2008年7月3日(木)

外国企業の北朝鮮進出の現状

 ▲外国企業の進出状況

 現在、1967年にポーランドが「朝鮮―ポーランド運送会社」を、95年にノルウェーの投資会社と北朝鮮の大聖銀行が共同で投資した唯一の西側銀行の大同信用銀行がある。

 中国は現在、12鉱山に12億ドルを投資。鉄鉱石、金、モリブデン、亜鉛、銅、石炭。

 オリョン=鉄鉱石、茂山=鉄鉱石、恵山=亜鉛、金、銅、サンノン=金、トッソン=鉄鉱石、ヨンドン=石炭、ヨンフン=モリブデン、銀波=鉛と亜鉛

 吉林省最大の鉱山会社「通化鉄鋼グループ」と中国の「五鉱グループ」、それに山東省の「国大黄金」が鉱山会に乗り出している。

 茂山鉱山は吉林省最大の鉱山会社「通化鉄鋼グループ」が50年間の採掘権を得た。独占権の金額は8億6千万ドル。

 中国の遼寧省瀋陽の南に位置している人口50万の都市、燈塔市共産連合会が08年5月に訪朝。油性ペイント工場、衣類工場、亜鉛工場設立に関する投資の覚書を交わした。彩麗佳社は300万ユーロ(4億7千万円)投資してペイント工場を建設する。安い労働賃金が魅力となっている。北朝鮮の開城(ケソン)工業団地に外国系企業では初めて中国業者が入居することになった。

 韓国土地公社は07年8月28日、「中国の人工つめ製造会社」が開城工業団地に入居するため、国内に設立した現地法人と入居契約を結んだ」と明らかにした。

 外国企業が開城工業団地に入居するには国内に法人を置く必要があり、土地公社はこの法人と契約する。

 同社は開城工業団地第1段階外国人企業用地1筆(6000平方メートル)の分譲を2億5800万ウォンで受ける。

 中国の美容材料製造会社、天津珍熙美容実業有限公司が外国企業として初めて開城工業団地に進出することが決まった。

 中国の合板製造会社の臨沂市百川木業有限公司も30日までに入居(2000平方メートル)契約を行うため手続きを行っている。

 開城工業団地第1段階事業地には外国企業用地6筆がある。 6月の分譲時に申請業者がなかったため、先月から随意契約で分譲している。

 衛生用品メーカーのキンバリー・クラークが、開城工業団地への投資を検討していることがわかり、外資系企業として初めての開城工業団地進出に関心が集まっている。

 同社の北アジア総轄社長を兼任している柳韓キンバリーの文国現(ムン・グクヒョン)社長がこのほど、記者らとの懇談の席で「われわれが大企業として最初に進出しようと思う。柳韓キンバリーは規模が大きいので、現在中国で稼動中の縫製工場が進出することになる」と述べた。まずは仮契約をした上で本社を説得する考えだという。これに先立ち2月に柳韓キンバリーの研究開発センターオープンを記念して訪韓したキンバリーのフォーク会長ら経営陣は、文社長らとともに開城工業団地を視察している。

 韓国も韓国公社が黄海南道の県村の黒鉛鉱山を2003年に合弁契約を交わした。1,020万ドルを投資し、鉱山生産目標は年間3千トン。韓国公社は今後15年間、毎年1,830万トンを輸入(韓国国内需要の20%)することになっている。

 また、衣類、履物、石鹸生産に必要な8千万ドル(99億円)相当の原材料の提供を見返りにマグネサイト採掘権を得た。

 大韓鉱業振興公社は大興マグネサイト鉱山に食指を伸ばしている。

 ※南北は07年4月に行なわれた南北経済協力推進委員会第13会議で、韓国側が衣類、履物、石鹸の生産に必要な軽工業原料8千万ドル相当を今年北朝鮮に有償提供し、北朝鮮が見返りとして地下資源生産物、開発権などを提供することで合意。韓国側は竜陽鉱山と大興鉱山を共同で調査することを要請している。

 ※端川の検徳の亜鉛鉱山、端川の竜陽マグネサイト鉱山、端川の大興マグネサイト鉱山への投資が完了すれば、年間3千3百億ウォン(430億円)、今後30年間で10兆ウォン(1兆2千8百億円)の価値の鉱山物が生産できる。

