮮による大陸間弾道ミサイルICBM「火星15型」の発射を受けて制裁決議「2397号」を採択した。北朝鮮に科せられた安保理の制裁決議は2006年から11年間で延べ10回。今年一年だけで4回に達する。

(参考資料:国連安保理の9回目の制裁決議で今度こそ、北朝鮮は手を上げるか!?

 今回の決議は、北朝鮮への石油精製品輸出の9割削減(450万バレル→50万バレル)や北朝鮮の外貨獲得手段となっている出稼ぎ労働者の送還が柱となっているが、これまで手付かずだった原油の供給についても初めて上限が明示され、年間400万バレルとなった。

 今回の制裁決議により輸出による外貨収入はさらに2億5千万ドルも減少することになった。石油精製品輸出の9割削減でガソリンやディーゼルエンジンの燃料である軽油が不足すれば、トラックやバス、建設機械や農業機器を動かすことができない。油類の不足で運輸手段が影響を受け、民生経済への打撃は不可避である。原油供給が縮小されるようなことになればより深刻な事態となるだろう。

 金正日総書記時代に統治資金(裏金)を調達、管理する「39号室」で勤務していたことのある脱北者の李正浩・元「大興総局貿易」管理局局長は亡命先の米国で「北朝鮮経済全般に影響が及ぶことになるだろう」と制裁効果を指摘していた。

 「前例がないレベルにまで制裁を強めた」(別所国連大使)「これまでで最も強い制裁内容となっている」(ヘイリー米国連大使)と日米大使が評価する今回の国連安保理決議に対して北朝鮮からはまだ何の反応もない。

 過去の例にみると、1回目(2006年10月14日)の制裁決議では3日目、2回目(2009年6月13日)は当日、3回目(2013年1月23日)も当日に反発の声明が出されていた。また、4回目(2013年3月7日)は2日後だったが、5回目(2016年3月3日)と6回目(2016年11月30日)は翌日に声明が出されていた。

 さらに7回目(2017年6月2日)と8回目(2017円8月5日)もいずれも2日後だったが、前回9回目(2017年9月12日)は翌日には反応があった。4、5、8回目は外務省による声明ではなく、いずれも政府声明であった。

 前例からすると、安保理決議が採択されれば北朝鮮はどんなに遅くとも3日以内には何らかの見解を表明している。慣例からすれば、一両日中には声明が発表されるだろう。

 国連安保理決議は北朝鮮に決議の順守を勧告しているが、「決議は不当」との立場を取っている北朝鮮はその都度反発し、核とミサイル開発を継続してきた。

 1回目では「国連安保理は米国を庇護している。米国の動向を注視し、それに伴い該当する措置を取る」、2回目では「濃縮ウラン開発に着手する。現在保有しているプルトニウムをすべて兵器化する」、3回目は「任意の物理的対応措置を講じる」、4回目は「強力な対応措置を連続的に取る。核保有の地位と衛星発射国の地位を永久化する」と予告していた。

 また、5回目も「物理的対応を取る」、6回目も「強力な自衛的措置を講じる」、7回目も「高度で精密化され、多種化された『主体弾』(ミサイル)の爽快な雷電は世界を震撼させ、多発的に、連続的に轟くことになる」とこれまた対抗措置を仄めかしていた。

 そして、今年8月7日に出された政府声明では▲核問題を交渉に上げない▲核武力強化の道で一歩も引き下がらない▲制裁には断固たる正義の行動で対応する▲米国に代価を支払わせる▲圧殺しようとする試みを止めなければ、最終手段も辞さないと激しく反発し、また、前回(9月13日)も「米国と実質的な均衡を保つまで拍車を掛けて力を蓄える」と米国に対抗できるまで核とミサイル開発の継続を示唆していた。

 実際に北朝鮮はこれまで決議に従うどころから、予告通り、核実験やミサイル発射を強行してきた。そのことは今年あった直近3回のデーターからも明らかだ。

 北朝鮮が5月に中長距離弾道ミサイル「火星12型」と潜水艦弾道ミサイルの地上型「北極星2型」をロフテッド発射したことに関連した制裁決議(7度目)時は、外務省声明(6月4日)から4日後に地対艦巡行ミサイル「KH−35」数発発射したのに続き、7月4日、28日とICBM級ミサイル「火星14型」を立て続けにロフテッド方式で発射していた。

 また、この「火星14型」の連射による制裁決議(8度目)では政府声明(8月7日)から19日後に東部の江原道・旗対嶺からスカッドB改良型ミサイルを3発発射した後、3日後の29日に平壌市順安から中長距離ミサイル「火星12型」を発射させている。「火星12型」は日本列島を飛び越え、太平洋に着弾したが、北朝鮮のミサイルが日本列島を横断したのは2009年以来、8年ぶりのことであった。北朝鮮の反発はこれに留まらず、9月3日には6回目の核実験に踏み切っている。

