2016年7月17日(日)

 韓国が南シナ海で日米に同調できない決定的な理由

仲裁裁判所の判決に歓喜するフィリピンの人々(写真:ロイター/アフロ)


アジア欧州会議(ASEM)首脳会議では予想したとおり、李克強首相と朴槿恵大統領による中韓首脳会談はなかった。

直前に韓国が高々度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を決定したことに反発して中国が応じなかったのか、あるいは弁明しなければならない立場の韓国があえて忌避したのか不明だが、いずれにせよ接触はなかった。

結果として、朴大統領は南シナ海の問題で中国の主張を退けたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決について何も言わずに済んだ。安倍首相に倣って判決に従うよう李首相に物を申せば、中国の怒りを買うのが関の山。朴大統領にそのような勇気はない。

仲裁裁判所の裁定については一応、韓国は外務省スポークスマンの声明を通じて「留意する」との立場を表明している。また、「南シナ海の紛争が平和的で相違的な外交努力で解決するよう希望する」との見解も表明しているが、実に曖昧で抽象的で、中国に判決を受け入れるよう強く促した日米に比べると明らかに消極的である。

もちろん、声明で「我が政府はこれまで主要海上交通路である南シナ海の平和と安全、航行と上空飛行の自由が必ず保障されなければならず、南シナ海の紛争が関連合意と非軍事化公約、国際的に確立された行動規範に従って、解決すべきとの立場を一貫して堅持してきた」との原則には触れているものの判決後に「関係国は判決に従って、適切な措置を取るよう希望する」との見解を表明していた米国からすると不十分極まりない。

昨年10月の米韓首脳会談でオバマ米大統領は朴大統領に南沙の問題での立場を明確にするよう要請していた。そのことは、首脳会談後の共同記者会見で「朴大統領に唯一要請したことは、我々は中国が国際規範と法を遵守することを望むという点」とし「もし中国がそのような面で失敗すれば、韓国が声を出さなければいけない」と釘を刺していたことからも自明だ。韓国外務省の声明は明らかに米国の期待を裏切るものである。

韓国が南シナ海の問題で日米と同様のスタンスが取れないのは、中国とは戦略的同伴者関係にあること、北朝鮮の核問題解決のためには中国の協力が不可欠であること、また中国が韓国にとって第一の貿易パートナであることが原因とみられている。

また、今回、日米と足並みを揃えて、中国に裁定を受け入れるよう求めなかったのはTHAAD問題でこじれつつある中国との関係をこれ以上悪化させるのは得策ではないとの朴大統領の判断が優先されたようでもある。

しかし、「法の支配下で紛争を平和的に解決することが重要」として仲裁裁判所が下した裁定を中国に受け入れるよう求めた日本に同調できない決定的な理由はどうやら日韓の間に横たわっている竹島(独島)問題にあるようだ。

日本は両国の懸案である竹島問題の平和的解決の手段として国際司法裁判所(ICJ)での決着をこれまで検討してきた。

民主党時代の2012年8月10日に野田政権は李明博前大統領が竹島に上陸したことに反発し、ICJでの決着を韓国政府に呼び掛け、この年の8月21日に共同提訴を求める外交書簡を送っていた。韓国が日本の提案を拒否すると、一転単独提訴に切り替え、2か月後の10月にはICJに単独提訴する方向で調整に入っていた。

また、安倍晋三首相に至っては2014年1月30日、単独提訴の時期については「種々の情勢を総合的に判断して適切に対応する」と具体的には言及しなかったものの「(提訴の)準備は進めている」と国会で答弁していた。

日本は安倍総理がその気になれば、いつでも単独で提訴できる。もちろん。提訴しても、国際法上、提訴された側の韓国が同意しなければ、裁判は開けないが、それでもICJは1996年1月から稼働した国際海洋法裁判所の強制管轄権が一層強化されたことで、韓国に対して裁判への出席を強制できる。

日本が司法裁判所に提訴すれば、韓国が否認している領土問題の存在を国際社会にアピールすることができる。同時に韓国と争っている領土問題を日本が平和的に解決する努力をしていることも強調できる。さらに、国際法遵守の観点から韓国にICJの強制管轄権を受託するよう圧力を掛けることもできる。

万が一、韓国が裁判に勝てると過信し、あるいは国際世論に押されてICJ提訴に同意し、裁判が行われ、その結果、韓国に不利な判決が出れば、今の中国と同じ状況に置かれかねない。

米国と同盟関係にあったとしても、他国の領土や領海問題だからと言って、国際司法機関の裁きを安易に認めるわけにはいかないようだ。