2015年10月2日(金)

 注目される朝鮮労働党創建70周年式典に中国の出席は?

 先の中国の抗日戦勝70周年式典には30か国の首脳を含む49か国から参加したことで韓国のメディアは10月10日の朝鮮労働党創建70周年式典に外国からどれだけの代表団が出席するのか、その数及び顔ぶれに関心が集まっているようだ。

 韓国のメディアは総じて結論として北朝鮮が党創建記念行事に外国の元首及び元首クラスを招請しようと外交努力をしているものの招請作業がうまくいかず、「国内行事に終わる可能性が高い」と報じている。

 例えば、米国の対北朝鮮心理作戦の一翼を担っている北朝鮮専門メディア「自由アジア放送」(9月21日)は「中国の対北消息筋」を引用し、今年7月に平壌に召集された各国駐在大使らの全体会議で「影響力のある人物」を招請する問題が討議され、「北朝鮮と友好関係にある国家から副総理級の官僚らを招け」との指示が出されたもののはかどってないと伝えていた。不振の理由について上述消息筋は「北朝鮮の対外的信頼度が低いことと、旅費を工面しなければならない財源的問題がネックになっている」と語っていた。

 また、北朝鮮に最も辛辣な「朝鮮日報」(10月1日付)も「北朝鮮内部事情に精通した外交消息筋」の話として「招待を受けた海外の主要人物は続々と訪朝を拒絶している」と報じていた。

 この消息筋によると、金正恩第一書記が今年の初め「海外のそれなりの人物を党創建行事に全員招待しろ」と号令を掛けたことから北朝鮮外交当局は招請を外交の最優先課題に掲げ、総力戦を繰り広げたが、北朝鮮の友好国を含め訪朝意思を表明した「大物人士」はほとんどいないのが実情とのことだ。

 ところが、同じ日付の保守紙「東亜日報」は「韓国政府筋」と「対北消息筋」の話として「北朝鮮は外国からの招請に消極的な態度である」と「自由アジア放送」や「朝鮮日報」とは正反対の情報を伝えていた。特に中国については「中国は高位級人物を派遣し、関係改善の善意を示そうとしているが、北朝鮮が応じない雰囲気にある」との政府関係者の言葉を紹介している。同紙によれば、中国では序列8位の李源潮国家副主席など政治局員ら高位代表団の派遣説も出ているとのことだ。

 「東亜日報」は北朝鮮が招請に積極的でない理由について▲金正恩第一書記が海外ゲストらの前に出ることを負担に感じている▲海外から招いても特に見せるものがないことを挙げていた。併せて「外貨不足で盛大な行事が困難」なことも理由の一つとされている。

 一体、どちらの報道が正しいのだろうか?

 過去2回の節目の労働党創建日を参考にすれば、2005年の60周年の際も、2010年の65周年でも外国からの党・政府代表団の出席はなかった。唯一中露の高官だけが出席していた。

 60周年の時は、中国からは共産党政治局員でもある呉儀副総理が出席していたが、それも創建60周年を祝賀するため派遣されたのではない。前日9日の中朝合弁の大安親善ガラス工場の起工式に出席するのが主たる目的だった。従って、呉儀訪朝は労働党の招請でもなく、北朝鮮政府の招請となっている。あくまで親善訪問が目的だった。但し、ロシアのコンスタンチン・プリコフスキー極東連邦管区大統領全権大使は式典出席のための訪朝であったことが確認されている。

 中国からは胡錦濤主席も10月に中国の最高指導者としては2001年9月の江沢民主席以来4年ぶりに金正日労働党総書記の招請で訪朝しているが、訪朝したのは党創建日から2週間以上経った28日の日である。また、この年の10月には党創建60周年を祝賀するためインドネシアのメガワティ・スカルノ前大統領が率いる政党の党首として訪朝しているが、やはり閲兵式も式典も終わった後の13日に平壌空港に降り立っている。

 ちなみに5年前の65周年式典では序列9位の中国政治局常務委員の周永康が労働党中央委員会の招請で訪朝し、唯一外国の代表団として式典に出席していた。

 先の中国の戦勝式典には序列5位の崔龍海政治局員が出席していることから党と党の関係からすれば、中国もその序列もしくは肩書に見合った政治局常務委員もしくは政治局員を派遣するのが外交慣例だが、ミサイル発射の動きをしている北朝鮮に送れるか、また、中国に反発を強めている北朝鮮が受け入れるか、今後の中朝関係を占ううえで最も注目されるところである。