2019年5月10日(金)

 再開した北朝鮮のミサイル発射 「人工衛星」の発射も!?

北朝鮮の人工衛星「光明星」(写真:ロイター/アフロ)


 北朝鮮が昨日(9日)、4日に続いて再び短距離ミサイルらしき飛翔体を2発発射した。

 前回は日本海に面した東海岸から発射され、240km飛行。今回は中国寄りの西側から発射され、陸地を横断し、日本海に着弾した。2発目の飛距離は430kmもあった。

 1回目の時は、平静を装っていたトランプ大統領だったが、さすがに2回目となると「(ミサイル発射は)誰も喜ばない。事態を非常に深刻に注視している」とコメントしていた。

 短距離かつ弾道ミサイルでないことから日米韓も国連安保理も問題視せず、北朝鮮との対話を継続する構えだが、北朝鮮の1年半ぶりのミサイル発射がトランプ政権に譲歩を促すための圧力の一環として計画されているならば、今後、第二弾、第三弾とエスカレートすることが予想される。

 北朝鮮が完全なる非核化を決断するまで「北との交渉は急がない、慌てない」方針のトランプ政権を動かすにはお家芸の瀬戸際外交に回帰するほかないと金正恩委員長が判断しているならば、その「切り札」となるのがおそらく人工衛星だろう。

 元来、人工衛星発射そのものは禁止対象ではないが、北朝鮮に限っては国連決議違反となる。核を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を大気圏外に運搬する用途として活用できるからだ。従って、米国は北朝鮮の人工衛星の発射も米国のレッドラインに設定している。

 常識に考えて、北朝鮮が強行すれば、北朝鮮にとってのデメリットは測り知れない。

 第一に 、制裁緩和どころか、国連の制裁はさらに強化され、経済苦境が一段と加重される。その結果、金委員長が力を入れている経済再建、国民生活の向上はおぼつかなくなる。

 第二に、4度の首脳会談で関係を修復したばかりの中国や、首脳会談をやったばかりのロシアの反発を買い、再び外交孤立を余儀なくされる恐れがある。

 第三に、事実上の長距離弾道ミサイルの発射はトランプ政権の態度を一層硬化させることになり、悲願の米朝平和協定の締結や国交正常化は遠のき、逆に軍事攻撃を誘発しかねない。

 第四に、発射を強行すれば、対北融和派の文在寅大統領を国内的に苦境に追いやるだけでなく、あてにしている食糧支援も手にすることができない。

 しかし、過去のパターンをみれば、北朝鮮という国はこうした「一般常識」は当てはまらない行動を取ってきた。一例として、北朝鮮は2012年2月29日にオバマ政権と交わした合意で「実りある会談が行われる期間は長距離ミサイルの発射を行わない」ことを約束したにもかかわらず、4月13日に衛星を発射していた。米国からすると、明らかに約束違反ということになるが、北朝鮮はミサイルと人工衛星は別物と開き直り、米国の抗議を意に介さなかった。

 この時の合意では米国から△北朝鮮を敵対視せず、自主権尊重と平等の精神で両国関係を改善する△24万トンの栄養食品を提供し、追加の食糧支援を実現するため努力する△6者会談が始まれば、制裁解除と軽水炉提供を優先的に論議する等の確約を取り付けていた。合意破棄というデメリットを覚悟した上での発射であったことは言うまでもない。

 金委員長は前回(2016年2月)「光明星4号」を発射した際「実用衛星をもっと多く発射せよ」と担当幹部らに直接指示し、翌年(2017年)の新年辞では「これ(2016年2月の打ち上げ成功)により宇宙征服に向かう道が敷かれた」と演説し、労働新聞も(同年12月25日付)また「平和的宇宙開発を一層推進し、広大な宇宙を征服していく」と、人工衛星の開発が重要な国策になっていることを明らかにしていた。

 北朝鮮の国家宇宙開発局の幹部は一昨年11月に訪朝したロシアの軍事専門家との面談で「数メートルの解像度を持つ重さ100kg以上の地球観測衛星と静止軌道に投入する数トン以上の通信衛星をほぼ完成させた」ことを告げていた。

 一時解体を表明していた平安北道・東倉里にある西海衛星発射場の復旧・補修工事は3月末には終了している。発射台にロケットを載せれば、いつでも発射可能な状態にあるようだ。

 やるか、やらないかは、金委員長の決断次第だが、2006年7月、2009年4月、2012年4月、同年12月、2016年2月とほぼ3年スパーンで行ってきたところをみると、時期的にはそろそろ発射してもおかしくはない。