2013年7月22日(月)

金正恩の叔母、金慶喜書記は重病か

   金正恩第一書記の後ろ盾である叔母の金慶喜書記の動静が途絶えている。

   今年67歳の金慶喜氏は5月12日に金正恩・李雪主夫妻と一緒に朝鮮人民内務軍の公演を 鑑賞したのを最後に公式舞台から姿を消している。

   実父である金日成主席の命日にあたる7月8日の錦繍山太陽宮殿への参拝も欠席し、 長期不在は7月22日現在、70日間にわたっている。2か月以上の不在は、 昨年5月1日の公演観覧から7月25日の遊園地竣工式出席までの84日間に続くものだ。

   長期不在を即、「重病」とは即断できない。というのも、昨年7月30日から8月24日まで25日間、 公式活動を絶った時も「産経新聞」(24日付)が「複数の臓器に疾患を持ち、今後の執務継続も 危ぶまれる状態」と報じたところ、翌25日に出てきて、モランボン楽団の公演を鑑賞し、 夜には軍服を着て宴席にも出席していたからだ。二日後の27日の青年慶祝大会にも出席し、 30日には大会出席者らと記念写真に納まっていた。

   この時は、「重病説をカモフラージュするためではないか」と書かれたが、本当に 「執務継続も危ぶまれる状態」ならば、外国メディアを意識してまで何も無理する必要はない。

   最長の84日間消息を絶った時も日韓のメディアでは「重病説」や「再起不能説」が流れたが、 85日目に遊園地の竣工式に姿を現し、なんと金第一書記らと絶叫マシンに乗っていたことはまだ記憶に新しい。

   しかし、一度ならず、二度も2か月以上も長期不在、それも、父親の命日の参拝も欠席となると、 ただ事ではない。ちなみに夫の張成沢国防副委員長の動静も調べてみると、5月12日に夫人と 一緒に公演を観覧した後、約1か月近く、夫人同様に姿を消している。

   そして、金第一書記の視察に随行し、6月9日に平壌国際サッカー学校に現れてから7月8日の 参拝まで再び1か月、姿を現さなかった。夫人が病床にあるならば、付き添っている可能性も考えられなくもない。

   仮に叔母に万一のことがあれば、金正恩氏にとってそのダメージは計り知れないものがある。 金正恩氏の最大の後見人は他ならぬ金慶喜書記である。そして、金慶喜氏こそが金正恩政権の キングメーカー、影の実力者である。

   故金正日総書記が実妹の金慶喜氏を2009年6月に15年ぶりに表舞台に復帰させたのも、 自分が亡き後、母親代わりとして正恩氏の面倒を見させることにあった。金総書記はかつて部下らに 「慶喜の言うことは私の言うことだと思って従いなさい」と訓示したことがあるほど、 金慶喜氏の党内での威厳は絶大である。

   「金正日」から「金正恩」へ世襲が順調に移行したのも、金慶喜氏がその後ろ盾となり、 絶大な影響力を行使したからである。軍の実力者である李英鎬総参謀長の解任を含め党や軍の人事を 混乱もなく断行できたのも、No.2の組織担当のポストである党書記に就任して、 その手腕を発揮したから可能であったと言える。

   換言すれば、政治局員ら党最高幹部や次帥や大将ら軍将軍らが「金正恩擁立」で結束したのも、 金日成―金正淑の「革命家系」の継承者である金慶喜氏の存在が大きかったからと言える。

   その金慶喜氏に万が一のことがあれば、権力から除外された二人の兄を除くと、 血が繋がっている肉親は国防委課長になったばかりの24歳の妹・汝貞氏一人ということになる。

   祖国解放戦争勝利60周年(休戦60周年)を迎える今週27日には中央大会やマスゲーム、 大規模の軍事パレード等が予定されているが、一連の関連祝賀行事に現れ、健康不安説を払拭できるのか、 金慶喜氏の動静に注目したい。