2009年2月25日(水)

日本はミサイル基地を攻撃できるのか

 北朝鮮はテポドン・ミサイルではなく、「人工衛星」打ち上げの準備を進めていると発表した。北朝鮮では衛星は「光明星2号」で、発射ロケットは「銀河2号」と呼ばれている。また、「宇宙開発は自主的権利」だとも主張している。

 しかし、韓国も米国も仮に人工衛星だとしても「(2006年の国連安全保障理事会決議に基づく)制裁は不可避だ」との立場だ。制裁発動となると、前回は国連憲章第7章第41条に基づく非軍事に限定された経済制裁となったが、これが無視されたとなると、海上封鎖や軍事制裁を伴う第42条が適用されるかもしれない。

 米韓両国が反発する第一の理由は、北朝鮮がテポドンを1998年の三陸沖に向けて発射した際も「人工衛星」と主張した「前科」があるからだ。北朝鮮は事前通告なく、日本海に向けて発射したが、発射から4日後「人工衛星の打ち上げに成功した」と唐突に発表した。しかし、実際に、衛星は軌道に上がっていなかった。

 第二の理由は、北朝鮮が「人工衛星」の打ち上げ国が負うべき義務を果たしていないことが挙げられている。1967年に発効した宇宙条約は発射した物体が他国に損害を与えた場合、打ち上げ国が国際的責任を負うと定めているが、北朝鮮は条約に加盟していない。従って、北朝鮮のような未加盟国には打ち上げ資格はないとの主張だ。北朝鮮は宇宙の平和利用などを定めた宇宙条約やその他の関連条約を批准していないのである。

 米韓だけでなく、日本も当然、「人工衛星」であっても、容認できないとの立場だろう。1999年7月にテポドン・ミサイル再発射の動きが伝えられた際、当時高村正彦外相は仮に人工衛星打ち上げの事前通告があったとしても容認しない意向を表明していた。

 北朝鮮が初めてテポドン・ミサイルを発射した1998年8月31日には日本海あるいは三陸沖海域には漁船が多数操業し、民間航空機もミサイル通過時には7機飛来していた。そのため事前通告せずに発射するとは、暴挙極まりないとの怒りの声があがった。また、仮に国内、あるいは米軍の三沢基地に着弾していれば大変なことになっていた。

 民主党の前原誠司前代表はかつて「ミサイル発射が日本領土内に対して行なわれた場合、北朝鮮の基地を攻撃することが憲法上認められる」と発言し、政府に質したことがあった。当時首相だった故小渕総理も「誘導弾等の基地を叩くことは法理論的に自衛の範囲に含まれる、可能である」と答えていた。この解釈に基づけば、日本の領空を侵犯するミサイルの発射基地を先制攻撃しなければならない。北朝鮮が今回も、東海岸から日本に向けて発射するのは明らかであるからだ。

 しかし、仮に人工衛星ならば、迎撃も、発射基地への先制攻撃も、難しいのが現状である。まして人工衛星を撃ち落すことは、国際法上許されないからである。ミサイルなのか、人工衛星なのか、当然打ち上げてみなければ判明できない。発射されなければわからないというのも、これまたジレンマである。

 人工衛星ならば、今度は事前に公開し、通告することも考えられるが、日米両国がどう対応するのか、興味深い。