 この他に、中小企業の泰林がファガンアム鉱山に直接投資している。

 ポスコと現代製鉄、高麗亜鉛、LSニッコー、キョンドンが北朝鮮鉱山に投資する計画を持っている。

 米国はミネラル・テクノロジー社が1995年に1千万トンの購入を計画していた。(米国が海外から輸入する量の4分の1に相当する)

 米国のコメタル社も1995年2月に視察団を送っていた。同社はまた、米財務省から許可を得て、朝鮮貿易促進委員会の呉大福書記長(当時)一行を95年6月に米国に招いている

 ロックフェラー財団のラッセル・フィリップ2世副会長が91年5月に訪朝している。95年7月にピーター・ゴールドマーク総裁率いるロックフェラー財団一行12人が訪朝。米朝合意(1994年10月)後が成立するや、米企業は一気に水面下から浮上した。

 スタントン・グループ、AT&T,ゼネラル・モーターズ、コカコーラ、モービル石油、USワシントン銀行などが北朝鮮を相次いで訪問した。韓国に駐在する米商工会議所も訪朝を計画していた。スタントン/グループは朝鮮設備会社との間で電力・精油関連の合弁会社「朝鮮設備・スタントン開発」を設立した。

 この他にスタントン・グループは精油設備投資及び鉱山物開発、MCIワールドコムとAT&Tは電話事業に関心を示している。

 ※インターネット分野にも米企業は食指を伸ばしており、最近スターテック社が北朝鮮の逓信会社との間で音声、インターネットプロトコール供給契約を締結した。

 また、ボーイング社など航空機製造会社は民間航空機の販売に関心を寄せている。

 オーストラリアは1974年に北と国交。75年断交。2000年国交回復。02年ウラン濃縮問題で断絶していた。オーストラリア外交使節団が07年11月に訪朝し関係修復した。

 オーストラリアのマラタナ信託会社は今年(07年)2月22日北朝鮮の財務省と合弁で小規模の貸付金融合弁会社を設立。金利12%、年平均2千ユーロ(1ユーロ163円=32万6千円)貸付。

 また、オーストラリアのRHIという会社が07年に端川のマグネサイト鉱山に800マンユーロを投資している。

 (豪州は07年5月に330万米ドルの支援(食糧と飲料水など)、また08年6月に190万ドルの食糧支援を行なっている)

 豪州の最大貿易国は中国、日本、韓国など北東アジア諸国。豪州全体貿易の60%を占めている。

 欧州(北朝鮮とEUとの貿易は北朝鮮の全体貿易量の10%程度)

 05年4月に平壌駐在EU企業連合会を結成している。

 駐韓欧州連合商工会議所(EUCCK)所属の企業関係者と駐韓EU大使館の職員ら53人が07年3月14日、開城工業団地を視察した。ジーメンス、ルノサムソン自動車、オスラムコリア、フィリップスなど国内の欧州企業も参加した。

 EUは07年10月に平壌で北朝鮮と経済セミナーを開催した。70人のEU委員会と議会関係者が出席。

 ドイツの「KCC欧州」が2004年から北朝鮮国内の限られた地域でインタネット独占サービス事業(平壌駐在の外国人用)を行なっている。

 イタリアのブリンデルリ法律会社と世界的運送会社のDHLが進出している。

 英国系の投資ファンドが北朝鮮向け「朝鮮ファンド」の資金募集に乗り出している。

 この投資会社は、アングロ・ジノ・キャピタルで5千万ドル規模の朝鮮開発投資ファンドを造成し、鉱山や鉱物の開発を進行中。

 開発途上国への投資専門会社であるFabien Pictet&Partners)のリチャード・ヤロッス会長は訪朝申請。1億ドル投資予定。同社は、2005年に英国系投資会社のヨンジュン・キャピタル社が北朝鮮への直接投資のため朝鮮開発投資基金を作った。この基金の運営を担当している高麗アジアのコーリン・マカスキル会長によると、対北投資基金は現在5千万ドルから1億ドルに増額したとのこと。

