2018年6月27日(水)

 南北を結び、中露に繋がる朝鮮半島縦断鉄道の経済的メリット

2007年5月に5両編成の列車による初の試験運転が行われた。(写真:ロイター/アフロ)


 韓国と北朝鮮は昨日(26日)、軍事境界線がある板門店の韓国側施設で南北鉄道連結に関する協議を行い、南北を結ぶ東海線・京義線鉄道の近代化に向けた共同研究調査団を発足させ、とりあえず京義線の北朝鮮側区間(開城〜新義州)についての共同現地調査を7月24日から始めることにした。これは4月の文在寅―金正恩首脳会談での「板門店宣言」に基づくものである。

 「板門店宣言」で両首脳は「民族経済の均衡発展と共同繁栄を成し遂げるため、10.4宣言(2007年10月4日の盧武鉉大統領と金正日総書記の首脳会談)で合意した事業を積極的に推進し、第一段階として東海線および京義線鉄道と道路を連結し、現代化して活用するための実践的な対策を取る」ことを国民に約束していた。

 京義線の北朝鮮側区間に続いて、東海線の北朝鮮側区間(金剛山〜豆満江)についても共同調査が実施され、さらに7月中旬には京義線の南北連結区間(ムン山〜開城)と東海線の南北連結区間(猪津〜金剛山)の点検も行うようだ。南北が鉄道・道路に関する協議を行うのは2008年以来約10年ぶりのことである。

 朝鮮半島縦断鉄道の連結は18年前に金大中大統領の訪朝による初の南北首脳会談後に開かれた南北閣僚会議での合意事項である。

 南北は合意と同時に西側の京義線(ムン山〜開城間の27.3km)と東側(日本海側)の東海線(猪津〜金剛山の25.5km)の路線連結工事に着工し、3年後の2003年には完工した。総工費は5,454億ウォン(約712億円=当時のレート)で韓国側が支出した。この内、北朝鮮側への支援金は全体の3分の1の1,809億ウォン(約240億円)。

 盧武鉉政権下の2007年5月、5両編成の列車による初の試験運転が行われ、南北分断以来、京義線は56年ぶりに、東海線も57年ぶりに開通した。試験運転なので時速は10〜20kmと遅く、このため京義線は1時間30分も要した。

 しかし、半年後に行われた韓国大統領選挙で保守の李明博大統領候補が当選し、翌2008年に政権を発足させた李大統領が前政権の南北合意事項を見直す方針を打ち出すや南北関係は悪化し、鉄道再開事業は全面ストップしてしまった。結局、1回限りの試験運転で終わってしまった。このため2008年8月に京義線を利用した北京五輪への南北共同応援団派遣構想も日の目を見ることはなかった。北京五輪ではシドニー、アテネへと引き継がれていた南北選手団の統一旗の下での合同入場行進も断ち切れてしまった。

 「板門店宣言」に基づき、京義線と東海線が完全復旧すれば南北双方にとってその経済的メリットは計り知れないものがある。

 南北の交易はスタートした1989年の時点では僅か2,500万ドル程度だったが、中国などを介した間接貿易から直接貿易にシフトした2000年4月の時点では4億3千万ドルに急増。さらに海上ルート(船舶)による南北直接貿易の結果、盧武鉉政権下の2007年には約18億ドルと、7年間で約4倍以上も伸びた。こうした趨勢から盧武鉉政権は南北鉄道が復旧されれば、5年後の2012年には65億ドルになると期待されていた。

 仮に今後、北朝鮮の非核化が前進し、安保理制裁が緩和、解除されれば、南北交易は6倍、中朝貿易は5.5倍になると見積もられている。

 これまで南北貿易では仁川〜興南は主に水産物が、仁川〜南浦は委託加工物品が輸送され、釜山〜羅津間は中韓の貨物の中継港として利用されてきた。仁川〜南浦間の海上運賃は20フィートコンテナ1個(1TEU)あたり800ドルであるが、鉄道を利用すれば、200ドルと4分の1になる。運送までの日数も大幅に短縮される。平壌まで路線が開通すると、さらなる利益をもたらす。ソウル〜平壌周辺への鉄道輸送費はコンテナ1個あたり200ドルぐらいで、輸送日数も1〜3日は短縮できる。

 また、京義線(釜山〜丹東)と東海線(釜山〜羅津)が復旧すれば、中国やロシアから欧州大陸鉄道にも連結することになる。

 京義線は釜山〜ソウル〜開城〜新義州から中国の丹東を通って中国大陸横断鉄道(TCR)からシベリア横断鉄道(TSR)に連結するルートと、中国大陸〜モンゴルを通ってTSRに連結する路線の2本が開通することになる。

 また、東海線の開通に伴い京元線(ソウル〜元山〜羅津〜TSR)が復旧すれば、羅津〜ハサン(ロシア国境駅)を経てTSRと結ぶ路線と清津〜会寧〜南陽〜図們(中国国境都市)からTSRに繋がる路線が開かれる。

 中朝間では和龍〜南坪を結ぶ鉄道(41.68km)が建設され、また、丹東市と新義州市を結ぶ国境大橋も建設されている。ロ朝間でもすでにハサン〜羅津間で鉄道(54km)が開通し、今後、ウラジオストク〜ハサン〜羅津を結ぶ450kmの鉄道を近代化する。加えて、中朝露の3国は図們〜豆満江(咸鏡北道)〜ハサンを結ぶ126kmの区間の国際鉄道の再開にも合意している。

 KOTRA(大韓貿易振興公社)が2000年に発表した報告書によると、釜山からモスクワまで1TEUの貨物を輸送する場合、海上輸送なら30日かかり、運賃は2、130ドルだが、シベリア横断鉄道を利用すれば期間は15日に半減し、運賃も300ドル程度安くなる。

 京義線が貫通すれば韓国〜EU間の物量の20%、日本〜EU間の物量の5%が京義線を使ってシベリア横断鉄道で運ばれることになる。

 京義線を使ってシベリア横断鉄道で運ばれる場合の北朝鮮の年間運賃収入は韓国の403億円に比べて約1.8倍の720億円と推定されている。北朝鮮にとっても経済的メリットは大きい。