2009年10月23日(金)

南北首脳会談に向けて秘密接触?

 この時期に南北首脳会談の開催話が持ち上がっている。

 事の発端は、北朝鮮の対韓担当責任者の金養建統一戦線部部長が15日―20日までの間、極秘で訪中したことにある。15日に入国した際には、日本のメディアに、また20日の帰国時は韓国の鄭東泳元統一相に北京空港で目撃されたことから金部長の隠密旅行が発覚した。

 金正日総書記の側近の訪中だけに、当然韓国ではその目的が関心の的となった。8月の金大中元大統領死去の際に弔問団の一員として、訪韓し、青瓦台を訪れ、李明博大統領と面談していたことから「もしかしたら韓国側と秘かに接触したのでは」との噂が飛び交った。

 たまたま、同時期に李明博大統領の実兄の李相徳前国会副議長が外遊していたことから一時は「金養建・李相徳接触」の可能性が取り沙汰されたこともあった。しかし、その後、李氏が「事実無根」と完全否定したことで、韓国のマスコミは一斉に金部長と極秘接触した韓国の「ミスターX」探しに躍起となっている。金部長のパートナーは順当ならば、玄仁沢統一部長官だが、玄長官はこの期間はソウルにいた。

 韓国の「ミスターX」が誰なのか、依然不明だが、金部長が金総書記の側近であることから、「ミスターX」も李大統領の側近、あるいは特使であることは間違いない。会談した場所は中国でなく、どうやらシンガポールとの見方が有力だ。2007年の2度目の南北首脳会談の時も準備のための秘密接触が行われた場所だからである。折りしも、李明博大統領一行は現在、ベトナム、カンボジア、タイなど東南アジア歴訪中である。

 報道によると、南北秘密接触は、北朝鮮側からの要請によるもので、北朝鮮は李大統領の訪朝による南北首脳会談を提唱したとのことだ。これに対して、韓国側は二つの条件を提示したと伝えられている。一つは、核問題の進展に繋がること、二つ目は、会談場所は韓国であること。過去2度、韓国の大統領が訪朝し、平壌で首脳会談を開いていることから、次は韓国で行いたい、北朝鮮は金総書記の答礼訪問の約束を守るべきであると主張したとのことだ。

 韓国側は警備上の問題で、ソウルが困難な場合は、最も安全地帯である済州島での開催を打診したようだが、北朝鮮は済州島には飛行機を使わざるを得ないことから難色を示したという。こうしたことから、南北秘密接触は不調に終わったと伝えられているが、会談場所については、平壌以外の第3の場所、例えば、韓国人観光客が訪れることが可能となった金剛山や南北交流の象徴の場である開城という手もある。難問は、首脳会談の議題である。

 要は金総書記が平和協定や国交正常化の見返りとして米国に与える餌(核問題)を韓国にも与える用意があるかどうかにかかっているが、できない話だろう。韓国にとっても、今直ぐに南北首脳会談をやらなければならない緊急性はない。李大統領からすれば、柿の木が熟して落ちるまでじっくり待つのではないだろうか。