2005年3月2日(水)

「太陽」と「北風」を交互に北のマントを脱がせるのか

 拉致問題でも北朝鮮の態度は強気一辺倒だ。日本側の反論について「絶対に受け入れられない」とし、協議再開の要請についても「議論する考えはない」と無視している。経済制裁をちらつかせる日本に対して「お好きなように」と開き直っているが、これが虚勢なのかどうか、これまたもうしばらく様子をみる必要がある。

 しかし、一つ明白なことは、金正日総書記が先に会見した中国共産党対外連絡部長に対して拉致問題は「解決済み」と断じ、「日本政府の立場が核問題を巡る6か国協議再開に深刻な問題を作りだしている」と非難していることだ。残り10人の拉致被害者について北朝鮮が翻意するかどうかは、金総書記の決断にかかっているとみていたが、案の定、北朝鮮は前回の発表を撤回する気はなさそうだ。

 小泉総理は北朝鮮の真意を別なところにあると淡い期待を寄せいているようだが、日本が経済制裁を発動しても、「昔の北朝鮮」(拉致を日本のでっち上げと主張していた頃)に戻ってしまった今となっては、発言を撤回し、再々調査に応じるような誠意を見せることはなさそうだ。「やるならやってみろ」と言われ何もしないわけにもいかず日本としては何らかの対応をせざるを得ない。

 そこで3月1日から「表明なき制裁」と呼ばれる船舶油濁損害賠償保障法がいよいよ施行される。この法律が施行されれば、北朝鮮の船舶100隻のうち、16隻しか保険に加入していないことから北朝鮮の船の入港は大幅に制限される。

 昨年1年間の入港件数は1、070隻。単純に計算すると、6分の1に減ることになり、北朝鮮が痛手を被るのは間違いない。しかし、これは、拉致問題絡みの経済制裁ではないことから北朝鮮がこの法律の施行の解除を求め、拉致問題で前向きに出てくる可能性もない。仮に拉致問題で誠意を示したとしてもこの法の適用から外されることはないからだ。やはり、やるなら、改正外為法か、船舶入港禁止法を適用するしかない。拉致問題のための制裁であることをはっきり相手に認識させる必要がある。何事も中途半端はよくない。圧力なら圧力だけで押し通すか、対話なら対話で終始一貫するか、どちらかはっきりさせたほうがよい。「対話と圧力」から「圧力と対話」に変えても同じことでそもそも矛盾している。太陽と北風を交代でやっていてはいつまでたってもマントを脱がすことはできない。