2016年6月21日(火)

 中国「7人組」の一人が訪朝へ?」へ

金正恩委員長と習近平主席


来月(7月)11日の中朝友好相互条約締結55周年を迎えて中国が最高幹部である7人の政治局常務委員から一人を北朝鮮に派遣する可能性が出てきた。

政治局常務委員は習近平主席をトップにNo.2の国務総理の李克強以下、全人代常務委員長の張徳江、政治協商会議主席の愈正声、党中央書記処の劉雲山、党中央規律検査委員会書記の王岐山、そして序列7位の副総理の張高麗の7人で構成されている。仮に実現すれば、昨年10月の朝鮮労働党創建70周年行事に派遣された序列5位の劉雲山政治局常務委員以来となる。

金正恩体制が2011年12月にスタートして5年、習近平体制が1年遅れの2012年11月に誕生して4年目を迎えているが、首脳会談が一度も開かれてない、異常な状態が続いている。

江沢民政権(1989年6月―2002年11月)の時は、金日成主席が、また金正日総書記が訪中(2000年5月)し、首脳会談を行っていた。江沢民主席も2001年9月に訪朝し、金総書記と首脳会談を行っていた。

また、次の胡錦濤政権(2002年11月―2012年11月)時代も、金正日総書記が2004年4月、2006年1月、2010年5月、2010年8月、そして2011年5月と5度訪中し、また胡主席も2005年10月に訪朝し、首脳会談を行っていた。

中朝首脳による相互訪問が実現しないのは、北朝鮮が習近平体制発足の翌月(12月)に「衛星」と称してテポドンミサイルを発射し、翌2013年2月には3度目の核実験を強行したことに中国が激怒し、国連安保理の対北制裁決議に賛同し、これに北朝鮮が反発したことが引き金となっている。

昨年10月の劉雲山政治局常務委員の訪朝で関係修復の兆しが見られたものの、2か月後のモランボン楽団の北京公演(12月12日)を北朝鮮がドタキャンしたことで再び元の状態に戻ってしまった。

加えて、今年1月に北朝鮮が「水爆」と称して4度目の核実験を、翌2月には中国の説得を無視し、「衛星」として6度目のテポドン発射を強行したことに中国が「過去20年来最強の経済制裁」と称される国連制裁決議「2270」に賛同し、制裁を掛けたことで両国の関係は最悪の関係に陥っていた。

ところが、5月に北朝鮮が突如、前外相の李スヨン政治局員(国際担当)を中国に派遣し、習近平主席が6月1日に接見。そして今日から北京で始まる民間版6か国協議と称される北東アジア協力対話に北朝鮮が3年ぶりに出席を決め、崔善姫外務省副局長(6か国協議次席代表)を派遣したばかりである。

今回の政治局常務委員の派遣が関係修復が目的なのか、それとも条約の改定を通告することにあるのか、定かではない。核開発に釘を刺すことに狙いがあるようにも見えるが、仮に前者ならば、一度ならず、二度も、三度も中国の面子を損なう行動を北朝鮮が取っているにもかかわらず、袂を分かつことができないのか?

何よりも、中国にとって北朝鮮は東西冷戦終結後地球上に残った数少ない同じ陣営の社会主義国であり、伝統的友好国であるあることだ。共産主義者が一党支配する中国共産党と朝鮮労働党は言わば親戚関係にあるイデオロギー上の理由もある。また、1961年に北朝鮮と交わした中朝相互援助条約上の理由もある。加えて、朝鮮半島が米国の主導によって武力統一、もしくは北朝鮮が韓国によって吸収統一されれば、中国は米国との緩衝地帯(バッファーゾーン)を失うことの安全保障上の問題もある。

さらに、北朝鮮を失うことによる経済、資源外交上のデメリットもあるし、北朝鮮と袂を話かかれば、韓国が強く求めている高句麗をめぐる歴史論争、領土の返還要求に北朝鮮が同調し、さらには朝鮮自治州での分離・独立運動をけしかけるかもしれないとの不安もある。

中国による政治局常務委員の派遣で当分の間、北朝鮮による5度目の核実験はないとみるのが一般的だが、北朝鮮の今年1月の4度目の核実験は劉雲山政治局常務委員の訪朝から2カ月もしない間に行っている。

米韓は8月に夏の米韓合同軍事演習「フリーダム・バンガード」を実施する。北朝鮮はこれまで「演習を中止すれば、核実験を中止する」と求めてきた。核実験を中止、凍結するかどうかは、中国にかかっているのではなく、米国の対応にかかっているようだ。