2008年1月15日(火)

李明博次期大統領の記者会見

 李明博次期大統領の記者会見を行った。注目の南北関係では現実主義・実用主義者らしい考えを披露していた。

 会見内容は日本でもごく簡単に伝えられていたが、李次期政権が前政権の太陽政策を変更し、北朝鮮に厳しく出るとの分析と解説がされていた。韓国の北朝鮮政策が変わってもらいたいとの日本人の期待と願望が感じられていた。それほど大幅な軌道修正はなさそうだ。これまでの抱擁政策も変わらないとの感じだ。

 例えば、昨年10月の南北首脳会談で前任者が約束した大規模の経済協力は核廃棄の誠実な履行を条件としている。当然の話だ。核問題の解決なくして、本格的な経済協力は北朝鮮に甘いと言われる盧武鉉政権でもできない話だ。むしろ大統領当選後に、「核問題が進展すればより積極的に協力する」と何度も強調していることのほうが注目に値する。

 また、「経済協力事業の妥当性、財政負担、そして国民の合意という観点から履行する」という発言についても日本では「見直しか」というふうに捉えられているが、これも当たり前というか、極めて常識的な発言である。

 数百項目に上る約束事項を一気に同時にはできない。南北双方にとって必要性があり、かつ国民の支持が得られ、韓国にとって財政負担が少ないものから順にやるのが常道だ。李次期大統領が「履行しない」「白紙化する」と言ったならば、話は別だが、「履行する」と言っているのだから、結局のところ、前政権の約束を優先順位別に履行するだけのことだ。

 記者会見ではまた、強固な米韓関係の構築を強調していたが、その理由については「米韓関係がしっかりしたほうが南北関係を好転させることに繋がり、米韓関係が良くなれば、米朝関係も良くなる」と説明している。換言するならば、韓国が米朝関係改善のための橋渡し役を買って出るということだ。盧武鉉大統領も米朝仲介役を担おうとしたが、米国との関係がしっくりいってなかったため功を奏しなかった。

 次期首脳会談については「核放棄に寄与し、南北にプラスになるならば、いつでも行なう用意がある」との条件を付けていたが、これもまた、前政権と同じ立場だ。むしろ、「米韓や日韓のように必要ならば何度でもやる用意がある」と言っていることに注目したい。金大中―盧武鉉政権と続いた首脳会談を李次期大統領も継承することを実質的に宣言したことに等しい。

 李次期大統領がソウル市長時代に平壌訪問と金正日総書記との会談を画策していたのは公然たる事実だ。また驚いたことに、大統領選挙最中に側近が北京で北朝鮮のカウンターパートナーと極秘接触している。それどころか、大統領選挙前の9月下旬にソウルを極秘訪問した金養建統一戦線部長と李氏自身が秘密裏に会っていたとの驚くべき情報もある。

 盧武鉉政権とはミクロ的な部分では若干の違いがあるが、マクロ部分では対北政策が同じなのは、韓国大統領の宿命でもある。