2009年5月23日(土)

盧武鉉前大統領の死は自殺だ

 「盧武鉉前大統領死亡」との速報が画面に流れた。「死亡」でなく、「逮捕」ならば驚くに値しないが、「死亡」とは絶句だ。

 今朝、登山中に滑落し、頭部に重傷を負って病院に運ばれ、死亡したとのことだが、秘書官が付き添っての日課の散策中に偶然転落するとは。足を滑らせて、転げ落ちただけで即死亡とはできすぎだ。

 盧前大統領が足を踏み外し落ちたのか、自殺を図ったのか、釜山警察は慎重に調べているが、盧前大統領はこの日に限って、家族や側近に知らせず、警護員を一人だけ連れて、裏山の散策に出かけたようだ。そうしたことから、警察は前大統領が自殺した可能性もあるとみて、経緯を調べているが、韓国のMBCテレビは盧前大統領の秘書室長の言葉として「盧前大統領は投身自殺をした」と報じている。また、家族宛てに遺言を残していたそうだ。

 投身自殺なら、やはり、盧前大統領及びファミリーにまつわる金銭スキャンダルを苦にしてのことだろう。

 盧武鉉前大統領は先月30日、検察当局に出頭し、深夜まで取り調べを受けた。容疑は在任中、前大統領の有力後援者、朴淵次・泰光実業会長から家族ぐるみで外貨600万ドル(約5億8000万円)を「賄賂」として受け取ったというものだ。

 すでに実兄の盧建平被告が約30億ウォン(約2億2500万円)の不正な利益供与を受けた罪で起訴され、懲役4年の実刑判決を言い渡され、服役中にある。権良淑夫人も大統領官邸で外貨100万ドルを受け取った疑惑ですでに検察の事情聴取を受けているが、再度喚問されるとの話が伝わっていた。

 長男も、また姪の婿までも賄賂授受の容疑が持ち上がり、取調べを受けていたが、最近になって新たに長女が米国に滞在していた2007年9月当時、数十万ドルの資金を受け取っていたことも判明したばかりだ。

 韓国の最高検察は、盧前大統領ファミリーが授受した一連の資金が賄賂に当たるとみて、近く前大統領の逮捕状を請求するかどうか最終的な判断を下す方針にあった。まさに盧前大統領は四面楚歌に陥っていた。その矢先の突然の死である。

 盧前大統領は最高検に出頭するにあたって「国民の皆さんに面目ない。失望させて申しわけない」と述べていたが、死んでお詫びしようと思ったのだろうか。

 盧前大統領に同じ容疑で服役した全斗煥、盧泰愚元大統領のようなふてぶてしさがあったならば、死を選ぶこともなかったろうに、清潔、誠実さを売り物にしていた元弁護士だけに世間から浴びせられる汚名に耐えられなかったのだろう。

 学生革命で倒された初代大統領の李承晩以後、側近に暗殺された朴正熙、懲役刑で牢獄に繋がれた全斗煥と盧泰愚、息子が逮捕された金泳三と金大中と、韓国歴代大統領の末路は何とも哀れ極まりない。