2007年5月8日(火)

「京義線復旧の経済的メリット」

▲大陸鉄道との連結
 京義線が復旧すれば、大陸鉄道と連結する4つの路線が開通する。
   1 京元線とシベリア横断鉄道を連結する路線。
  釜山−ソウル−元山−羅津−豆満江(北朝鮮国境駅)ーハッサン(ロシア国境駅)を経て、シベリア横断鉄道(TSR)と結ぶ。
  釜山から豆満江までは1千313km、ハッサンからモスクワまでは9千208km、モスクワから欧州の主要都市までの平均距離は約2千533km。従って、この路線の総延長は1万3千54kmになる。

 2 京義線と中国大陸横断鉄道(TCR)とシベリア横断鉄道(TSR)を連結する路線。
  釜山−ソウルー開城−新義州から中国の丹東を繋いで中国大陸横断鉄道に連結する。
  釜山から新義州まで945km,丹東からモスクワまで8千613km、モスクワから欧州の主要都市までが約2千533kmで全長1万2千91kmの路線だ。

  3 京元線と満州通過鉄道(TMR)を経て、TSRに連結する路線。
  釜山−ソウルー新端里−清津−会寧ー南陽−図們(中国国境都市)を結ぶ。
  釜山から南陽までは1千354km、図們からモスクワまでは7千721km、モスクワから欧州の主要都市までが約2千533km。総延長1万1千608kmの路線だ。

  4 京義線とモンゴル通過鉄道(TMGR)を通ってTSRに連結する路線。
  釜山ーソウルー新義州ー丹東−北京ーモンゴルを結ぶ。
  釜山から新義州が945km、丹東からモスクワまでが8千613km。モスクワから欧州主要都市までが約2千533kmなので、総延長は1万2千91km。

▲物流費の削減
 昨年1年間の南北交易は13億4千9百万ドル。南北交易は船舶を利用した海上ルートで主に行われてきた。
 仁川−興南間は主に水産物が、仁川ー南浦間は委託加工物品が輸送され、釜山−羅津間は韓中の貨物の中継港として利用されてきた。
 仁川ー南浦間の海上運賃は20フィートコンテナ1個(1TEU)あたり1千ドル程度である。
 釜山からオランダのロッテルダムまでの海上運賃は1千ドル。
 南浦入港料は2千5百トン級船舶で9千ドル。中国の大連の2倍だ。
 北朝鮮の地域へは貨物の90%を鉄道で輸送する。旅客輸送も60%は鉄道による。従って、南浦港まで荷物を貨物船で運んだとしても目的地までは鉄道を使うことになる。
 京義線が復元すれば、ソウル−ピョンヤン周辺への鉄道輸送費は20フィートコンテナ1個(1TEU)あたり200ドルぐらいとなる。輸送日数も1〜3日は短縮できる。
 京義線が復活すれば、南北交易規模は大幅に増大する。仮に毎年30%づつ増えたとすれば、5年後の南北交易量は約5倍に跳ね上がることになる。
 仮に2008年に京義線を利用するコンテナ物量を16万6千TEU、一般貨物を166万トンとすれば、北朝鮮側の通貨運賃収入はコンテナが約2千万ドル、また一般貨物も同じく2千万ドルの規模となる。
 さらに、シベリア横断鉄道と繋がれば、南北及びロシアにも利益をもたらす。
 日韓の貨物はロシアのボストチニ港まで海上輸送され、そこからシベリア鉄道を利用して運ばれることになる。
 韓国の場合、釜山から貨物を運べば、内陸輸送料金がTEUあたり約300ドル。釜山からボストチニ港までの海上運賃は800〜1千ドル程度。しかし、ソウルからボストチニまでは1千100〜1千300ドル程度。
 京義線が復旧すれば、これら貨物を直にシベリア横断鉄道に連結することができる。
 京義線が貫通すれば韓国−EU間の物量の20%、日本−EU間の物量の5%を京義線を通じ、シベリア横断鉄道で運ばれることになる。それに伴う南北の年間運賃収入は2010年には韓国が4千36億ウォン、北朝鮮が7千200億ウォンと推定される。

▲産業構造の再編
 京義線が通っている北朝鮮の工業地区はピョンヤン工業地区、清天川工業地区、新義州工業地区がある。また京義線から平羅線(ピョンヤン−羅津)に連結されている。
 この京義線と平羅線を利用すれば南北交易は単なる賃加工から設備搬出型委託加工形態に変わる。さらに衣類、履物、玩具のような軽工業製品と単純組立電気、電子製品を大量に輸送することができる。