2018年7月27日(金)

 「形骸化された」休戦協定――65年目にして戦争終結となるか

米国、北朝鮮、中国がサインした朝鮮戦争休戦協定(左が金日成)(写真:ロイター/アフロ)


 今日(7月27日)は朝鮮戦争(1950-53年)休戦(停戦)日である。今年は休戦協定の締結からちょうど65年目となる。

 北朝鮮は非核化の条件として米国に安全保障を要求しているが、その最優先事項が休戦協定から平和協定への移行である。

 今年4月の南北首脳会談では「休戦協定締結から65年となる今年に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制の構築に向けた南北米の3者または南北米中の4者会談開催を積極的に推進していく」ことが宣言された。また、6月の史上初の米朝首脳会談でも「朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和を構築するため、共に努力する」ことで意見の一致をみている。

 第二次世界大戦最後の冷戦地帯でもあり、南北双方合わせて100万以上の軍人が対峙するアジアの火薬庫と称される朝鮮半島は今もなお、国際法的には「撃ち方止め」の状態が続いているに過ぎない。休戦協定はあってないに等しく、実質的に形骸化している。

 例えば、休戦協定第1条第6項の「双方は、いずれも非武装地帯内で又は非武装地帯に向かっていかなる敵対行為を行ってはならない」も7項の「軍事停戦委員会に許可しない限り、いかなる軍人又は文民も軍事境界線を越えることはできない」は順守されておらず、第2条の「(朝鮮半島の)国境外からの増援や軍事要員を入れることを停止する」も「(朝鮮半島の)国境外からの増援の作戦用航空機、装甲車及び弾薬を持ち込むことを停止する」も骨抜きになっている。

 何よりも、問題なのは1953年7月27日に締結された休戦協定を維持してきた軍事停戦委員会が1991年3月以来、一度も開かれてないことだ。それもこれも、北朝鮮が軍事停戦委員会から一方的に撤収してしまったことによる。原因は1991年3月に米国が停戦委員会の国連軍首席(代表)を米軍から韓国軍将校に交代させたことに北朝鮮が反発したためだ。北朝鮮は休戦協定を平和協定に替える問題では韓国が休戦協定の当事国でないことを理由に一貫して「韓国を相手にせず」との立場を取っていた。

 さらに北朝鮮は3年後の1994年5月に停戦委員会に代わる窓口として人民軍板門店代表部を設置し、同時に中国を説得し、中国人民支援軍代表部を撤収させ、以降、単独で米軍側と接触してきた。今回の米兵戦死者遺骸送還をめぐる板門店交渉も北朝鮮は人民軍板門店代表部所属の将校が軍事停戦委員会の場ではなく、北朝鮮側エリア内の「統一閣」で米軍の将校に会い、協議していた。

 もう一つの変化は、停戦委員会と並んで停戦状態を監視してきた中立国監視委員団(韓国側にスイス、スウェーデン、北朝鮮側にチェコとポーランド)も事実上機能が麻痺してしまったことだ。東欧社会主義政権が崩壊し、チェコとポーランドの両国が西欧化したため中立国のバランスが崩れたとして1995年5月に北朝鮮は中立国監視団の北朝鮮側事務所を一方的に閉鎖してしまった。

 北朝鮮は米軍と別途に韓国とは国防相会談や将軍級会談を開き、ホットな軍事問題については協議している。国防相会談は2000年6月に金大中大統領と金正日総書記との間で行われた初の南北首脳会談での合意に基づき同年9月に、また南北将軍級会談は盧武鉉政権下の2004年5月から行われている。

 国防長官会談では▲南北首脳会談での共同声明の履行努力及び交流と協力保障のための軍事的問題を解決する▲軍事的緊張緩和と朝鮮半島平和を強固にするため共同で努力する ▲(朝鮮半島縦断)鉄道・道路連結工事のための人員、車両等の非武装地帯出入りを許可し、安全を保障する▲鉄道と道路周辺の軍事境界線と非武装地帯を開放し、南北管轄地域設定問題を停戦協定に従って処理することで合意が交わされたが、すべてが中断したままにある。

 また、将軍級軍事会談では▲西海(黄海)での偶発衝突防止措置の改善方法▲西海上での共同漁業水域の設定▲軍事的緊張緩和及び信頼構築措置などについて協議が行われたが、これまた進捗がないまま今日に至っている。

 その後、北朝鮮は人民軍最高司令部が2013年3月7日に「協定の拘束を受けることなくいつでも制限なく、打撃を行うことができる」と休戦協定の白紙化を宣言し、休戦を維持する板門店連絡代表部の活動を停止し、米軍(国連軍)との通話を遮断し、韓国との南北軍事ホットラインも止めてしまった。

 休戦協定の破棄は、即、交戦状態への回帰を意味する。軍事境界線(38度線)を挟んでの「撃ち方止め」の状態の終焉を指す。休戦協定によって設定されていた南北4キロにわたる非武装地帯も自動的に消滅することになり、厳禁されていた部隊や重武装の配備も可能となる。

 休戦ラインや海上でのトラブルや衝突を回避、収拾するためのメカニズムがなくなれば、不測の事態を阻止できなくなる。些細なトラブルも、あるいは偶発的な衝突も、へたをすると、それが拡大し、局地戦、全面戦争に発展しかねない。

 幸いにして、北朝鮮は休戦協定を引き続き順守し、また南北首脳会談と米朝首脳会談を機に南北間、米朝間の軍事ホットラインも復活したが、これが戦争終結宣言、さらにはそれを国際法的に担保する平和協定に繋がるかどうかが最大の焦点となるだろう。