 この時の核実験で採択された前回(9回目)制裁決議では外務省声明(13日)から2日後に北朝鮮は順安から再度「火星12号」発射させている。ミサイルは約19分飛行し、これまた日本列島を飛び越え、太平洋に着弾している。

 金正恩委員長は今月11日に開かれた核・ミサイルを製造する軍需工業部門大会に出席し「我が共和国を世界最強の核強国、軍事強国へとさらに前進飛躍させなければならない」とし「核武力を質量的に強化し、我々式の最先端武装装備をもっと多く作れ」と核戦力の強化に向け拍車を掛けるよう指示していた。 17日には錦繍山太陽宮殿を珍しく一人で参拝し、祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体の前で「我が国を強大な国、自主・自立・自衛の城塞へと固めていくため、将軍様の革命戦士らしく一層強く戦っていく」と誓っていた。

 昨日(23日)閉幕した第5回労働党細胞大会では締めの演説を行い「今までやったことは始まりに過ぎない。党中央は人民のためより多くの事業を構想している。同志らを信じ、社会主義強国建設のため大胆で器の大きい作戦を果敢に展開していく」と宣言していた。

 核・ミサイル開発を自制し、人民のための経済建設に乗り出すのか、それとも、これまでのパターンを繰り返すのか、北朝鮮の声明が出れば、その答えはわかるだろう。

(参考資料:北朝鮮の「史上最高の超強硬対応措置」で米朝軍事衝突は不可避!



2017年12月22日(金)

平昌五輪期間中の米韓軍事演習の延期は北朝鮮説得のカードにはならない!

トランプ大統領に電話する文在寅大統領


 韓国の文在寅大統領は12月19日、米国のNBCテレビとのインタビューで「平昌(ピョンチャン)五輪期間中の米韓合同軍事演習の延期を米国に提案し、米国も今、検討している。(延期するかどうかは)すべては北朝鮮にかかっている」と述べていた。

 平昌五輪は2月9日から25日まで、パラリンピックは3月9日から18日まで開かれる。通常、米韓合同軍事演習は早ければ2月下旬から、遅くとも3月中旬から開始されるので、当然かぶることになる。

 文大統領には国威を掛けた平昌五輪の平和的開催と緊張状態が続く朝鮮半島情勢の局面打開、そして究極的には南北の関係改善に繋げたいとの思いがあるようだ。

 ティラーソン米国務長官ですら「聞いてない」との、まだ米国側と合意もしていない提案を唐突に行ったことに野党からは「安保をあまりにも疎かにしている」とか「性急すぎる」との批判の声が上がっているが、言い換えるならば、それだけ文大統領は現状を深刻に捉えているのであろう。

 米CIAは12月初旬にトランプ大統領に「北朝鮮のICBMを阻止できる時間は3か月しか残されてない」との報告を上げている。それまでの間に北朝鮮がミサイル発射など軍事挑発をすれば、米国の軍事攻撃は避けられないとの危機感が文大統領にはある。

(参考資料:北朝鮮攻撃までの猶予は3か月――平昌五輪前か、後か! )  

 文大統領の提案は今後3か月が大きな山で、今回の提案は「北朝鮮クライシス」を平和的に解決できるラストチャンスと捉え、何としてでも北朝鮮の挑発を防ぎたいから出されたとも言える。問題は文大統領が言うように、この提案を受け入れるかにかかっている。北朝鮮が五輪前に挑発すれば、文大統領の提案は当然、白紙化されるだろう。では、文大統領にはそれなりの「勝算」があるのだろうか?

 文大統領もどうやら何のあてもなく、見通しもなく、提案したわけではなさそうだ。おそらく以下4つの兆候からそれなりの期待を抱いているようだ。

 一つは、トルコで11月初旬に開かれた国際赤十字社連盟総会で南北局長級の接触があった際に北朝鮮赤十字社関係者から「米韓合同軍事演習を止めるか、中断すれば、(我々の)平昌五輪参加決定にプラスとなる」と言われていたと大韓赤十字社会長が明かしたことだが一つの拠り所になっている。

 次に、北朝鮮が国連安保理の事務次長を平壌に招請し、また国際五輪委員会(IOC)の会合に積極的に出席するなど国際社会に開かれた姿勢を示していることも好材料とみなしている。また、北朝鮮が冬季スポーツの装備を持続的に購入していることも参加への意思の表れと捉えているようだ。

 第三に、北朝鮮のスポーツを仕切る国家体育指導委員会の委員長が序列3位の崔龍海政治局常務委員から格下の崔希政治局員候補(党政務副委員長)に代わったことも参加のための準備と受け止めているようだ。実務を担うには大物の崔龍海氏よりも崔希氏のほうが適任とみなしているようだ。

 最後に、先の党軍需工業大会(12月11―12日)で金正恩委員長が核戦力完成を宣言したので来年は国際社会の制裁を回避するため局面転換を図り、対話攻勢に出るとの読みが韓国側にあるようだ。

