2013年3月11日(月)

朝鮮半島のチキンレースが始まった!!

 米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ)が今日(11日)から始まる。演習は韓国軍1万余人と米軍3千5百人が参加し、22日まで行われる。

 米韓連合軍はすでに1日からもう一つの合同野外機動演習「フォーイーグル」をスタートさせているが、この演習は4月30日まで行われる予定である。

 「キー・リゾルブ」は韓国防御のため毎年この時期に行われている。恒例の演習ではあるが、米本土からはイージス駆逐艦2隻のほか、攻撃用のF−22ステルス戦闘機やB−52戦略爆撃機などが動員され、上陸作戦も計画されていることから、北朝鮮は猛反発し、人民軍最高司令部はこの日を期して休戦協定を白紙化し、南北不可侵協定を全面破棄するとしている。

 一方で、米韓合同軍事演習に対抗して同じ時期に陸海空軍、さらにはミサイル部隊や特殊部隊まで動員した大規模訓練を実施する構えだ。

 米韓の合同演習に北朝鮮が大規模演習をぶつけるのは初めてのことである。すでに東の日本海と西の黄海一帯に船舶と航空機の航行禁止区域を設定し、KN−02短距離ミサイルなどの発射訓練を行うようである。

 昨日(10日)の労働新聞には「(米韓との)最後の全面対決戦に入ったわが軍は、(金正恩最高司令官の)突撃命令だけを待っている」と、戦闘動員態勢にあることが伝えられていた。

 北朝鮮が準戦時体制一歩手前の戦闘動員態勢を取ったのは1993年以来、20年ぶりのことである。9日には陸空海を束ねる人民軍総参謀長の元英哲大将が軍幹部らを引き連れ、板門店をはじめ前線を視察している。
朝鮮戦争以来60年間維持されていた休戦協定と曲がりなりにも20年以上も遵守されてきた南北不可侵協定の北朝鮮による一方的な破棄により38度線はまさに異常ありの状態に置かれてしまった。

 休戦協定の破棄は、即、交戦状態への回帰を意味する。軍事境界線(38度線)を挟んでの「打ち方止め」の状態の終焉を指す。休戦協定によって設定されていた南北4キロにわたる非武装地帯も自動的に消滅することになり、厳禁されていた部隊や重武装の配備も可能となる。

 北朝鮮人民軍最高司令部が7日の声明で「協定の拘束を受けることなくいつでも制限なく、打撃を行うことができる」と米韓を威嚇しているが、休戦協定が白紙化されたなら国際法的には再攻撃は可能である。

 さらに深刻なのは、北朝鮮が休戦を維持する板門店連絡代表部の活動を停止し、米軍(国連軍)との通話を遮断し、韓国との南北軍事ホットラインも止めてしまったことだ。
休戦ラインや海上でのトラブルや衝突を回避、収拾するためのメカニズムがなくなれば、不測の事態を阻止できなくなる。些細なトラブルも、あるいは偶発的な衝突も、へたをすると、それが拡大し、局地戦、全面戦争に発展しかねない。このような状況下にあって、想定されるのは、以下の危機のシナリオである。

 第一に、軍事演習期間中に誤判か、誤算による衝突が起きる可能性があることだ。 「一発撃ったら、10発反撃せよ」(韓国)「ちょっとでも挑発したら、徹底的に叩け」(北朝鮮)と睨みあっている状況下では、一発の銃声がその引き金になる恐れが多分にある。

 第二に、国連制裁決議に基づき、北朝鮮の船舶への貨物検査をめぐって交戦が起きる可能性だ。

 今回の新たな制裁決議によって公海上での臨検が可能となったばかりか、義務化されることになったが、北朝鮮は公海上での臨検は、海上封鎖、即ち、宣戦布告とみなしていることから仮に日本海で韓国や日本の警備艇や巡視船、艦船によって行われれば、海上紛争につながる恐れがある。

 第三に、北朝鮮は米韓合同軍事演習と国連安保理の制裁に対抗して「強力な実体的な第二、第三の対応措置を連続して取る」と宣言しているが、仮にその「第二の、第三の対応措置」の一つとして、米国を標的とする長距離ミサイルの発射実験が行われた場合だ。

 北朝鮮は日本海に面した舞水端基地で大型ミサイル発射台を建設中にある。このミサイル発射台が使われるならば、米国が自衛権を行使し、発射台を先制爆撃することも考えられる。その際、北朝鮮が反撃すれば、局地戦争、全面戦争は避けられないだろう。

第四に、毎年衝突が憂慮されている黄海でのNLL(北方限界線)での衝突の可能性である。

 来月(4月)からはNLL付近で渡り蟹操業が解禁となる。このシーズン中に過去、南北艦船による海戦が4度起きている。2010年には韓国の領土、延坪島が砲撃されている。そして、その延坪島を砲撃した最前線部隊を金正恩最高司令官が7日、昨年8月に続き、二度目の視察に訪れ、「海上で水柱が上がっただけでも、敵の根拠地を殲滅せよ」とはっぱをかけていた。

 これに対して韓国も大統領府(青瓦台)が「NLL南側に向けて北朝鮮がミサイルを発射した場合、被害が発生してなくても、相応の措置を取れ」と軍部に指示を出している。 朝鮮半島で火が噴き、第二次朝鮮戦争にエスカレートするかどうかは、北朝鮮の対応次第だ。

 人民軍最高司令部は昨年4月にも特別作戦行動組の名による「対南特別行動を間もなく開始する」との通告を出したことがあった。

 「開始すれば3〜4分内に特異な手段と我々のやり方ですべての対象者と挑発の根源を焦土化させる」との通告を出していたが、結局は何事も起こらずに終わった。
今回も単なる言葉の脅し、ハッタリで終わるのか、それとも軍事行動に移すのか、朝鮮半島のチキンレースが始まった。