2019年8月9日(金)

 日本の半導体素材輸出許可を「日本製品不買運動」を展開している韓国はどう受け止めているのか?

韓国で展開される日本製品不買運動(写真:ロイター/アフロ)


 日本政府(経済産業省)は昨日、日本企業から申請が出されていた半導体素材「レジスト」(半導体の基板に塗る材料)の韓国への輸出を許可した。半導体素材3品の対韓輸出見直し措置が発動(7月4日)されてから35日目にして初めての許可である。

 個別許可対象品目に指定されたため審査には3か月を要することから許可が出るにしても10月頃になると踏んでいただけに韓国は予想外のこととして受け止めている。何よりも「完全に止められるのでは」との疑念を抱いていただけに「許可が出た」との一報に日本製品不買運動の真っただ中にある韓国は正直、拍子抜けした感も否めないようだ。

 当然、韓国の半導体、IT関連企業は安堵し、韓国大統領府も政府も肯定的に受け止めている。中国・西安にあるサムソン電子のメモリー半導体工場にもフッ化水素(半導体の基板の洗浄に使用する化学製品)の輸出が数日前に許可されていたことから日本が方針転換したのではないかとの楽観論さえ韓国企業の中には出てきているようだ。

 それでも韓国大統領府も政府も「ホワイト国」からの除外が撤回されていないことから依然として日本に対して不信、警戒心を抱いている。「何か企みがあるはずだ」というのが正直な感想のようだ。

 中国にあるサムソン電子のメモリー半導体工場へのフッ化水素の輸出は日本の輸出運用見直しを定めた7月前(6月中)に出されていたことからこの許可は当然、例外との扱いだ。従って、個別審査の結果、「レジスト」1件を持って輸出規制措置が緩和されたとみるのは早計過ぎるとして、同じく申請しているフッ化ポリイミド(液晶ディスプレイに必要な化学製品)や半導体フッ素など他の素材も日本が滞りなく許可を出すかを注視している。

 韓国の疑心は▲日本の規制措置は元徴用工問題への報復から出ているからこの問題で韓国が善処しない限り、解かれることはない▲「ホワイト国」からの除外(AからBグループに格下げ)は規制強化のための手段であるとみていることに尽きるようだ。

 韓国は今回、このタイミングで日本が許可を出したのは▲韓国内の反日運動の高揚、日本製品不買運動の拡大を懸念した▲韓国の日本からの輸入品の国産化方針で韓国市場喪失を危惧した▲今月24日が通告期限の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を思い止まらせることにあった▲米国からの働き掛けがあった▲日本の措置に対する国際社会の厳しい目を意識せざるを得なかった等など手前勝手な分析、解説が韓国紙面を賑わしているが、大統領府及び政府は「韓国の世界貿易機関(WTO)提訴に備え先手を打ったのでは」との見方が支配的だ。

 今回の許可について世耕弘成経済産業相は閣議後の記者会見で「安全保障上、懸念がない取引であると確認できたので輸出許可を付与した」と説明したうえで改めて「禁輸でないことを韓国に理解していただきたい」と述べ、また菅義偉官房長官も「厳格な審査を経て安全保障上、憂慮がないことを確認できたので許可した」と主張し、「今回の件は繰り返して述べているが、禁輸措置ではない」と繰り返していた。

 韓国は元徴用工裁判に対する報復措置とみなしてWTOに提訴する構えだが、日本の今回の許可は▲政治報復とは無縁であること▲韓国に対する措置は輸出禁止措置でないこと▲安全保障上の輸出管理の次元から客観的に対処していることを証明することになるが、これが韓国には「アリバイ作り」に見えるようだ。

 国際社会の反応を見て取った窮地の策なのか、それとも最初から緻密なシナリオに基づいての措置なのか、韓国の判断は分かれているようだが、どちらにしても日本からある種の心理戦、高度な心理戦を仕掛けられたと受け止めているようだ。

 韓国をグループBに格下げした輸出貿易管理令改正案が28日から施行されれば、韓国輸出に対する規制の幅と対象は広まることになる。日本の戦略物資だけでなく非戦略物資も依然としてキャッチオール規制を利用して対韓輸出を防ぐ可能性も残っている。

 軍事転用可能な製品や技術の輸出を制限するリスト規制品目も7月4日に指定した半導体素材3品目からレーダー、通信機器など240個程度拡大する案が本当に検討されているならば、韓国へのプレッシャーは一段と強まることになる。

 日本の今回の「許可」が「日韓報復合戦」収拾への一歩なのか、それとも「烽火」なのか、どちらにしても安倍政権の真意を見極めるには28日以降となるというのが文在寅政権の立場で、それまでは「全面対決」の姿勢を崩す気はないようだ。