 即ち▲金委員長が来年元旦の新年辞で核武力の完成を宣言したうえで非拡散と核凍結をカードに対話・交渉に打って出る▲平昌五輪に参加することで平和攻勢を掛けるとの分析が働いているようだ。

 盧泰愚軍人政権時代の1991年に「北朝鮮が核査察を受け入れるならば、米韓合同軍事演習を留保する」と提案した際、北朝鮮が受け入れ、その後、南北首相会談、南北非核化宣言に繋がったことも一つの判断材料となっている。文大統領は北朝鮮が平昌五輪に参加を表明し、また一定期間挑発を自制すれば、演習の規模縮小も検討しているようだ。

 しかし、別な見方に立てば、いずれも希望的観測に過ぎない。というのも、▲北朝鮮の赤十字社は政府を、あるいはスポーツを代表しているわけではない▲フェルトマン国連事務次長を平昌五輪関連で招請したわけでもない▲冬季スポーツの装備を購入しているのも、北朝鮮が3年前にオープンした馬食嶺スキー場との関連かもしれない▲IOCの加盟国ならば、総会やその他の関連行事に出るのは至極の当然のことで、異例のことではない▲国家体育指導委員会の委員長のポストが序列3位から序列23位の幹部に変わったからと言って、決定事項や基本方針が変わるわけでもない▲非拡散と核凍結をカードに対話・交渉に打って出でも米国が応じない限り、北朝鮮の目論見は実現しない―などの「反論」も説得力を持つからだ。

 文大統領は「すべては北朝鮮にかかっている」と言っているが、そもそも平昌五輪を開催するのは北朝鮮ではなく、韓国である。ホスト国の韓国は当然、平和裏の開催と成功のために全力を尽くさなければならない。軍事演習の延期はあくまで韓国側の都合で提案されているわけで、北朝鮮が求めているわけではない。北朝鮮が米韓に求めているのは軍事演習の延期でも、縮小でもない。中止であり、核保有を認めることにある。北朝鮮にとって延期のメリットは何一つない。軍事演習を早めようが、遅らせようが所詮同じことである。

(参考資料:北朝鮮はソウル五輪同様に平昌五輪もボイコットか!―その三つの理由

 文大統領は今年7月6日にベルリンを訪れた際に「ベルリン構想」を表明し、休戦協定の7月27日を機に軍事境界線付近での敵対行為を中止するための南北軍事当局会談と朝鮮戦争で引き裂かれた離散家族の再会のための南北赤十字会談を提案したことがあった。

 「条件が整い、朝鮮半島の緊張と対立の局面を転換する契機になるのであれば、いつ、どこででも金正恩委員長と会う用意がある」と発言し、首脳会談にも意欲を見せた。その際、「来年2月に江原道の平昌で開催される冬季五輪での南北統一チームによる合同入場行進」というサプライズ構想までぶち上げていた。

 北朝鮮には魅力的な提案であったにもかかわらずそれでも北朝鮮の回答はミサイルの発射であり、核実験だった。今回もまた、文大統領の提案が実ることはないだろう。

(参考資料:「米朝軍事衝突の可能性は40〜50%」ー米国の国防・外交専門家らの予測



2017年12月19日(火)

北朝鮮攻撃までの猶予は3か月――平昌五輪前か、後か!

「究極のチキンレース」を続けるトランプ大統領と金正恩委員長


 「リトルロケットマン」「老いぼれ狂人」と罵りあうトランプ大統領と金正恩委員長のチキンレースはブレーキが効かないまま正面衝突に向かっている。

 トランプ大統領は昨日(18日)、トランプ政権の新安保戦略構想を発表したが、北朝鮮問題での対応では北朝鮮の非核化、核放棄が目標であることを再確認したうえで北朝鮮の核・ミサイル開発について「射程距離の拡大に加えその数と形態、日増しに強化されるミサイルが米国を相手に核兵器を使用する最も有力な手段となる」とその脅威を強調していた。

 そのうえでトランプ大統領は「北朝鮮の核拡散と大量破壊兵器高度化の脅威を無視すればするほどそうした脅威はより深刻となり、我々の防御オプションも限られてくる」として「核兵器で数百万の米国人の殺害を追求するのは許さない。圧倒的な力で北朝鮮の侵略に対応する準備ができている」と述べていた。

 一方の金正恩委員長もまた、核・ミサイルを製造する軍需工業部門の大会(11−12日)に出席し「我が共和国を世界最強の核強国、軍事強国へとさらに前進飛躍させなければならない」とし「核武力を質量的に強化し、われわれ式の最先端武装装備をもっと多く作れ」と核戦力の強化に向け拍車を掛けるよう号令していた。

 一昨日の17日には錦繍山太陽宮殿を珍しく一人で参拝し、祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体の前で「我が国を強大な国、自主・自立・自衛の城塞へと固めていくため、将軍様の革命戦士らしく一層強く戦っていく」と誓っていた。

