2015年10月12日(月)

 北朝鮮の4度目の核実験は水爆の実験?

 北朝鮮は国家宇宙開発局長が9月14日に人工衛星と称する長距離弾道ミサイル(テポドン)の発射を示唆したのに続き、翌15日には原子力研究院院長が「米国と敵対勢力が無分別な敵視政策を今後も続けるならば、いつでも核の雷声で応える万端の準備ができている」とやるやらないに関わらず4度目の核実験の準備ができていることを仄めかした。

 過去3度のケースをみると、先にテポドンを発射して、後に核実験を行っている。最初の2006年の時は7月5日にテポドンを発射し、3ヶ月後の10月9日に核実験を、二度目の2009年も4月5日にテポドンを、そして5月25日に核実験を行なっている。前回3度目の2013年2月の核実験も2012年12月12日の発射から2か月後に行われている。問題は4度目の核実験の形態だ。

 北朝鮮は一昨年(2013年)国防委員会の声明(1月23日)で「高い水準の核実験を行う」と示唆していた。昨年3月30日の外務省声明では「核抑止力をより強化するための新たな形態の核実験も排除しない」と「新たな形態の核実験」という言葉を使っていた。

 今回、原子力研究院長は「(我々は)各種核兵器の質的水準を絶え間なく高めるため核抑止力の信頼性を100%担保するための研究と生産で連日革新を起こしている」と述べ、北朝鮮がプルトニウム型だけでなく、ウラン型を含む核爆弾の開発、製造に力を入れていることを是認していた。仮に前回(3度目)の核実験が巷間言われるようにウラン型爆弾の実験ならば、4度目は新たな形態、即ち水素爆弾の可能性も排除できない。というのも、北朝鮮はすでに5年前の2010年5月に「核融合に成功した」と発表しているからだ。

 核融合は、水素、リチウムなどの質量の小さい原子核が融合して大きな原子になる現象を指す。原子核の種類によっては莫大なエネルギーを放出する。核融合は言わば、水素爆弾を作る基礎でもある。また、米国のシンクタンク、科学・国際安全保障研究所(ISIS)は去る9月15日、北朝鮮が延辺核団地でトリチウムを生産している可能性を指摘していた。高純度の液体トリチウムも水素爆弾の原料の一つとしても利用される。

 北朝鮮の「核融合成功発表」について当時、英紙「デイリー・テレグラフ」は「北朝鮮の言い分が信じられるとすれば、貧乏国が核融合技術を世界で最も早く手に入れたことになる」と皮肉り、「発表の背景には政治的な計算がある。おそらくは、国際社会に向かってのハッタリ」との見方を示した。また、ロイター通信は「太陽が2つ空に昇ったら、信じてもよい」と嘲笑するソウル国立大学の核専門家クン・Y・スー氏の意見を載せていた。

 今もって、どの国も北朝鮮の発表を信じてないようだが、面白いことに唯一、韓国に亡命していた黄ジャンヨプ元労働党書記だけが「成功した可能性は十分にある」とコメントしていた。北朝鮮と敵対している人物がこの問題に限っては、北朝鮮の側に立つのは不思議でならないが、生前の黄元書記の言い分はこうだ。

 「北朝鮮の実態を何も知らない連中らが不可能と言っている。彼らは一体どれだけ北朝鮮の技術力を理解していると言うのか。北朝鮮の大量殺傷兵器(WMD)技術はすでに相当のレベルに達しており、間もなく水素爆弾の製造が始まったと発表するかもしれない。一度に発表しないのは、国際社会の報復を恐れているからだ。北朝鮮は当初から水素爆弾も研究していた」

 国際社会は北朝鮮の水素爆弾の開発能力について懐疑的だが「他国の列」を基準にすれば、あり得ないとは断言できない。

 過去に水爆を実験した国は米国、ロシア(旧ソ連)、英国、フランス、中国、インドなど6か国だが、米国は原爆から7年後、ロシアは6年後、英国は5年後、フランスは6年後、そして中国は1964年の初の原爆実験から3年後の67年に水爆実験を行っている。インドに至っては、1998年5月11日に3回、1日置いて、13日に2回同時に複数の実験を行ったが、11日の3回の実験の一つが水爆実験だったとされている。

 北朝鮮は最初の原爆実験からすでに9年が経っている。他の原爆実験国ができて北朝鮮にできないはずはない。仮に北朝鮮が水爆実験を行った場合、威力は100キロトン(1キロトンはTNT爆薬1000トンに相当)以上になるとみられる。ちなみに北朝鮮の1回目の核実験の規模は1キロトン、2回目は数キロトンから最大で20キロトンと推定されていた。(3回目の規模は不明)

 北朝鮮の国防委員会は今年2月4日「小型化、精密化、多種化された核打撃手段」で対抗すると米国を威嚇していたが、北朝鮮が指す「各種核兵器の現代化」「新たに発展した方法による核抑止力の強化」「核抑止力の多角化」は「高い水準の核実験」や「新たな形態の核実験」なしでは保有できない。

 万が一、水爆にまで手を伸ばせば、国連安保理が認めようと認めまいと、北朝鮮は名実共に「核保有国」どころか「核大国」となり、今以上に放棄させることは困難となるだろう。