2013年10月15日(火)

注目すべき6か国協議再開に関する「ボズワース発言」

 9月下旬から10月初旬にかけてドイツ、ロンドンで行われた米朝非公式協議の全容が徐々に見え始めてきた。

 ドイツでは核問題の実務責任者である金桂寛外務第一次官と6か国首席代表である李容浩外務次官の二人が、さらにロンドンでは北朝鮮の初代駐英大使を務めた李容浩次官が出席した米朝非公式協議では核問題をめぐる6か国協議の再開について突っ込んだやり取りがあった。

 その結果について協議終了後に米側の出席者である朝鮮半島専門家のシグール氏は「興味深い意見があった」とコメントし、またオバマ第一次政権下で朝鮮担当特別代表を務めたボズワース氏も「「有意義で真摯な協議だった」と記者団らに語っていた。

 さらに、先週(11日)になってこの非公式協議に参加していた元米国務省北朝鮮担当官のジョエル・ウィット氏が口を開き、米国が6か国協議再開の前提条件として求めている核実験と長距離ミサイルの発射の凍結について北朝鮮は「前提条件は受け入れないが、6か国協議が再開されれば、早期に応じる」と回答していたことを明らかにした。米国の出席者全員が「北朝鮮が今後の6か国協議の中で、『非核化』について、話し合う気があることがわかった」との点で意見の一致を見ていた。

 そして、注目すべきは、12日に韓国の連合ニュースのインタビューに応じたボズワース氏の以下の発言である。

 「北朝鮮と交渉すること自体は悪行に対する報酬とはならない」

 「北朝鮮が何の制約も受けずに核開発を行っている現状は健全ではない」

 「今の状況が自然に改善されるとは思えない。対話と交渉のプロセスが再開されない限り、北朝鮮の核開発とミサイル開発は継続されるだろう」

 「北朝鮮を対話のテーブルに呼び戻し、非核化に関連した一定の制約と義務を負うようにさせるのが有益な一歩である」

 「(北朝鮮との)対話は容易ではないが、対話してない時の北朝鮮のほうが危険だ。対話が再開されなければ、北朝鮮は再び核実験やミサイル実験に踏み切るだろう」

 「米政府は現実的なので、そう遠くない時期に北朝鮮との対話に向かうだろう」  

 この発言をみる限り、6か国協議の再開は時間の問題のような気がする。

 ボズワース氏は北朝鮮が2005年9月の6か国協議共同声明を履行する意思を米国が確認した上で、「共同声明で合意した非核化と平和協定の締結、米朝国交正常化、さらに経済・エネルギーなどの重要な要素を扱わなくてはならない」と語っている。

 核実験の凍結やムスダンなど長距離ミサイルの発射実験では妥協が成立する可能性はあるものの、北朝鮮が主張する人工衛星については米朝非公式協議でも北朝鮮が「平和的宇宙開発」は続けると主張していて、米朝の隔たりは依然大きいというのが米国側出席者の感想だ。

 北朝鮮に対する国連の制裁はそもそも北朝鮮が人工衛星と称してミサイルを発射したことから始まっている。

 昨年のミサイルも、米国との間で核実験と寧辺のウラン濃縮活動の臨時停止と同時に長距離ミサイルの発射の停止を盛り込んだ2月29日の米朝合意の後に発射されている。北朝鮮はミサイルを発射したのではなく、衛星を発射したと主張し、情勢悪化の原因となっている。

 米国は昨年2月の米朝合意で「6か国協議が始まれば、制裁解除と軽水炉提供を優先的に論議する」ことを北朝鮮に約束しているが、この衛星と称するミサイル問題が米朝間でどう扱われるかが、6か国協議の成否を左右することになるだろう。

 北朝鮮は12日、国防委員会の名で米国に対して「孤立圧殺封鎖措置を撤回する政策決断にこそ米朝関係改善の道がある」との声明を発表し、ロケット発射を理由に科せられた国連制裁決議の撤回を求めている。そして、この声明の発表と前後して、一年近く抑留している韓国系米国人(ペ・ジュンホ)の母親との面会を認めている。

 延期されているキング国務省人権担当特使の訪朝も再度噂されており、釈放されれば、6か国協議は年内にも再開されることになるだろ。