 トランプ大統領も金正恩委員長も一歩も引く気はなく、どちらともチキンレースから降りる気はなさそうだ。交渉や妥協ではなく、相手を屈服、降伏させるまで戦いを挑み続ける構えのようだ。

 北朝鮮の核問題に限って言うなら「攻めの米国」に対して「守りの北朝鮮」という構図になっている。核とミサイルの鎧を脱がそうとする米国に対して何が何でも死守しようするのが北朝鮮である。

 トランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル開発を結果として8年にわたって放置してきたオバマ前政権の「戦略的忍耐政策」は「過ちである」として北朝鮮の核問題は「早期に処理する」との考えを持っており、北朝鮮とのチキンレースを、綱引きをいつまでも続けることを考えてない。そこで、注目されているのがトランプ大統領の忍耐のタイムリミットである。

 ジョージ・ブッシュ政権下で国連大使を務め、現在トランプ大統領の外交安保アドバイザーでもあるジョン・ボルトン氏が今月初旬英国を訪れた際、英国議員らとの会合で米CIAのポンペオ長官が「北朝鮮のICBMを阻止できる時間は3か月しか残されてない」とトランプ大統領に報告していた事実を明らかにしていたことが英紙「ガーディアン」で報道され、大きな関心を呼んだが、その渦中のボルトン氏が16日にノースカロライナ州で行われた共和党の行事に出席し、北朝鮮問題について次のような発言を行っていたことがわかった。

 米紙「USAツデー」(17日付)に掲載されたボルトン氏の発言を要約すると、
―北朝鮮は2018年までに米国を打撃できる能力を備えることになる。
―北朝鮮が今、何を持っているかに関係なくイランも明日にでも大金をはたいてそれらを手にしようとするだろう。
―北朝鮮との交渉は北朝鮮を止めることができない。中国も北朝鮮の核兵器による米都市打撃進捗を止められない。
―韓国が被る被害を考えると誰も北朝鮮に対する武力行使を望まない。しかし、ある時点で先制攻撃によるリスクと北朝鮮が実際に米国を攻撃するリスクのどちらが大きいかを選択せざるを得ないだろう。
―北朝鮮のような非理性的な政権の核開発を抑止できると考えるのは神話の話だ。米国は北朝鮮に対して軍事攻撃の選択以外ない時が必ず来る。

 「戦争が勃発すれば数時間内に韓国で数十万の死亡者が発生する」との危惧に対して「米大統領の最初の任務は何よりも米国人を保護することにある」とボルトン氏は語っているが、トランプ大統領が8月3日に「戦争になればあっちで死に、こっちではない」の発言していたのは周知の事実である。

(参考資料:北朝鮮は有事時、4個軍団で総攻撃――ソウル半分は緒戦で壊滅 )  

 外交を担当するティラーソン国務長官は12日に一度は「北朝鮮とは前提条件を付けず対話をする用意がある」と発言し、対話に前向きな姿勢を見せたが、ホワイトハウスの反発もあって15日の国連安保理閣僚会議では一転「対話に入るには地域を脅威にさらす北朝鮮の行いが停止されなければならない」と条件を付けた。これにより米朝は再び、対話から対決に回帰してしまった感が否めない。

 トランプ大統領は今年10月にティラーソン長官が北朝鮮と対話する意向を示した際、ツイッターで「時間の無駄」と直接批判していた。そして、今回、新安保戦略構想を発表した場で北朝鮮問題について「必ず処理する。選択の余地はない」と豪語していた。

 トランプ大統領の盟友である米共和党のリンゼイ・グラハム上院議員は13日、「アトランティック」誌とのインタビューで「トランプ大統領が軍事力を行使する可能性は30%だが、北朝鮮が7度目の核実験をやれば、その確率は70%になるだろう」と予測していた。

(参考資料:「米朝軍事衝突の可能性は40〜50%」ー米国の国防・外交専門家らの予測 )  

 予想された17日の父親の命日前のミサイル発射などはなかったが、米国独立記念日の7月4日にICBM級の「火星14型」を発射した際に金正恩委員長が「これからも(トランプ大統領に)大小の贈物を届けろ」と命じていたこともあって、一難去ってまた一難で、クリスマスイブの24日は要注意だ。

 仮に、今年北朝鮮が自制したとしても来年1月は金正恩委員長の誕生日(1月8日)を迎え、2月は朝鮮人民軍正規軍創設85周年(8日)、北朝鮮核保有宣言日(10日)、金正日総書記誕生日(16日)などの記念日が控えている。

 この期間に北朝鮮が核実験であれ、新型潜水艦弾道ミサイル「北極星3型」の発射であれ、あるいは長距離弾道ミサイル「テポドン」とみなしている人工衛星「光明星」の発射であれ、北朝鮮が米国にとっては重大な挑発となる核・ミサイルの実験をやれば、軍事力の行使は避けられないだろう。

