2016年7月13日(水)

 朴大統領はモンゴルで李克強首相に会える!?


モンゴルで15〜16日に開かれるアジア欧州会議(ASEM)首脳会議には日中韓の首脳が揃って出席する。

日中は安倍首相と李克強首相との間で会談を行う方向のようだ。また、日韓でも安倍総理と朴槿恵大統領が会談を行う見通しだ。しかし、中韓では表面立った動きがない。首脳会談を調整中との報道もない。不思議だ。

ASEM首脳会議の前日にモンゴルを公式訪問する朴大統領には109人の企業や機関、団体の関係者から成る経済使節団が同行する。韓国の大統領としては李明博前大統領以来5年ぶりとなるモンゴル訪問の目的の一つが、韓国企業のエネルギー・インフラ建設事業への参入など経済協力の拡大にあることは明らかだ。

同時に韓国の最大関心事である北朝鮮の非核化問題で北朝鮮の友好国であるモンゴルから支持を取り付け、北朝鮮を孤立させることも意図している。当然、北朝鮮とも国交があるASEAN諸国の首脳会議の場で核とミサイル開発を続ける北朝鮮を非難し、支持を取り付けることも会議出席の狙いの一つである。

今回の朴大統領の外遊目的が経済実利と外交成果にあるならば、とりわけ北朝鮮包囲網の形成にあるならば、年1300億〜1400億ドルを輸出している第一位の貿易相手国であり、北朝鮮に最も影響力を持つ中国首脳との会談は欠かせない。

朴槿恵政権のこれまでの外交成果の一つが、中国首脳との7度にわたる首脳会談を実現させ、北朝鮮から中国を切り離し、取り込んだことにある。中国が国連安保理の場で韓国が主導した北朝鮮制裁決議に同調したことは何よりも大きな外交成果となっている。

朴槿恵政権の対中重視は歴代大統領の最初の外遊先は決まって米国でその次に日本であったにもかかわらず朴大統領は政権発足後米国の次の外遊先として中国を選んだことからもわかる。また、日米の反対を押し切って中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めたことにも、中国の抗日戦勝70周年記念式典に出席し、天安門に上り記念軍事パレードを観覧したことにも朴大統領の中国に対する想いれが窺い知れる。

そうした対中傾斜外交の成果の一つが、今年3月にワシントンで開かれた核安全サミットの際に行った中韓首脳会談で習主席から「国連決議を全面的に完全に履行する」との言質を取り付けたことである。

朴大統領が自画自賛しているように中韓関係が史上最良の関係にあるならば、当然、今回モンゴルで李克強首相との会談がセットされなければならない。まして、李首相は昨年11月にソウルで開かれた日中韓3か国首脳会議に出席し、戦略的パートナーシップを結んだ相手である。朴大統領は李首相に「両国の指導者の間で密接なコミュニケーションを維持することは、両国関係の発展にプラスであり、朝鮮半島と北東アジアの平和安定の維持にプラスなる」と述べ、首脳会談の重要性を述べていた。

しかし、8か月後の今日、中韓関係は様変わりした。それもこれも朴大統領が習近平主席の要請を一蹴し、中国が猛反発していた高々度ミサイル防衛システム(THAAD)の韓国配備を決定したことにある。

中国は、邱国洪駐韓大使が今年2月に韓国野党幹部と会った席でTHAAD配備に反対を表明した際に「中韓関係を今のように発展させるのに多大な努力が必要だった。こうした土録は一つの問題のため一瞬のうちに破壊されうる。簡単には回復しない」と発言し、韓国を牽制していた。それにもかかわらず、朴槿恵政権は中国の反対を押し切ってTHAADの配備を決定してしまった。

王毅外相の「どのように弁明してもだめだ」との言葉に表れているように中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹誌である「環求時報」などは「韓国が痛がるような強力な制裁を掛けるべき」主張している。

中国外交部は「中国の戦略的安保理益を著しく損なうもので中国はそれ相応の措置を取る」と反発し、国防部は「米韓両国の行為を緊密に注視している。国家の安全と地域の戦略バランスに必要な措置を取る」と「軍事的な対応」を示唆するほど、朴政権に不快感を露わにしている。

「最良の関係」から「最悪の関係」に陥った状況下で果たして中韓首脳会談は開けるのだろうか? 

会えば会ったで、朴大統領は国際社会の一員として南シナ海問題での仲裁裁判所の判決について触れざるを得ない。日米など国際社会が声を揃えて、判決に従うよう中国に求め、圧力を掛けている時に、韓国だけ抜け駆けはできない。触れればこれまた中国の反発は避けられない。

会わなければ問題、会えば会うで難題が待ち受けている。朴大統領は頭が痛い。