2013年7月26日(金)

休戦協定60周年行事の5つの注目点

   北朝鮮の戦勝(停戦協定)60周年記念行事が始まった。一連の記念行事のクライマックスは、 27日に行われる軍事パレーであろう。

   軍事パレードを含め、一連の行事で注目すべきは以下5点。

   一つは、中国から誰が祝賀行事に出るかだ。中朝関係の現状や今後を占ううえで韓国では早くから注目されていた。

   結果は、党序列8位の政治局員の李源朝国家副主席だった。高くもなければ、低くもない、近くもなければ、 遠くもない位の人物が選ばれたといえる。

   北朝鮮の本音とすれば、党主席、首相、全人代委員長のトップ3の一人か、もしくは、1993年の40周年には 胡錦濤政治局常務委員(後国家主席)が派遣されたことから7人いる政治局常務委員からの出席を望んでいたことだろう。 まして、今年5月に序列4位の政治局常務委員の崔竜海政治局常務委員(軍総参謀長)が訪中し、 要請していただけになおさらのことである。

   序列8位の李源朝政治局委員の派遣は、くっつかず、離れずの今日の中国の対北朝鮮政策を 反映しているといえなくもない。

   第二の注目点は、5月12日の公演鑑賞以来、表舞台から姿を消している金正恩第一書記の叔母、 金慶喜書記が出てくるかにあった。

   金慶喜書記については昨年の85日に続き、今年も70日以上も、動静が伝えられてなかったことから健康不安や重病説が流れていた。 叔母に万一のことがあれば、金正恩第一書記にとっては後ろ盾を失うだけに深刻な問題であった。

   結果は、昨日(25日)の朝鮮戦争戦没烈士の墓地建立式典に出席したことで、金慶喜書記の健在が確認された。 外見からは健康状態は計り知れないが、今後も、長期不在が続けば、その都度、健康不安説がとり沙汰されることになるだろう。

   三番目の注目点は、軍事パレードに金正恩第一書記が元帥服と称される白い軍服を着服して行うかもしれない演説の内容だ。

   祖父の金日成主席が60年前の休戦協定の調印式に白い軍服を着て表れていたことから、孫の正恩氏も、 その60周年に同じ格好をして登場する可能性が大だ。しかし、米国など国際社会にとっての関心は、 外見よりも、むしろ演説の中身だろう。

   金正恩氏が、核やミサイル問題で朝鮮半島の非核化は金日成主席、金正日総書記の遺訓であることを強調し、 融和的な姿勢を示すのか、それとも核とミサイルの開発を今後も継続する意思を宣言するのか、 米朝、6か国協議の行方を左右するだけに最大の注目点だ。

   四点目の関心事は、マスゲームの出し物である。

   北朝鮮の名物、アリラン祭典は22日からスタートしているが、外国からの賓客らを前に行われるマスゲームで、 人工衛星や核実験などの人文字が登場するかが見ものだ。

   北朝鮮は今年3月31日の党中央委員総会で核抑止力の強化と経済建設を平行して進める路線を決定し、 翌4月1日の最高人民会議では核保有地位の強化と人工衛星に関する法律も定めている。 従って、党中央委員会の決定を支持するような内容のマスゲームとなれば、中国を介した6か国協議に 向けた外交努力に冷水を浴びせることになりかねない。

   そして、最後は、軍事パレード及び同時に行われる人民大衆の行進だ。

   軍事パレードでは最新兵器が登場するのではないかと囁かれているが、今年4月に東海岸に配備された ムスダンミサイルについてはすでに3年前の党創建65周年の軍事パレードで一度登場しているので、注目外だ。 ムスダンよりも、完成されたものの一度も発射実験がされてない米本土を照準に定めたKN−08三段式長距ミサイルと 小型核爆弾が搭載可能なミサイルが登場するかどうかにある。

   さらに、最も注目すべきは、人民大衆のパレードで「一気に9号を打ち上げよう」との金正恩第一書記の指示の下、 開発中とされる衛星ロケット「光明星9号」の模型が登場するかどうかにある。

   「光明星9号」は北朝鮮が昨年発射した「光明星3号」の3倍の規模となることは、北朝鮮のメディアに よってすでに明らかにされている。北朝鮮の衛星衛星ロケットをミサイルと規定する米国にとっては、 「9号」は米本土全域を照準に定めた大陸弾道弾ミサイル(ICBM)となるだけに、この模型が登場するか どうかに注目が集まるだろう。