2012年9月24日(月)

米国は同盟国なのになぜ、日本の領有権を認めないのか?

 民主党の代表選挙や自民党の総裁選挙での各候補の「尖閣問題」での発言を聞いていると、対応策として「日米関係の強化」という言葉が盛んに連呼されていた。「尖閣に安保条約第5条(防衛義務)が適応される」との米政府の公式見解が「金科玉条」になっているのだろう。それはそれで中国への牽制になるので結構なことだ。

 ところが、その米国は「尖閣」の領有権の問題では、「日中どちらにも組みしない」として中立の立場を堅持している。米国はなぜ、日本の領有権を認めないのだろう?その理由が今一つわからない。

 米要人との会見があっても、日本のメディアはその理由をあえて聞こうとはしない。その理由を知りたくても、聞きたくても、日中に領有権の問題が存在しないとの政府方針が足かせになって聞けないのだろう。中国の記者が米国務省での記者会見でスポークスマンに執拗に聞いていたのとは対照的だ。

 米国が日本にとって信頼すべき同盟国なら、まして今後関係を強化する必要がある相手ならば「尖閣は歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」との日本の主張に真っ先に支持、賛同があってしかるべきではないだろうか?

 そもそも、今日まで日本の政権はなぜ日本の領有権を認めるように密かに米国に働きかけてこなかったのだろうか?中国との間に領土問題は存在しないから、やはりその必要性を感じなかったのだろうか?それはそれで理屈として理解できなくもないが、この期に及んでのパネッタ国防長官らの「どちらにも組みしない」との発言に日本政府は、政治家はどうして怒り、抗議をしないのだろう?奇怪なことだ。これが韓国が日本の立場ならば、憤慨して抗議するだろう。

 それでいながら野田総理ら政治家は一方で「国際社会に、国際世論に訴える必要がある」と同じ言葉をオウムにように繰り返しているわけだから、何をいわんやである。同盟国の米国ですら、支持してくれないのに、一体世界のどの国が日本の立場を理解し、支持を表明してくれるのだろうかと首を傾げたくなる。

 今年4月に石原東京都知事の「尖閣諸島購入発言」があった際に「日本の固有の領土であるなら、また中国との間に領土問題は存在しないと言うなら、日本からあまり騒がないほうが得策であると思う」と進言したことがある。

 その理由について「騒げば騒ぐほど、喜ぶのは中国だ。中国は、尖閣諸島の紛争化を画策しているからだ。今回の石原発言で結果として国際社会が『日本と中国との間には未解決の領土問題が存在するのか』と受け止めてしまったとすれば、日本にとってプラスにはならないからだ」と書いた。

 だが、もう手遅れだ。日本の選択肢は限られているが、ここまできた以上は、次の世代に負を負わせないために腹をくくって、このまま実効支配を強めるのも一つの策だろう。

 日本が実効支配しているなら、実効支配の証を示さなければならない。無人島のままにして実効支配を主張しても、通らないだろう。人が住み暮らしてこそ、実効支配が認められるというものだ。昔あった鰹節工場を再興させるなど新たな水産工場を立ち上げ、季節労働者を募集すれば、全国から相当数集まってくるだろう。以前の状態に復元することが実効支配への一番の近道だ。

 尖閣諸島を守るには皮肉なことだが、韓国が日本の度重なる抗議をよそに竹島の実効支配を着々と既成事実化させた手法を導入するほかないようだ。

 島根県の人々からすると極めて腹の立つことだが、韓国は日本が騒げば、騒ぐほど、実効支配を強めてきた。1950年代には8人の警察官を常駐させたのを皮切りに90年代に入ると、500トン級船舶が利用できる接岸施設を設置し、ついには有人灯台まで設置してしまった。「独島」を管轄している慶尚北道は船舶の接岸工事や、宿泊施設の建設も計画し、すでに着工している。竹島は韓国にとって今では観光の「名勝地」である。

 現在は、竹島の北西約1キロの地点で海洋調査のための総合海洋科学基地建設の基礎工事は順調にいけば、来年12月には完成する予定にある。

 それだけではすまない。与党のハンナラ党では東島(0.07平方キロメートル)と西島(0.11平方キロメートル)から成る竹島の実効支配をより強固にするため二つの島の間(140メートル)を埋め立て、繋ぐ法案を推進している。日本が沖ノ島周辺をコンクリートで埋め立て、実効支配をしている手法を真似てのことのようだ。

 島が一つに繋がり、住民及び観光客用の宿泊施設が建設され、現在一組の夫婦しか定住していない島にさらに定住者が、そして観光客が増えれば、韓国の実効支配は完了する。簡単な話が、北朝鮮との黄海の領海紛争海域のNLL(北方限界線)上にある「延坪島」「白?島」のような要塞となり、日本の「奪還」は一層難しくなる。

 現実問題として、フォークランド紛争のように武力による奪還は不可能だ。海軍力では日本のほうが韓国よりも上回っているが、米国がそれを許さないからだ。

 「尖閣」で米国に防衛義務が課せられているように米国は米韓相互防衛条約に基づき、韓国を防御する義務があるからだ。米国にとって、在日米軍(約3万3千人)と在韓米軍(約2万8千人)が「竹島」で事を構えることは漫画の世界でもあり得ない話だ。まして、米国にとって「竹島」は「尖閣」と異なり、安保条約第5条の適応外である。

 日本が今後、領海法を改正し、中国の漁船や監視船が日本の領海に入った場合は、警告を発し、それでも退去しない場合は、威嚇射撃を行い、それでも応じない場合は、拿捕する、これも実効支配を強める一つの選択肢でもある。現在、韓国がNLLラインで北朝鮮の漁船や警備艇に対して取っている手法である。但し、韓国と北朝鮮は3度交戦したように交戦というリスクを覚悟しなければならない。

 日本がこのような「強硬策」が取れないならば、「尖閣」を元の状態に戻すか、あるいは平和的解決の手段として国際司法裁判所(ICJ)に領有権問題での白黒を委ねるほかない。

 三択のうち、どれを選択するのだろうか。