2016年3月8日(火)

 チキンレースのゴングは鳴った! 北朝鮮の次の手は?

米軍の上陸作戦(写真:ロイター/アフロ)


米韓連合軍は演習内容と演習が実施される地点や投入される兵力や装備など情報を比較的に公開していることから北朝鮮からすればある程度米韓の手は読めるが、米韓にとって不気味なのは「総攻勢」が何を意味するのか、北朝鮮が次なる手を見せないことだ。

最高司令部声明(2月23日)、金正恩第一書記の発言(3月3日)、政府声明(3月4日)に外務省声明(3月4日)、そして国防委員会声明(3月7日)と2週間の間にありとあらゆる声明を出したところをみても、金第一書記ら指導部の除去(暗殺)を企図した「斬首作戦」を遂行するための今回の演習への北朝鮮の反発が尋常でないことがわかる。

今後予想される北朝鮮の打つ手としては、「2013年の危機」を参照にすれば、次のようなプロセスを踏むものとみられる。

金第一書記が自ら前線視察に乗り出し、部隊にはっぱをかけるものとみられる。「2013年の危機」の時は、米韓演習が開始されたその日に西海(黄海)上の離島の部隊を訪れていた。この最前線の視察を皮切りに、11軍団傘下の特殊部隊など相次いで見て回った。但し、仮に米韓特殊部隊による「斬首作戦」を極度に警戒しているなら、前線視察を控え、地下バンカーに潜伏することも考えられなくもないが、「怖がっている」と受け止められると、米韓連合軍を勢いづかせるし、また自軍の士気にもかかわる。

さらに、B−2米戦略爆撃機やF−22ステルス戦闘機などが朝鮮半島上空を飛来し、米原子力空母などが朝鮮半島沖で展開する段階では、韓国、日本の米軍基地及びグアムや米本土を攻撃するロケット部隊に再度、最高司令部の声明を出して「1号戦闘勤務体制」を発令する→軍作戦会議を招集し、ロケット部隊に射撃待機状態に入るよう指示する→一度も発射実験をしたことのないグアムに届く中距離弾道ミサイル「ムスダン」と米本土を標的にした長距離弾道ミサイルの「KN−08」を東海岸基地に配備する→韓国との戦時態勢突入宣言するなどが予想される。もしかすると、早ければ、演習期間中の3月31日から世界の主要国首脳らを集めてワシントンで開催される核安全サミットに合わせて5度目の核実験を断行するかもしれない。

準戦時体制もしくは戦闘動員態勢を敷く一方で、国内で大規模決起大会を開き、「報復には報復で、局地戦には局地戦で、全面戦には全面戦で応じる」との「臨戦態勢」の雰囲気が醸し出され、軍事的緊張が最高潮となれば、前回と同じように平壌駐在の外国大使館職員や韓国在住の外国人在留者や観光客にも国外退避を勧告するなど戦争前夜雰囲気を助長するだろう。

具体的な軍事的挑発として最も憂慮されるのは、韓国が再開している拡声器放送への攻撃と、黄海でのNLL(北方限界線)での衝突の可能性である。 特にNLLは要注意だ。

来月(4月)からはNLL付近で渡り蟹操業が解禁となる。このシーズン中に過去、南北艦船による海戦が4度起きている。2010年には韓国の領土、延坪島が砲撃されている。

この「延坪島事件」は戦争勃発一歩手前までエスカレートした。2度にわたる砲撃戦で甚大な被害を被った韓国軍は哨戒艦沈没事件後「一発撃ったら、10発、100発で報復する」と北朝鮮に警告を発してきた。金寛鎮国防長官(当時)は「北朝鮮が追加挑発すれば、自衛権の次元から航空機を利用し、(砲撃基地を)爆撃する」とまで公言している。

朴槿恵政権と金正恩政権下での昨年の危機一髪は南北高官会談が実現し、土壇場で回避されたが、今回は韓国政府も軍も容赦なく強行に出ているだけにちょっとした衝突が一歩誤れば、演習がそのまま実戦、本番に突入する可能性も大だ。

北朝鮮が休戦を維持する板門店連絡代表部の活動を停止し、米軍(国連軍)との通話を遮断し、韓国との南北軍事ホットラインも止めてしまったため休戦ラインや海上でのトラブルや衝突を回避、収拾するためのメカニズムがないため不測の事態を阻止できない。

些細なトラブルも、あるいは偶発的な衝突も、へたをすると、それが拡大し、局地戦、全面戦争に発展しかねない。