 米国が事を起こすのは、後は平昌冬季五輪の前か、後かという時間の問題だけのようだ。

(参考資料:トランプ大統領は米議会の同意なく北朝鮮を攻撃できるか )  



2017年12月14日(木)

突然姿を消した「金正恩側近4人衆」

「粛清説」が伝えられる黄炳誓軍総政治局長と金元洪第一副局長


 韓国の情報機関「国家情報院」は先月(11月)20日、国会情報委員会で軍総政治局No.1の黄炳誓軍総政治局長とNo.2の金元洪第一副局長の二人が「不純な態度」を理由に「処罰された」と報告していたが、韓国メディアによると、その後、黄総政治局長は朝鮮労働党から「除名処分」を受け、金第一副局長は政治犯収容所に収監されたとのことだ。

 一説では、黄総政治局長のライバルとされる崔龍海政治局常務委員が部長に就任した党組織指導部が軍総政治局への大々的な検閲を行い、その結果、両人の「規律違反」(不正)が発覚し、それを知った金正恩委員長が激怒し、二人を「処分」したと伝えられている。

 政治局常務委員でもある黄総局長も、政治局員である金第一副局長も金正恩委員長が出席し、指揮した10月7日の朝鮮労働党第7期第2次全員会議に姿を見せなかった。黄総局長は5日後の万景台革命学院創立70周年記念行事(10月12日)には出席し、演壇で演説していた。しかし、直後にあった金委員長の万景台革命学院訪問には同行せず、崔龍海政治局常務委員に取って代わっていた。この日を最後に金委員長の視察に随行することも、公式行事に出席することも一度もなかった。

 黄炳誓軍総政治局長は党第7期第2次全員会議が開催されるまでは金正恩委員長、金永南最高人民会議常任委員長に次ぐ党序列3位の座にあった。ところが、この会議での序列では崔龍海(党組織指導部部長)、朴奉柱(総理)の両政治局常務委員に抜かれ、5位に下がっていた。

 大将よりも一階級上の次帥の称号を与えられている黄総政治局長は軍のトップにある。軍総政治局長に2014年4月に起用されるまでは党組織指導部第一副部長のポストにあり、金京玉第一副部長、趙英俊第一副部長と共に党を仕切っていた。

(参考資料:金正恩第一書記を背後で操る北朝鮮版「4人組」 ) 

 党組織指導部は労働党の各部署の中で最も権力のある部署である。組織部、行政部、幹部部、3大革命小組指導部、63部など5個の部署、38課を管轄している。部長が空席のため実権は第一副部長が握っていた。黄氏は党が軍を掌握するため軍に言わば出向していた。金委員長の最側近である黄軍総政治局長が仮に「失脚」しているなら、その余波は軍内に留まらず、党内にも波及するだろう。

 金元洪第一局長は昨年末に解任されるまで情報機関として知られる国家安全保衛部部長(保衛相)の要職にあった。国家安全保衛部は反体制の動きを監視、摘発する秘密組織である。国内だけでなく海外の情報も収集し、国境の警備や政治犯収容所の管理も担当している。法的手続きもなく、容疑者を拘束し、裁判にも掛けずに処罰できる恐るべき権力機関である。

▲北朝鮮の「ゲシュタボ」のトップが電撃解任!

 金元洪第一副局長は2003年に保衛司令官として金正日体制を支え、2010年に一時的に軍総政治局副局長に転出したが、金正恩体制下の2012年に空白だった国家安全保衛部部長に任命され、政治局員、国防委員にも選出されていた。  

 金正恩委員長が後継者としてお披露目された2010年9月の第3回党代表者会では金委員長の隣に座っていたほど金委員長の信任が厚く、2013年12月には金委員長の叔父である張成沢国防副委員長を連行し、処刑したことでその存在がローズアップされていた。国家安全保衛相を更迭されても、今年5月に軍総政治局第一副局長に起用されたことでも金委員長から絶大な信頼があったことがわかる。

 金元弘第一副局長に掛けられた「規律違反」は保衛相時代の度が過ぎる摘発や過酷な拷問にあったとされているが、真相は定かではない。いずれにせよ、4年以上も情報機関のトップにあり、趙慶チョル保衛司令官と尹正麟護衛司令官と並んで金正恩委員長をガードする将軍の一人とみられていた金元弘大将が粛清されているならば、黄総政治局長の失脚の比ではない。金元弘元保衛相に繋がる情報要員らに動揺が広まることだろう。

 軍と情報機関のトップの異変以上に不可解なのは核とミサイル開発を担当する軍需工業部の実質的No.1とNo.2の「不在」である。

 党軍需工業部のトップの座にあった李万建部長(政務局副委員長兼党軍事委員)は党第7期第2次全員会議で更迭され、太宗秀前咸鏡南道党書記がその座に座っていたことが判明したが、実質的No.1の李炳哲第一副部長とNo.2の金正植党軍需工業部副部長の動静は不明のままだ。金正恩委員長が「核戦力が完成した」と豪語した11月29日のICBM発射「火星15型」の発射にも立ち会ってなかったし、数日前に開催された党軍需工業大会(11−12日)にもNo.3の張昌河副部長が金委員長の隣に座っていたのに二人とも揃って欠席していた。

