2016年7月14日(木)

 韓国のTHAAD配備VS北朝鮮のSLBM配備、どっちが早い!

北のSLBMと南のTHAAD


「高高度防衛ミサイル」(THAAD)が韓国の星州(慶尚北道)に配備されることになった。

THAAD1個砲隊は砲隊統制所と射撃統制レーダー1台、発射台6基、迎撃ミサイル48発で構成されている。射撃統制用レーダーであるXバンダーレーダーは1000kmで、星州に配備されれば北朝鮮のすべての基地が探知範囲に入る。

星州に配備されれば、半径200km範囲内の平沢と烏山(京畿度)、鶏龍(忠清南道)、郡山(全羅北道)、大邱(慶尚北道)などに点在している在韓米軍施設や韓国の陸・海・空空軍本部が防御できる。朝鮮半島有事の際に米軍の援軍が上陸することになる釜山(慶尚南道)や浦項(慶尚北道)など最南端基地もガードできる。

THAADは前方120度範囲で200kmまで、即ちTHAADの迎撃高度である40〜150km範囲でミサイルが大気圏から侵入してきた時に補足、迎撃することになっている。

韓民求国防長官が「北朝鮮が保有するミサイルのスカッド、ノドン、ムスダンをすべて迎撃できる」と豪語するのも無理はない。配備されれば、北朝鮮が現在開発を続けているミサイルは無用物となりかねない。だからこそ、北朝鮮は軍総参謀部砲兵局の名による声明を出して「配備場所が確定され次第、制圧のための物理的対応措置を実行する」と威嚇しているわけだ。

北朝鮮が脅している「制圧のための物理的対応措置」とは、これまたTHAADを無能力化、即ち無用のものにしてしまうことを指すようだ。

韓国のTHAAD配備決定の翌日(7月9日)、北朝鮮は6度目の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を行った。

韓国国防部の発表では「10kmしか飛行せず、空中で爆発し、失敗した」とされている。北朝鮮が発射の事実を公表しなかったところをみると、失敗した可能性が高い。成功すれば、これまで必ず発表していたからだ。

昨年1月からスタートしたSLBM発射実験は今回で5度目となるが、何の実験をしているのか定かではない。飛距離を伸ばす実験ならば、SLBMの射程は300kmなので、前回4月23日の4度目の実検も30kmしか飛ばなかったわけだから韓国国防部が言うように失敗し続けていることになる。しかし、北朝鮮は韓国の発表とは180度異なり「完全に成功した」と発表していた。

北朝鮮の発表では実検は▲新たに開発した固型燃料用エンジンを利用した垂直飛行▲弾頭と本体の切り離し▲設定された高度(30km)での弾頭起爆装置の動作の確実性を担保するための実験で、特に「設定された高度での先頭(弾頭)部核起爆装置の動作の正確性を確証するのが目的」とされていた。この目的に沿って潜水艦が「最大発射深度まで迅速に沈下し、殲滅の弾道弾を発射した」とのことだ。

確かに北朝鮮が公開した発射映像には模擬弾が水面から直角で上昇、30〜40mの上空で轟音を轟かせ点火し、そのまま垂直に上昇、雲の上を突き抜けるシーンが映し出されていた。昨年5月の初の発射実験では模擬弾は水面から45度の角度で飛び出していたが、4度目の発射は90度のほぼ直角だった。

金正恩委員長は「SLBMが生産に入り、近いうちに実践配備されれば、敵対勢力の背後でいつでも破裂するかもしれない時限弾を仕掛けるのに等しい」と語っていることからまだ完成には至ってない。

韓国に配備されるTHAADのレーダーは北方(北朝鮮)から飛んで来るミサイルが迎撃対象としている。地上からの発射ならば、発射準備段階から追跡が可能だが、海深く後方地域に浸透する潜水艦から不意にSLBMが発射されれば、レーダーに映らないため対応のしようがない。星州は日本海(東海)とは100km離れており、日本海の遠海から発射されるSLBMを早期に探知、追跡し、迎撃には限界がある。

THAADは来年(2017年)12月までに配備の予定である。韓国は北朝鮮のミサイル開発のテンポが速いことから配備を急ぐようだが、北朝鮮もまた、SLBMの完成に向けてピッチを上げている。

韓国のTHAAD配備と、北朝鮮のSLBM完成と、どちらが早いか、これぞまさに軍拡の象徴である。