2005年9月13日(火)

再開された6か国協議の最大争点は「核の平和利用」

 6か国協議が再開された。最大の争点は、「核の平和利用問題」。核の平和利用の権利と行使を譲らない北朝鮮に対して、米国は「平和利用は認めない」との立場を固守している。米朝間の溝が埋まらなければ6か国協議の枠が壊れ、国連安全保障理事会に持ち込まれるとの見方も出ている。安倍晋三自民党幹事長代理も「今回が北朝鮮にとってはラストチャンス。(応じなければ)国連安保理で制裁の可能性が出てくる」と述べていた。「国連安保理に持ち込む」との「脅し」が効いているのかどうか、疑わざるを得ない。

 北朝鮮はまるで、「耳にタコができるほど聞き飽きた」とばかり平然としている。その理由は、米国はもはや国連安保理には持ち込めないと、したたかに計算している。

 第一に、核の平和利用の問題に限っては、NPTに復帰し、IAEAの査察を受け入れれば、国際法的に容認され、制裁の対象とはならないからだ。むしろ、国連安保理に付託されればNPTに加盟しないインドやパキスタンの核の平和利用を容認した米国の身勝手な二重基準が浮き彫りにされ、逆に米国が国際社会で孤立すると、北朝鮮はみている。

 第二に、この問題では中国とロシアが北朝鮮の立場を支持していることだ。

 第三に、朝鮮半島のもう一方の当事者、韓国も北朝鮮に同調していることが北朝鮮を強気にさせている。

 92年に発効された南北非核化宣言では核の平和利用が盛り込まれている。そうした背景もあって8月に行われたある世論調査では、韓国人の54%が「核の平和利用を認めるべき」と、北朝鮮の立場を支持し、「認めるべきではない」の40%を上回っていた。さらに、「南北関係と米韓関係のどちらが重要か」との質問でも「南北関係」が50%,「米韓関係」が45%と、「北朝鮮重視」「脱米国離れ」が顕著となっている。

 米国は妥協案として、電力を除く医療、農業、産業分野など平和利用に限定するならば、研究用レベルの小さな原子炉(寧辺にある5千km原子炉よりも小規模)の保有を認めることも示唆しているが、北朝鮮が軽水炉建設の再開を主張し、当惑している。北朝鮮がこの時点で軽水炉を持ち出したのは、韓国からの送電を実質的に拒否したことを意味している。

 軽水炉に固執する理由が、無理難題を吹っ掛けることで、交渉を長引かせ、核開発のための時間を稼ごうとしているのか、それとも、いざという場合に備え、核開発に転用できるカ−ドとして握っておきたいためか、あるいはハ−ドルを高くすることでより多くの経済支援を獲得するためなのか、今度の協議で北朝鮮の狙いが見えてくる。