 李炳哲第一副部長は党のミサイル開発の総指揮者と言っても過言ではない。ロシアで教育を受けた李大将は空軍・防空司令官から2014年12月8日に党軍需工業部副部長に栄転し、翌年(2015年)の1月には早くも第一副部長に起用されたほど金正恩委員長が信頼を寄せている側近の一人である。10月7日の党第7期第2次全員会議では崔龍海政治局常務委員と共に党軍事委員に選出されたばかりだった。

 一連の弾道ミサイル発射に金正恩委員長が立ち会う際には必ず隣に立ち、説明を行う場面が頻繁に目撃されている。また、発射に成功した瞬間、金委員長と抱き合うシーンもあり、タバコを勧められたこともあった。

 金正植党軍需工業部副部長は2012年に宇宙開発局の前身である宇宙空間技術委員会所属で、2012年の2度にわたるテポドン発射に関与した人物である。

 昨年2月7日のテポドン(人工衛星)発射では、すべての過程を金正恩委員長に説明していたことで知られる。人工衛星発射成功に喜んだ金委員長は発射場の東倉里から平壌に戻る専用列車に金正植副部長を乗せ、連れ帰ったほどだ。また、平壌で行われた衛星発射祝賀会では李雪主の隣に座らせるなど厚遇した。

 金正植副部長は2012年12月の二度目の発射による成功で当時、崔春植(チェ・チュンシク)第二自然科学院長ともども「共和国英雄」称号を授与している。中将の階級も与えられ、準ICBMと称される「火星12号」の際には軍服を着て、表れていた。党第7期第2次全員会議では党中央候補委員から党中央委員に昇進したばかりだった。

 失脚したのか、それとも新たなミサイル開発・発射準備に追われているのか、この二人の動静は大いに気になる。

(参考資料:金正恩委員長が実妹を「影のN0.2」に抜擢した理由 ) 



2017年12月10日(日)

金正恩委員長の「白頭山詣」の後に何が起きる?

白頭山に登頂した金正恩委員長


 金正恩委員長が朝鮮半島の聖山でもあり、北朝鮮の革命の聖地でもあり、父親(金正日総書記)の生誕地でもある白頭山に「登頂した」と朝鮮中央放送は昨日(9日)伝えていた。過去の例を参考にすれば、おそらく前日の8日に登ったのだろう。

 金委員長が白頭山のある中国と国境を接している両江道三池淵郡に訪れたのは過去4回ある。いずれも、登山後に重大事変が起きていることから今回も金委員長が何か誓い言を立てたのではとの憶測が韓国内では広まっている。

 1回目は2013年11月29日で、最高指導者就任後初の三池淵郡視察であった。そして10日も経たない翌12月8日、党中央委政治局拡大会議を開き、叔父である張成沢国防副委員長を「反党、反革命分子」として断罪し、1か月後の2012年12月12日に軍事法廷で極刑を宣告し、その日の内に処刑している。

 白頭山参拝の随行者に張成沢氏の罪状を暴いた黄炳誓党組織指導部第一副部長(現軍総政治局長)や逮捕した金元洪国家安全保衛相(現軍総政治局第一副局長)らが含まれていたことからこの時に叔父の粛清を決断したのではないかと当時囁かれていた。

 2回目は2014年11月20日で父親の3周忌(11月17日)との関連で三池淵に赴いたと伝えられているが、翌2015年の新年辞で軍力強化の4大戦略路線と3大課業を打ち出し、最先端武装装備を積極的に開発するよう党と軍に命じていた。

 この時は直前に人民軍空軍・防空空軍第991軍部隊を視察していたが、軍総政治局長に抜擢されたばかりの黄炳誓氏のほか、李炳哲人民軍空軍・防空空軍司令官(現党軍需工業部第一副部長)や人民武力部の徐興賛第一副部長ら軍人が行動を共にしていた。

 3回目は2015年4月18日で、直後に軍No.2の玄永哲人民武力相が処刑されている。また、初の外遊として注目されていたロシアの対ドイツ戦勝70周年記念式典(5月9日)への出席も急遽取り止めとなっている。訪露ドタキャンは今もって謎となっている。

 当時の随行者は金委員長の両腕である黄炳誓軍総政治局長と崔龍海政治局常務委員、それに金養健政治局員と李在逸党宣伝担当第一副部長らであった。

 4回目は昨年、2016年11月27日で崔龍海政治局常務委員と金容珠党部長の二人が随行していた。

 今年の「新年の辞」で金委員長は大陸間弾道ミサイル(ICBM)について初めて言及し、「試験発射準備が最終段階に達した」と述べていた。そして、5月から9月にかけて「火星12型」と「火星14型」の発射実験を繰り返した後、11月29日に北朝鮮初のICBM「火星15型」の発射に成功している。

