2010年5月6日(木)

哨戒艦事件の「犯人」とされた金総書記の回答は?

 中国訪問中の金正日総書記は昨日、大連から北京に向かう途中、予想されたように天津に立ち寄った。天津郊外にある浜海新区を視察した。

 浜海新区は製造・物流・金融・先端産業などが密集し、北京と山東、遼寧など3省を包括する環渤海地域の経済中心地として浮上している。大連が北朝鮮の羅先のモデルならば、天津はどの都市のモデルに描いているのだろうか?帰国後にも天津をモデルに想定した経済特区が発表されかもしれない。

 天津から北京に入りした金総書記は、昨晩は人民大会堂で胡錦濤主席と会った後、温家宝総理以下共産党政治局常務委員ら幹部が勢揃いした晩餐会に出席したが、北朝鮮側からは金英春人民武力部部長、崔泰福労働党秘書らが同席していた

 前回(06年)の訪中時の随行者は、朴奉珠総理以下ほぼ全員が経済・外交関係者だったが、今回、軍NO.1の人民武力部部長を同行させたのは、「韓国哨戒艦沈没事件」との関連なのだろうか。

 その「韓国哨戒艦沈没事件」だが、引き揚げられた「天安艦」を調べている民軍合同調査団が爆破の衝撃で艦体から切り離された煙突から魚雷の火薬成分を検出していたとのことだ。また、哨戒艦内部と沈没海域から収集したアルミニウムの破片の一部が魚雷の破片であることもわかったようだ。民軍合同調査団は沈没現場から韓国艦体の材質と異なった成分の金属4点とプラスチック1点合わせて5点を収集し、分析していたが、どうやら分析結果が出たようだ。

 北朝鮮は大型ロメオ級潜水艦(1800トン)と小型サメ級潜水艦(300トン)、それに特殊作戦用ユーゴ級(80トン)を保有しているが、「天安艦」が沈没した海域の水深からして、民軍調査団では魚雷を発射した潜水艦は76.8メートルのロメオ級よりも、サメ級もしくはユーゴ級の潜水艦とみなしているようだ。

 また、使用された魚雷は、「天安艦」が沈没した時に発生した地震波強度(TNT換算爆破力170〜180kg)に最も近い、1980年代に中国で開発された200kg重量のYu−3Gの「魚雷天」とみている。

 これにより、韓国政府は早ければ来週中にも「天安艦は北朝鮮の魚雷攻撃によって沈没した」との最終結論を出すようだ。

 韓国から「犯人」と疑われている北朝鮮は事件との無関係を主張している。逆に韓国の「自作自演である」と反論している。

 潔白を主張している限り、金総書記が中朝首脳会談の場で、「我々がやった」と認めることはないだろう。100歩譲って、本人の許可なく、軍が勝手にやったとしても、絶対に認めはしないだろう。1983年の「ラングーン事件」、1987年の「大韓航空機爆破事件」と同様の対応を取り続けるのではないだろうか。小泉総理との日朝首脳会談で拉致を認めたようなことは多分あり得ないだろう。

 最高指導者の金総書記が否認すれば、第三者の中国としてはそれ以上突っ込みようがない。韓国と北朝鮮との板挟みで中国も頭の痛いところだ。

 今後韓国が、中国に北朝鮮へのペナルティを求めたとしても、北朝鮮が無実を主張する限り、伝統的友好国である北朝鮮をそう簡単にはバッシングはできないだろう。

 また、大量破壊兵器拡散防止というグローバルな問題であるミサイル発射や核実験とは違って、エリアの問題、それも南北双方とも自国の領海であると主張している紛争地域で発生した問題だけに国連安保理で討議し、北朝鮮を非難する声明や制裁決議を出すわけにはいかないし、また同調はしないだろう。