2011年12月5日(月)

進展しない日韓FTA

 李明博大統領は11月19日、訪韓した日本の野田佳彦首相と会談し、日韓の経済連携協定(EPA)交渉の早期再開で合意した。これに伴い、韓国の企画財政部の朴宰完(パク・ジェワン)長官は11月27日、訪韓した古川元久経済財政担当相と会談し、日韓自由貿易協定(FTA)、即ち日韓経済連携協定(EPA)の交渉再開に向けた努力が必要との認識で一致した。

 日韓は2003年12月にEPA交渉を開始したものの、04年11月に第6回会合を最後に農林水産品関税撤廃の批准をめぐり対立。2008〜2009年4度実務協議が実施され、現在は実務協議のレベルを審議官級に上げているが、遅々と進んでいない。現在は、日韓EPA交渉の再開に向け、実務協議のレベルを審議官級に上げて、検討を加速することで一致している

 進展しない理由は、韓国が積極的でないことに尽きる。韓国とすれば、日本の農林水産品関税撤廃率が不十分であること、関税が撤廃されれば韓国の対日赤字がさらに悪化すること、さらに韓国市場が日本企業に奪われるとの懸念が解消できないでいる。実際に現在、日本の自動車や機械などに8%の関税をかけているが、これらが撤廃されれば日本の高品質の完成車や部品が韓国に安く流れ込んでくると危惧している。

 日韓貿易では日本の黒字と韓国の赤字が右肩上がりしているのが現状だ。日韓の貿易額は700億から800億ドルを推移しているが、韓国の対日貿易赤字は06年が234億ドル、07年が290億ドル、そして08年には300億ドルを突破し、327億ドルの貿易赤字を記録している。08年にいたっては、韓国は対中貿易で得た234億ドルの黒字を対日赤字で帳消しにしている。 韓国の対日貿易赤字の原因は電子・電気機器・機械類・自動車・造船など日韓の産業構造が似通っていることにある。韓国の日本からの輸入品は@機械類26%A電子製品25%B鉄鋼金属製品20%C化学品19%である。韓国の主力輸出品の半導体、平面ディスプレイ等の中間財(部品や素材)や資本財(製造機械)などは日本に依存。従って、韓国の輸出が伸びれば、伸びるほど、日本の黒字が自動的に増大する因果関係になっている。

 韓国は輸出の原動力である自動車の対日輸出が期待できない。

 韓国の自動車は価格面では確かに日本車に比べて格安だが、安ければ売れるという話ではない。現に韓国の現代自動車「アバンテ」や「ソナタ」が2000年に日本に上陸したが、約10年の間に1万5千台しか売れなかった。現代自動車は2009年に撤退したが、その後も大宇自動車が「ラッセティ」「マティス」を日本に輸出したもののこれまたたったの1400台しか売れず、さらにあのサムソンもフランスのルノーと提携し、一昨年SUV「QM5」を販売したが、これまた業績不振で撤退を余儀なくされている。

 それと、軽視できないのは、韓国にとって日本との貿易量も投資も、中国とのそれに比べて伸びないことにある。

 韓国が中国と国交を締結した1992年の日韓の貿易額は310億ドル、09年が711億ドルで、17年間でたったの2.2倍の増だ。これに比べて中国とは63億ドルから2000億ドルと飛躍的に急増した。 また、日本の対韓投資も04年の22.5億ドルを最後に年々減少しており、07年には04年の半分にも満たない9,9億ドルだ。これに比べて中国の対韓投資は07年時点ですでに17億ドルと、日本のそれを大きく上回っている。

 ASEANプラス3(日韓中)首脳会議では日韓中は李明博大統領は首脳会談(11月17日)を行い、3国間のFTAの早期実現に努力することで一致。韓国は対中を優先。