 今回(2017年)は金委員長にとって5回目の白頭山参拝(12月8日)となる。それも、230機の戦闘機・爆撃機を動員した米韓連合軍による史上最大規模の空中訓練の最中に姿を現していた。

 随行者として公表されたのは崔龍海政治局常務委員一人だけだった。しかし、直前の三池淵郡ジャガイモ加工工場の視察には崔龍海氏のほかに金容珠党部長と趙容遠副部長の2人の姿も見えていた。

 先月「不純な態度」を理由に「処罰説」が流れていた黄炳誓軍総政治局長と金元洪第一副局長の二人の処遇について決断するためなのか、それとも昨年視察した際に建設を指示していた三池淵郡ジャガイモ加工工場が完成したことからの単なる視察なのか、それとも別の目的があってのことなのか定かではない。

 報道によると、金委員長は「国家核戦力完成の歴史的大業を輝かしく実現してきた激動の日々を感慨深く振り返った」そうだ。こうしたことから来年の新年辞では核戦力の完成、保有を宣言し、来年からは核・ミサイル開発から併進路線のもう一つの要である経済発展に舵を切るのではとの見方もなされている。

 核とミサイルの乱射で悪化した経済を好転させるには国連安保理の経済制裁を緩和させる必要性がある。米国務省やジョセフ―ユン6か国首席米代表が「(核とミサイル実験を)60日間凍結すれば、対話の用意がある」との条件を依然として提示していることから米国に対して▲「火星15型」の正常発射実験を行わない▲グアム近海への「火星12型」4発の発射を行わない▲太平洋上の水爆実験を行わないとの三枚のカードを使って米国との交渉に乗り出すことも考えられる。国連のゲルトマン事務次長を平壌に招請したのはその仲介役を依頼することに狙いがあるのかもしれない。

 白頭山詣でのもう一つの見方はこれとは真逆で米国との戦争も辞さないとの決意固めと言えなくもない。

 「火星15型」成功祝賀大会で演説に立った朴英植人民武力相は金委員長が軍に対して「戦争準備完了に総力を集中せよ」との指示があったことを明らかにしている。

 マクマスター大統領補佐官の「北朝鮮との戦争の可能性が日々高まっている」との12月3日の発言にみられるようにトランプ政権は北朝鮮の核戦力完成を阻止する手段として軍事力行使を検討している。これに対して北朝鮮外務省は6日、「我々は戦争を望まないが、決して避けることもしない」と米国の攻撃に対して受けて立つ考えを表明している。

 北朝鮮が「火星15型」の発射でミサイル発射も核実験も凍結すれば、軍事衝突の可能性が著しく減少するが、新たに開発した潜水艦弾道ミサイル「北極星3型」の発射の動きもあることや先頃訪朝したロシアの軍事問題専門家に対して北朝鮮の人工衛星(テポドン)発射機関である国家宇宙開発局の担当者が「地球観測衛星1基と通信衛星1基を完成させた」と説明していたことから北朝鮮は来年9月の建国70周年に向けて事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を発射する可能性も大だ。

 北朝鮮は「火星15型」発射後も党序列No.6朴光浩党中央委員会副委員長が、また対米・対南窓口機関である祖国平和統一委員会が米国や韓国に対して「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮するとの金委員長の9月21日の演説を忘れるな」と警告を発していることから米国が強行に出れば、労働新聞が先月(11月15日)に論評で予告していた「米国が最も望まない、身の毛がよだつほど体験」とか「悪夢で思い浮かべた物凄い光景」を見せつけるかもしれない。そうなれば、軍事衝突は回避不可能となる。

 白頭山で核・ミサイル開発の凍結を決意したのか、それとも、継続を決意したのか、父親の命日である17日までに動きがあるのかどうか、最大の焦点となりそうだ。



2017年12月5日(火)

最終段階に入った米国の対北軍事オプション

米韓合同軍事演習に投入された最強のステルス戦闘機F−22


 北朝鮮はICBM「火星15型」の発射成功で米本土を狙った核戦力完成に向けて「最終段階に入った」と豪語しているが、米国もまた、それに合わせるかのようにいつでも北朝鮮を軍事攻撃できる態勢を整えている。

 米国は北朝鮮攻撃の前段階として以下5つのプロセスを経ることにしている。

 ▲北朝鮮のミサイル攻撃から韓国を防御するTHAADの配備▲原子力空母など海軍戦力の増派▲韓国在留の米軍家族6千人を含む約20万人の米国市民の疎開準備▲ミサイル発射などの北朝鮮の軍事動向を偵察する監視偵察機の増派▲戦略的打撃資産である最先鋭戦闘機や爆撃機の展開である。

