2008年12月22日(月)

「領土議連」の対馬視察を考える

 政局で対立しているはずの自民・民主両党の国会議員らが仲良く対馬を視察した。テレビには山谷えりこ、衛藤晟一、松原仁、山田正彦、平沼赳夫氏ら馴染みの先生方の顔が映し出されていた。それもそのはずで平沼会長をはじめ全員が拉致議員連盟の中核メンバーである。

 対馬での拉致の実態調査と思いきや、そうではなく、韓国人の観光ラッシュの実態、それに伴う韓国資本による土地、不動産の買い占めの実情を調査することが目的のようだ。拉致議連による視察ではなく、「日本の領土を守るために行動する議員連盟」(領土議連)による視察とのことだ。

 「領土議連」会長の山谷さんと事務局長の松原仁さんの二人は、過去の歴史認識においては先ごろまで騒がれていた田母神俊雄自衛隊前航空幕僚長の考えに非常に近い。

 拉致問題や北朝鮮に対しては日韓共闘を求めている拉致議連の方々が歴史認識問題では韓国と対峙しているというのも面白い。さらに興味深いのは、竹島問題や歴史認識問題においては声高に「反日」を叫ぶハンナラ党の議員や論陣を張る民族紙、朝鮮日報や趙甲済氏など論客が「拉致議連」の「もう一つの役割」を知っていながら共通の目標である「金正日政権打倒」という利害関係上、領土や歴史認識問題での日本側の言動を見てみぬふりをしていることだ。「敵の敵は味方」ということのようだ。

 今回の「領土議連」の視察は、韓国人による対馬の不動産の買占めをこのまま放置すれば、対馬そのものが韓国に乗っ取られるかもしれない、海上自衛隊の基地近くの土地が買収されれば安全保障上好ましくないとの危惧によるものだ。日本がかつて真珠湾攻撃したハワイの土地、不動産を買い占めても米国で起きなかった議論が日本では起きているからこれまた面白い。

 領土紛争のない日米と、領土論争真っ只中の日韓の違いと言えば、それまでだが、要は韓国からの観光に頼らなくても島の生計が成り立つような施策を講じることが、問題の解決に繋がる。簡単な話しが多くの日本人が対馬を訪れ、土地や不動産を買って上げれば済むことだ。

 今秋、横浜港から客船「日本丸」に乗船して、韓国クルーズをしたが、途中対馬を通過した。可能ならば下船して、島を見学したいとの誘惑に駆られたが、デッキーに出て、島を見渡していた乗客はそう多くはなかった。

 円高、ウォン安と聞いて、日本人は韓国にどっと押しかけている。お陰で韓国は大助かりだ。ところが、その逆に大分の温泉地を含め、外国からの観光客で成り立っている観光地はどこも閑古鳥が鳴いている。韓国旅行を自粛して、国内旅行に切り替えれば、救済されるのに、それができない、あるいはやろうとしないところに問題がある。自分で自分の首を絞めるようなものだ。

 これからは少子化の時代と共に、「3K」(きつい、汚い、危険な仕事)などは外国からの労働力に依存せざるを得なくなる。老後の介護もフィリピンなど外国人看護士に頼らざるを得ないのが実情だ。

 外国からの労働力は受け入れるが、定住し、家など不動産を持つのはNOというのではあまりにも虫が良すぎるのでは。それが嫌ならば、「3K」も、日本人の老後のケアーも日本人自身で解決すべきでは。