2005年9月6日(火)

仁川アジア大会で話題を呼んだ北朝鮮女性応援団

 仁川で開かれたアジア陸上選手権大会に派遣された北朝鮮の女性応援団が昨日、帰国した。2002年の釜山アジア大会、2003年の大邱ユニバ−シア−ドに続いて、今回も大きな話題を集めた。

 主催者の仁川市は「北朝鮮選手団と応援団のおかげで大会は成功した」と総括していた。マスコミに大きく取り上げられたこともあって、観客動員数も予想を上回りまさに、女性応援団さまざまだったようだ。
 一方の北朝鮮も大きな成果を得たようだ。彼女らは韓国の若者を完全に「虜」にした。それは、「仮に米朝戦わば、どちらを応援するか」とのアンケ−ト調査に「北朝鮮を応援する」と答えた人が「米国」と答えた人よりも上回ったことをみても明らかだ。

 かつては韓国革命のため韓国に工作員やスパイを送り込み、地下組織を網羅し、韓国の若者をオルグする、それが北朝鮮の伝統的な対南工作手法だった。ところが、こうした成功率の少ない、かつリスクの高い非合法的な手段に比べて、女性応援団は、韓国に合法的に入って「我々は同じ民族」「祖国統一」を叫び、その結果、韓国の若者の間で地下組織ならぬファンクラブが結成されるわけだから、女性応援団の宣伝効果は予想以上のものがあったと思われる。

 韓国は物や情報の流入で北朝鮮の改革、開放を促すとの立場から南北交流を進めているが、北朝鮮もまた、韓国の世論、社会を「容共」(北朝鮮を受け入れる)にするため南北交流を受け入れている。

 女性応援団は北朝鮮にとって韓国の物量作戦に対抗できる唯一の宣伝手段なのかもしれない。最終的にどちらが引っ張られるのか、わからないが、いずれにしても南北交流が深まるのは良いことで、歓迎すべきこと。北朝鮮と対決し、かつ「日韓対北朝鮮」という固定概念、冷戦思考に囚われている日本人の中から「韓国は北朝鮮に取り込まれている」という不安の声が聞かれるが、ここ数年で朝鮮半島の状況が変わったということにまだ気付いていないのかもしれない。

 米朝もし戦わばでは6対4で、北朝鮮が米国を上回ったが、仮に日朝に関するアンケ−トを取ったら、おそらく、「日本を応援する」は2割りも満たないだろう。「日本対南北」という構図に変わるのも時間の問題かもしれない。