2009年11月17日(火)

オバマ大統領のアジア外交演説について

 北朝鮮が「経済大国」を「強盛大国」の一環として看板に掲げているならば、目標の2012年までの残り3年の間に核問題も、拉致問題も解決して外交的孤立と経済苦境から抜け出さなければならない。核問題の相手であるオバマ政権にとっても2012年は任期最後の年となる。米朝とも、決着を付ける構えである。

 そのことは、オバマ大統領が14日に日本で行ったアジア外交演説から垣間見ることが出来る。

 オバマ大統領は北朝鮮に対して「米国は北朝鮮に(孤立とは)違う将来を提示する用意がある」「北朝鮮には国際社会に統合していく未来もありえる」「貧困のままでなく、貿易や投資や観光が北朝鮮国民へのより良い機会を与えるという経済的機会のある未来を持てる」「不安定さを増すのではなく、安全と尊敬の未来も持てる」と呼びかけた。

 もちろん、米国から提示された未来は「6者協議へ復帰し、これまでの合意を守り、NPTへの復帰と朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化を行うことだ」との前提条件付だ。果して、北朝鮮はこのオバマ演説をどう受け止めているのだろうか、知りたいところだ。

 演説には「何十年にわたって、北朝鮮は、核兵器開発の追及も含む、対決と挑発の道を歩んだ」とか「北朝鮮が国際的な義務の履行を拒否することは、同国の安全を低下させるだけで、より安全にはならない」とか「自国民をぞっとするような抑圧の下に置いている」とか、北朝鮮を刺激する部分もあることはあったが、総じて、ソフトな内容となっている。少なくとも、北朝鮮を「悪の枢軸」と、また金正日総書記を「ならず者」と呼んだブッシュ前大統領のそれとは大違いである。

 これまでならば、売り言葉に買い言葉で、北朝鮮はこの種の発言には必ず反論、反発する。しかし、17日現在、北朝鮮の外務省も、メディアも沈黙を保ったままだ。

 ボズワース特別代表の訪朝を早期に実現させるため反論を控えているのか、それとも今日から訪問する韓国での発言を聞いたうえで、まとめて論評するのか、韓国でのオバマ大統領の言動と北朝鮮の反応が俄然注目される。