2016年8月9日(火)

 朴槿恵大統領のアキレス腱となった「慰安婦少女像」の撤去問題

「処女像」の撤去に反対する恒例の「水曜集会」(写真:Lee Jae-Won/アフロ)


従軍慰安婦問題を解決するため昨年末に日韓で合意した韓国人慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」の事業内容を話し合う外務省局長級協議が今日、韓国で開かれる。

韓国外務省は「双方の関心事について協議する」と説明しているが、韓国政府は日本政府が財団への拠出を約束した10億円の拠出時期について、日本側は拠出金の使途と拠出の「条件」である「暗黙の約束」即ち日本大使館前の「少女像」の移転問題を提起するほか、支援金が「賠償金」ではないことをはっきりさせておきたいようだ。

日本政府はまた日韓合意の文書化が見送られたことへの批判もあって、支援金の拠出にあたって「最終的に解決した」ことを文書化したい考えもあるようだ。

問題の「少女像」の撤去について韓国政府は昨年の日韓合意で「日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」と日本側に約束している。

韓国政府は当初「民間が設置したので強制できないが、問題が解決すれば、自然に他の場所に移されるだろう」と楽観視していたが、世論調査の結果、国民の多くが「撤去に反対」していることがわかるや一転慎重になり、今では「不可」の立場に転じている。

朴槿恵大統領から「和解・癒やし財団」の理事長に据えられた金兌玄(キム・テヒョン)理事長はこの件について「我々はすでに一線を画しており、これを信じなければならない。少女像のために10億円が出なかったり、これを受け取って韓国政府が少女像問題に絡めたりすることはしない。日本が少女像を問題視し10億円を出さなければ合意を破棄することになり、日本は世界的に孤立せざるを得ない。万が一にも日本が少女像問題を持ち出すならば、私は財団理事長職を差し出す」と言い出す始末である。

朴槿恵政権は安倍政権に「善処」を約束したにもかかわらず野党がこぞって反対し、加えて国民もノーを突きつけ、さらに総選挙で与党が大敗し、過半数割れしてしまい、レームダックに陥ったことで「少女像」の撤去問題では引くに引けない立場に追い込まれてしまったようだ。 

(参考資料: 依然として危険水位の朴槿恵大統領の支持率

しかし、「少女像」の設置がソウルだけでなく、ソウル以外の他の地域にも、また国外にも波及している事態を日本政府は問題視しており、日本にとって「少女像」の棚上げ、放置はあり得ない。韓国国内では新たに8か所の建立が計画されており、釜山の日本の総領事館の前にも建てられる。外国にも拡散し、米国、カナダに続き、豪州でも今月6日、最大都市シドニー郊外に建てられたばかりだ。年内には像の建立が韓国内外で50か所を超える見込みだ。

自民党は今月2日に開かれた外交部会で「少女像」の撤去が「日韓合意の重要な要素」であるとし、韓国政府の対応への不満が続出した。日韓合意では「和解・癒やし財団」の事業を着実に実施するとの前提で「この問題(慰安婦の問題)が最終的かつ不可逆的に解決される」ことや「国連等国際社会においてこの問題で互いに非難・批判することは控える」ことが約束されているからだ。

朴大統領としては8月15日の解放記念日を前に日本からの拠出問題でメドを付けたいところだ。特に高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の韓国配備問題で中国との関係が悪化しているだけに日本との関係をこじらせず前進させたいところだが、思惑とおり事が進むとは思えない。

(参考資料:朴槿恵政権が戦々恐々の中国の「報復措置」