2002年9月15日(日)

小泉電撃訪朝発表

 何が起きるかわからないのが、昨今の朝鮮半島情勢だ。2000年5月の南北首脳会談の発表にも驚かされたが、今回の小泉総理の訪朝発表はもっと衝撃的だった。南北首脳会談は、北朝鮮に融和的な金大中氏が大統領になったことで時間の問題とされていたが、日朝関係は、小泉総理が北朝鮮を訪問し、金正日総書記と会談する状況にはなかったからだ。

 筆者は、これまで拉致問題など日朝懸案打開のためには日朝トップ会談以外に術はないと一貫して提唱してきた。「小泉訪朝」の発表があった4日前の東京新聞の座談会で「 日本政府に思い切って首脳外交を展開するよう提案したい。積み上げ方式では拉致問題解決は難しい。小泉首相が平壌を訪問して金正日総書記と会い、日本の懸念を伝えるやり方も考えないと」と提言していた。それでも小泉総理が本気で、訪朝を決断するとは思ってもいなかった。

 今度はこれに金正日総書記が応える番だ。拉致、不審船,ミサイルなど日本の懸念を解消するため英断を下すべきだ。拉致問題で満足のいく結果を出せなければ、日本国民は失望し、せっかくの歴史的会談も色褪せてしまうだろう。

 週刊誌などのマスコミは総じて「小泉訪朝」に批判的だ。自国の総理が国民の生命と安全,平和を守るため身を挺して訪朝するのに様々な条件を付け、手足を縛ったまま訪朝させようとしている。相手が相手だけに本来ならば、「 頑張れ!」と声を掛けても良さそうなものだが、あまりにも冷たすぎる。

 「金大中大統領の二の舞になる恐れがある」との声もあるが、勘違いしては困る。確かに南北首脳会談後も黄海で南北警備艇の銃撃戦が発生したりして、南北関係は一進一退を繰り返しているが、釜山アジア大会への北朝鮮の参加を果して誰が予想しただろうか。

 火中の栗を拾いたがらない、君子危うきに近寄らない政治家が多い中で果敢に北朝鮮に挑む小泉総理にとって仮に日朝首脳会談が失敗したとしても失うものはない。1度でだめならば、2度,3度とやれば良い。虫眼鏡で見ずに日本国民の国益という観点からもう少し大局的に情勢を、物事を見るべきだ。