2011年8月2日(火)

未遂の自民党議員鬱陵島訪問

 自民党議員らの鬱陵島訪問が未遂となり、日韓の政治問題に発展している。

 面積72平方キロメートル、人口1万人の鬱陵島は韓国最大の製鉄所がある慶尚北道浦項(ポハン)から217km離れた孤島である。そして付属の島が竹島(独島)で、日本では島根県に編入さえているが、韓国では竹島は鬱陵島に編入されている。

 鬱陵島は漁業と農業の島として知られているが、今では竹島への玄関口として観光のスポットとなっている。浦項からは鬱陵島まで定期船が出ている。

 ソウルから向かう場合は、シャトルバスで4時間かけて日本海に面した京畿道のムッコに行って、そこからフェリーに乗り換える。鬱陵島まで約2時間。合計で6時間はかかる。

 さらに鬱陵島から問題の竹島までは約90km。天候次第だが、片道約2時間。やっと着いても、島滞在時間は20分と制限されている。見るべきものは何もないのだから当然だ。一服して、記念写真を撮って終わりだ。決して楽しい観光ではない。それでも、韓国では年間10万人が訪れている。竹島を観光することが領土を守る意思表示、あるいは「愛国の証」と捉えているのだろう。

 今回、鬱陵島訪問を計画した自民党の「領土に関する特命委員会」の新藤義孝と稻田朋美, 佐藤正久の3人の議員に対して韓国のメディアは「極右」とのレッテルを張っていた。教科書問題など日韓の歴史認識などで「反韓言動」を躊躇わなかった経歴をもって、韓国のメディアは3人を「反韓議員」扱いしていた。

 従って、訪島理由について新藤議員が「鬱陵島には観光船もあり、竹島博物館もある。それで、韓国人が竹島についてどう考えているのか知りたくて行きたかった。民泊し、住民らと意見を交わしたかった。そうしてこそ摩擦を乗り越え、両国関係を好転させ、問題も解決できるのでは」とその理由を語っても、また、稲田議員が「我々は韓国と本当の意味で友達になるつもりで、韓国の主張を聞くために行こうと思っている」と言っても、韓国では額面通り受け止められなかったようだ。

 結局、3人は金浦空港で入国を拒否され、その日のうちに「強制送還」され訪問は実現できなかったものの、大騒ぎになったことで、韓国側の意図に反して竹島問題は日韓の懸案として大きくクローズアップされた。仮に入国を強行することで「騒乱を起こして、国際問題として争点化させる」ことが当初の狙いだとすれば、日本側の「作戦勝ち」ということになる。ならば、3人の議員からすれば、「してやったり」ということかもしれない。

 韓国側は、「日本側の狙いが騒ぎを起こすことにある」ということを仮に見抜いていたとするならば、妨害せず、すんなり入国させれば良いのにそれをできないところにこの国の「単純性」がある。「独島は韓国の領土」であるとの立場が不動ならば、余裕を持って、受け入れれば良いのにそれをやれないところをみると、やはり日本によるいつの日にかの「奪還」を恐れているのだろう。

 しかし、その一方で、今回大騒ぎになったことで、韓国では今後、竹島の実効支配をさらに強めることになるだろう。今は警察官による沿岸警備隊が駐在しているが、軍隊に取って変わり、人数も現在50人からさらに増やすだろう。居住民も現在は、夫婦二人だけだが、住宅を建設し、これまた定住者の数を増やすことになるだろう。

 日本が騒げば騒ぐほど、韓国が竹島の実効支配を強めるというパターンは、これはこれで日本のジレンマである。

 今後韓国内では歴代大統領が自粛していた李明博大統領の竹島訪問を求め声を一段と高まるだろうが、それを強行すれば、再び竹島問題が日韓の領土問題として注目されることになるので韓国もまたジレンマを抱えることになる。

 北極のバレンツ海で40年にわたって大陸棚問題、領海紛争を続けていたロシアとノルウエーは昨年9月、境界の画定で合意し、今後、天然ガスや油田、さらには漁業で共同開発することにしている。

 日韓も、このバレンツ海解決方式を一つのモデルにしたらどうだろうか。