2016年7月11日(月)

 朴槿恵政権が戦々恐々の中国の「報復措置」

朴槿恵大統領と習近平主席(写真:ロイター/アフロ)


朴槿恵政権の米中天秤外交が試練に立たされている。THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備を巡る米中対立で米国側に立ったことが原因だ。

ハネムーンの関係にあった習近平主席の要望を拒否し、オバマ大統領のTHAADの韓国配備の要請を受け入れたことに中国は猛反発している。王毅外相は「どのように弁明してもだめだ」と怒り心頭である。

THAADの韓国配備が中国の安全を脅かすと反対していた習近平体制がこのまま手をこまねいてみてはいないだろうと朴槿恵政権は戦々恐々となっている。政治、外交、経済など全ての分野で悪影響を受けるとの不安の声が広がっている。というのも、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹誌である「環求時報」が韓国に対して制裁を求める論説や社説を公然と掲載し始めたからだ。

同紙は10日の論評で「(中国は)米韓の行動に言葉で抗議するだけでなく、相手が痛がるような強力な制裁を掛けるべき」主張し、配備を決定した8日には社説では「韓国配置を積極的に推進した韓国政治家らの中国入国を制限し、彼らの家族の企業を制裁すべき」と「報復措置」を唱えている。

外交面では再び北朝鮮寄りになるのではとの懸念もあるが、韓国が最も恐れているのは経済制裁だ。外交で対立や摩擦が生じると、必ず経済制裁というカードを切るのが中国であるからだ。

今から16年前の2000年6月に韓国が農家を保護する必要性から中国産ニンニクに科していた関税を30%から一気に10倍の315%に上げたところ、中国当局は韓国からのポリエチレンやハンドフォンの輸入を大幅に規制する措置を取ったことがある。

この他にも、南沙諸島問題でフィリピンとの対立が表面化すると、フィリピン産の果実類の検閲強化し、規制を掛けたことがあった。日本に対しても尖閣問題でレアアースの輸出中断や日本製品の不買運動を行ったことがあった。一昨年も領有権問題でベトナムと対立すると、中国に進出していたベトナム企業の事業入札を認めないなどの「制裁措置」を取ってきた。

中国は韓国との間で昨年12月に自由貿易協定(FTA)を発効しているので韓国に対しては関税による直接的な制裁は掛けられない。しかし、非関税障壁を通じた韓国製品の輸入制限は可能だ。例えば、過去にも行ってきた輸入農水産物に対する検閲強化や通関拒否、不買運動などがある。

韓国の貿易は今や中国を抜きにしては語れないほど依存度が大きい。韓国銀行の統計によれば、昨年の対中輸出額は1,371億ドルと、全体の4分の1を占めている。貿易黒字は451億4千万ドルと韓国全体の黒字の42.6%を中国で占めている。(米国との貿易黒字は338億5千万ドルで、日本とは196億8千万ドルの貿易赤字)

現代起亜自動車は昨年中国市場で自動車を約167万を販売した。中国の消費者による韓国車の不買運動が起きれば大きな痛手となる。

LG化学、サムソンSDI,自動車バッテリー業界でも被害が予想される。特に最近規制の壁が高くなった電気バッテリー業界にとっては深刻だ。というのも、中国政府が先月、電気車バッテリー認証で韓国企業を脱落させ、現地事業にブレーキを掛けていたからだ。中国政府から認証をもらえないバッテリーは2018年1月から電気車の補助金が支給されない。

また、中国への依存度が圧倒的に大きい観光分野での打撃も予想される。

昨年韓国を訪れた外国人観光客1、323万人のうち約半分(598万)近くは中国人である。大韓航空とアシアナ航空が旅客路線売上額で中国が占める比重は13〜20%と高い。中国が本気で自国民に韓国旅行を自粛するような目に見える措置を取れば、韓国観光業は大きなダメージを受けることになる。

中韓蜜月にピリオッドが打たれるのか、中国の出方が注目される。