2002年6月20日(木)

第一次黄海交戦

 南北双方とも黄海交戦について相手方の領海侵犯と計画的先制攻撃によって引き起こされたとして、責任者の処罰と謝罪を要求している。全く同じ言い分ですが、双方とも現場の領有権を主張しているので当然のことかもしれない。99年の交戦の時とその主張も要求も何一つ変わっていない。変化があるとすれば、映像が公開されなかったことだ。

 前回は、衝突の映像が公開されたことで北朝鮮による先制攻撃が証明された。先の奄美大島不審船事件も海上保安庁の巡視船が撮影していたからこそ日本側の正当防衛が認められた。今回は突然の事だったので、撮影できなかったと説明しているが、ならば危機管理がなってない。

 もう一つの違いは、今回は、10隻近くが衝突した前回とは異なり、銃撃戦が2対1から4対1で行われたことだ。最終的には韓国の哨戒艇2隻も応援に加わり8対1となった。その結果、先制攻撃をした北朝鮮の警備艇は被弾、炎上し、逃走したが、「計画的奇襲作戦」にしては北朝鮮の先制攻撃は「自殺行為」に等しい。まして、先に南下していたもう一隻の警備艇が戦闘に加わらなかったのも不自然。

 北朝鮮の動機については、大敗した「99年交戦」の報復説が指摘されている。ほとんど被害がなかった前回とは異なり、今回は韓国側に甚大な被害が出ていることから「戦果」を強調してもよさそうなものだが、そうした「誇らしげな報道」も今のところない。前回は、韓国側は死者、沈没船ともゼロだったにもかかわらず北朝鮮の人民軍海軍司令部は「この日の交戦で敵どもは10余隻の戦闘艦隊が炎上あるいは、大破し、多くの死体と敗残兵どもを収容して逃走せざるを得なかった」と「大本営発表」を行っていた。

 一方で、北朝鮮の警備艇を逃してしまったことについて韓国内では「なぜ、追撃して撃沈しなかったのか」「戦闘機を飛ばして、やっつけなかったのか」と不満が渦巻いている。ワ−ルドカップの応援で高まった韓国人の一体感と愛国心がこうした勇ましい発言に繋がっているのだろう。しかしそうすれば、韓国国防部が憂慮していたように空中戦、局地戦に発展していたかもしれない。

 韓国当局は、先制奇襲攻撃にあった今回の教訓から北朝鮮の警備艇が退去しない場合、これまでのように警告放送をせずに直ちに威嚇、あるいは船体射撃を行うことを決定した。北朝鮮当局が海の軍事境界線とも言われる北方限界線(NLL)を認めず、領有権を主張している以上、北朝鮮の漁船、警備艇が今後も南下するのは必至で、この海域での衝突は避けられそうにない。