 また、英国のオリンド(Orind)社は北朝鮮との間でマグネサイトを共同開発中にある。

 英国のアミネックス精油会社は北朝鮮との油田開発との関連で20年間の試掘契約を締結している。

 ※2006年9月、北朝鮮による核実験の1カ月前、ロンドンで「朝鮮開発投資ファンド(略称、朝鮮ファンド)」が創設された。欧州、中国などの大口投資家などから総額5000万ドル(約60億円)を集める。秘密厳守、一般投資家は相手にしない。「金、銀、亜鉛、マグネサイト、銅、ウラン、プラチナを採掘するための設備」(同ファンド幹部)を鉱山企業に提供する。代金代わりに鉱物を獲得し、国際市場で売りさばく。

 朝鮮ファンドの資産管理はロンドンの金融監督局監督下の「アングロ中国キャピタル投資」が担当。アドバイザーには米国務省北朝鮮担当元高官のリン・ターク氏を誘い込んだ。

 高麗アジアは朝鮮ファンド設立に合わせ、ロンドンの投資家グループから平壌の合弁外資銀行「大同信用銀行」の70%の保有株式を買収した。大同信用銀行はマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」に700万ドル預けていたが、米国の金融制裁により全額が凍結されていた。

 マクアスキル氏は米財務省高官に対し「金融制裁は米国の国益にならない。解除しないと、朝鮮ファンドの取引通貨はドルをやめてユーロかポンドにするしかない」と再考を促した

 米紙クリスチャン・サイエンス・モニターは今年1月22日付で「鉱物資源が北朝鮮の金融制裁圧力を減らす展望を開く」と報じ、その通りになった。

 米朝関係は今、変わり目にある。米国の穀物・金属商社カーギル、鉱山開発技術を持つエンジニアリング大手のベクテル、さらにゴールドマン・サックス、シティグループの金融大手は2002年10月の核疑惑再燃前には対北投資に意欲をみせていた。

 「このまま米朝対話が進めば、米国で対北投資ファンド設立の機運が再燃するだろう」と、ワシントンのアジア投資コンサルタントはみる。

 フランスのラファス(Lafarse)社は平壌サンウォンセメント会社の半分を所持しているエジプトのオラスコム社を150億ドルで買収。その結果、オラスコムの投資が2月以降中断状態になっている。

 オラスコム社は07年7月に平壌近郊の祥元(サンウォン)セメント工場の持ち株50%を取得し、1億1千5百万ドルを投資して開発すると発表。

 スイス外務省傘下の開発協力庁は北朝鮮の中央銀行と共同で小額金融貸付事業を実験的に行う。北朝鮮の農民にとって経済的にプラスとなる資金を投資する。また、北朝鮮の経済テクノクラートを招き、市場経済体制と国際金融システムの教育を学ばせる。(スイスは北朝鮮に対して食糧難が深刻化した1995年から対北支援事業を行なっており、07年も米ドルで380万ドル程度の支援を行なうことにしている。)

 スイス政府は08年度の北朝鮮との開発協力事業に380万ドル(約39億6千万ウォン)の予算を計上している。今後、対北農業支援プロジェクトの拡大を希望している。スイス外交部傘下の開発協力庁(SDC)は北朝鮮で小さなビジネススクールを運営し、毎年100人程度の北朝鮮の官吏をスイス、キューバ、中国に海外研修させている。

 ※北朝鮮に進出した欧州11の企業が平壌駐在欧州企業連合会(フィリックス・エプト会長=ピョンス製薬合弁会社社長)を結成(2005年4月)。

 現代経済研究院が08年2月3日に発表した「EU新アジア戦略分析と視点」と題する報告書によると、EUは北朝鮮を鉱物資源の宝庫とみなし、北朝鮮の発電設備や通信網の現代化事業、鉄道運輸システムの現代化事業、投資情報樹立とコンサルティング事業、委託加工事業、観光事業への投資にも関心を寄せている。

 オランダ商工会議所が08年5月オランダ企業を相手に2001年以後初めて北朝鮮に対する事業説明会を行なった。核問題解決後の市場拡大がテーマ。

 エジプトの携帯通信大手、オラスコム・テレコム社が北朝鮮で携帯電話通信事業意サービスの認可を得た。北朝鮮の逓信会社と合弁(オスラコム社75%、北25%)でサービスを開始。オラスコム社は3年間で契約料を含め4億ドルを投資して、通信網を整備することになる。

 ※北朝鮮は2002年11月に携帯を普及させていたが、2004年4月の列車事故で携帯電話の使用を規制していた。