2016年8月6日(土)

 日本はなぜ「ノドン」に追加制裁しないのか

安倍晋三総理(写真:ロイター/アフロ)


北朝鮮の「ノドン」ミサイル発射に関連した国連安保理の北朝鮮非難声明がまたもや採択されなかったようだ。決議は言うに及ばず、議長声明も、報道機関向け声明も出ないままだ。

この件について菅義偉官房長官は4日の会見で「反対する国がいた。そうした国が現実的に存在していることは極めて遺憾だ」と述べていたが、「反対する国」とはずばり中国を指す。

中国の国連大使は米国が作成した草案に「(ミサイル発射に)『反対』という表現に留めるべきで、『非難する』ことには同意しない」と抵抗したようだ。北朝鮮のミサイル発射にはこれまで国連安保理は足並みを揃え非難し、制裁を科してきたが、中距離弾道ミサイル「ムスダン」の発射を強く非難した6月24日の報道機関向けの声明を最後に中国は完全にそっぽを向いてしまった。

その結果、7月9日の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)にも、19日の「ノドン」2発を含む3発の弾道ミサイル発射にも安保理は非難声明を出せず、無策のままでいる。米韓が7月8日に中国が反対している高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の韓国配備を決定したことが災い、影響しているようだ。

全長15.5m、搭載重量700kg、射程距離1300kmの「ノドン」は朝鮮半島有事の際の日本攻撃用のミサイルである。それを今年だけでも3月18日、7月19日、そして今回(8月3日)と3回にわたって合計6発発射している。そのうち2発は、日本の防空識別圏に進入し、1発は排他的経済水域(EEZ)に着弾している。

過去(1998年と2009年)に北朝鮮が衛星と称して長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射した際にミサイルの一部がEEZに落下したことはあるが、ミサイル先端(弾頭)の落下は今回が初めてである。領海ではないにせよ、弾頭が落下した現場付近では青森や山形からイカ釣り漁船15隻以上が操業していた。

ミサイル等飛翔体を発射する場合は、国際海事機構(IMO)や国際民間航空機構(ICAO)に日時や飛行コースを事前に届ける義務がある。船舶や漁船、民間機に危害が及ばないようにするためだ。それを北朝鮮は再三に亘って怠っている。まして、前回(7月19日)同様に特定高度での核弾頭の起爆装置の動作の特徴を調べるための実験が行われたならば、模擬とはいえ、落下した弾頭は「核弾頭」ということになる。明らかに日本の安全保障に対する重大な脅威であり、安倍総理が「許しがたい暴挙」とコメントするのは至極当然のことである。

「許しがたい暴挙」ならば、また国連安保理が手の打ちようがないなら、日本は自ら独自制裁を科すのが筋である。

日本は北朝鮮の核実験とテポドン発射に抗議して2月10日にストックホルム合意で緩和した制裁(往来や送金の規制)を元に戻すなど独自制裁を発動し、さらに3月14日に朝鮮総連の再入国規制対象者の拡大などの措置を取っただけである。それ以降、北朝鮮は3月に「スカッド」2発と「ノドン」2発、4月に「ムスダン」3発とSLBM1発、5月に「ムスダン」1発、6月に「ムスダン」2発、7月にSLBM1発と「ノドン」2発とスカッド1発、そして今回、「ノドン」2発をいずれも日本海に向けて発射している。

参考資料 朝起きたら、ミサイルが発射されていた! 北朝鮮のミサイル乱射に麻痺か

日本列島から遥か遠い南方のフィリピン方向に向け発射された「テポドン」に制裁を掛けて、日本列島に飛んで来るかもしれない、あるいは朝鮮半島有事では確実に日本攻撃用として使われる「ノドン」が、それも核を搭載して発射されるかもしれないのにそれを懲罰するための措置を取らないのも実に変な話だ。

聞けば、日本政府は北京駐在の大使館ルートを通じて北朝鮮に抗議したようだ。おそらく電話かファクスが使われたのであろう。これも毎度のことだ。

抗議するならば、先月26日にラオスの首都ビエンチャンで開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)に北朝鮮の李英浩外相が出席していたわけだから外相会談を申し入れ、一連のミサイル発射について、拉致問題について面と向かって抗議、非難すべきだった。

参考資料 拉致問題はなぜ動かない!対話も圧力も中途半端な日本政府の対応

外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は昨日(5日)中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表に電話をして、ミサイル問題や日本人拉致問題への協力を求めたようだが、今まさに尖閣諸島を乗っ取ろうとしている中国に協力を求めるというのも何とも解せない。協力を求めれば、当然、借りを作ることになる。

そもそも日本は日中首脳会談や外相会談の度に拉致問題での協力を要請しているが、中国は胡錦濤政権から習近平政権に至るまで過去10年以上、拉致問題で動いた試しは一度もない。中国が本気で日本のために動けば、拉致問題はとっくに進展していたはずだ。

政府は事あるごとに「国民の生命と安全と財産を守る」と言っているが、どう守るのか、全く見えてこない。