 空軍戦力の展開を除く4つはすでに終了あるいは準備が終わっている。

 例えば、「非戦闘員救出作戦(NEO)訓練」と称される在韓米国人の国外避難訓練は今年6月、10月と2度に亘って行われており、6月の訓練には1万7千人以上が参加している。米国民を国外に退避させる国防総省責任者らも9月に韓国を訪問しているほか、担当部署の国土安全省部情報要員ら20数人による事前視察も終えている。

 米空軍の核心偵察機である、高度1万8千メートルから画像撮影や電子情報の収集ができるグローバルホークやレーダーで敵地上部隊を探知、 識別し、味方地上部隊を指揮・管制するジョイント・スターズE―8の朝鮮半島偵察回数も急増している。

 また、先月(11月)は「動く海上軍事基地」として知られる原子力空母「ロナルド・レーガン」「セオドア・ルーズ ベルト」「ニミッツ」の3隻とイージス艦12隻、さらには原子力潜水艦を動員して朝鮮半島周辺で最大規模の海上演習を実施している。

 各空母には戦闘攻撃、電子攻撃、早期警戒を担う飛行隊のほか、海上作戦や海上攻撃を行う飛行隊を含め総勢7千5百人が搭乗しており、爆撃機24機、対潜ヘリ10機、早期警報器4機を含め90機が搭載されている他、地対空迎撃ミサイルSAMなど迎撃ミサイルも多数搭載されている。

 そして、現在、最後のプロセスである最先鋭戦闘機や爆撃機を動員しての米韓連合軍による「ビジラント・エース」という名の爆撃・空中訓練が行われている。

 駐韓米第7空軍が主管するこの訓練には米韓合わせて戦闘機230機が参加している。これに空中作戦支援のための輸送機まで含めると延べ260機となる。昨年の演習(200機)よりも60機も多い。

 訓練に参加している米軍人の数も空軍兵士、海兵隊、海軍兵力合わせて1万2千人以上に上る。今春行われた史上最大規模の米韓合同軍事演習時よりも多い。

 演習に投入される戦闘機には米国が誇るステルス戦闘機F−22(6機)、F−35A(6機)、F−35B(12機)合わせて24機の最先鋭戦闘機が含まれている。ステルス戦闘機24機は1個大隊規模で、1個大隊規模の戦闘機が米韓合同軍事演習に投入されたのは今回が初めてである。

 米国がF−22を6機も朝鮮半島で展開するのはこれまた今回が初めてのことである。また、F−22とF−35などステルス戦闘機を訓練目的で朝鮮半島に同時に出撃させるのも今回が初めてである。

 最高速度マッハ2.5のF−22などステルス戦闘機は北朝鮮の防空網を突き破り、隠密に浸透し、北朝鮮の核・ミサイル基地、韓国ソウルを脅かす長距離砲などを攻撃する。これに北朝鮮が最も恐れている戦略爆撃機B−1Bも投入される。

 最大速度がマッハ2のB−1Bは戦略爆撃機の中では最も早い。核兵器は搭載してないが、在来式兵器で930km離れた場所から北朝鮮の核心施設を半径2〜3km内で精密打撃が可能で、地下施設を貫通する空対地巡航ミサイル24基など61トンに達する兵器が搭載されている。

 今回の訓練は米軍の早期警戒管制機(AWACS機)E3と韓国空軍のE737空中統制機などが北朝鮮軍の動向を上空から監視する中、敵のレーダーの位置を特定し、電波を攪乱する電子戦を専門とする電子戦機EA18Gが敵の防空レーダーを優先的に無力化した後、ステルス戦闘機とF15CやF16戦闘機などが北朝鮮の核心地域を攻撃することを想定して行われている。

 戦時に北朝鮮の空軍戦力を無力化させ、北朝鮮の目標物700か所を72時間(3日)以内に潰すのが狙いだ。

(参考資料:「ソウルを重大な脅威に陥れない」米国の軍事オプションとは何か? ) 

 攻撃目標には北朝鮮の陸・海・空軍司令部、空軍基地から海軍基地、寧辺原子力発電所などの核施設、ミサイル製造工場や格納庫、さらには20数か所あるミサイル発射基地やミサイル移動式発射台、前線に配備されている多連装ロケットや長距離砲も含まれている。金正恩委員長の執務室も例外ではない。

 先制攻撃だけでなく、全面戦争に備えての訓練で、ステルス機は演習終了後の12月8日以降も日本の基地に復帰せず、そのまま韓国に駐留することになっている。

 来年初めには再び原子力空母カールビンソンが韓国にやってくるが、仮に金正恩委員長が父親の命日である今月17日を前に予告している「史上最高の超強硬対応措置」を断行するようなことになれば、クリスマス休暇を利用して米国人を韓国から退避させたうえで年明け早々にも北朝鮮攻撃というシナリオが現実化するかもしれない。

(参考資料:トランプ大統領は独断で北朝鮮を核攻撃できるか ) 



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