2016年7月26日(火)

 韓国の有力大統領候補が竹島に上陸した!

島を警護している隊員らと記念写真を撮る文在寅氏


韓国野党第一党の「共に民主党」の文在寅前代表が日韓の係争地である竹島(韓国名:独島)を昨日電撃訪問した。島で一夜を過ごし、今日離島する。

盧武鉉元大統領の秘書室長を務めた文在寅氏は竹島への経由地である鬱陵島で「独島博物館」を見学するなどして一泊し、翌朝10時に竹島に上陸し、ボートに乗って島の施設を見て回った。昨晩は島に駐在する40人の警備隊員らと夕食を共にし、管理事務所で宿泊したようだ。盧武鉉政権下の海洋水産部長官が案内人として同行していた。

文氏は決行理由について「以前から韓日歴史問題の象徴である独島の訪問を考えていた。8.15(解放記念日)を前に領土主権の重要性を強調したかった」と語っているが、政府に妨害されるのを警戒したのか、訪問は直前まで伏せられていた。「鬱陵島と独島を訪問する」と発表されたのは決行前日だった。

前回(2012年)の大統領選挙で現職の朴槿恵大統領に僅差で負けた文在寅氏は来年12月の大統領選挙に再出馬が取り沙汰されている有力政治家である。今春の総選挙で野党が国会で第一党に躍り出たことで政権交代は視野に入っており、仮に文氏が野党統一候補になれば、悲願の大統領の座も夢ではない。

過去、大統領候補と目されている大物政治家が竹島を訪問したケースは1997年11月に訪問した国民新党の李仁済大統領候補の一件のみだ。

当時、韓国政府は「日本は独島の領有権をめぐる韓日間の葛藤を拡散させて、独島を国際紛争地域にしようと企んでいる。我々はそれに嵌ってはならない」と李候補に自制を促していた。ところが、李仁済氏は「政府の屈辱的な対日外交姿勢は国民の非難を受けるべきだ」と政府の要請を拒み、強行した。選挙向けのパフォーマンスをしたものの結局、李仁済氏は大統領にはなれなかった。

韓国の大統領は初代大統領の李承晩から現在の朴槿恵大統領にいたるまで延べ11人に上るが、このうち「反日大統領」として名高いのがおそらく李承晩、金泳三、そして前任者の盧武鉉大統領の三人である。が、誰一人、「禁断の地」に足を踏み入れることはなかった。事の重大さを承知しているが故の自制であった。

唯一「暗黙の掟」を破ったのが2012年8月に訪問した李明博前大統領だった。その結果が日韓関係の悪化だ。

「李明博竹島上陸」により順調だった日韓関係が暗転し、「韓流ブーム」が消沈したのは周知の事実である。日本政府が猛反発し、国際司法裁判所に提訴する動きに出るなど外交問題に発展したこともまだ記憶に新しい。

韓国の有力政治家の竹島上陸はこの時の李明博大統領の訪問以来初めてで、異例のことである。

文在寅氏は党の要職にもなく、国会議員でもなく、何の肩書もない今の時期の訪問が得策と判断したようだが、悪化の一途を辿っていた日韓関係が昨年12月の慰安婦問題の日韓合意により好転しつつあるだけに政府与党だけでなく、野党の一部にも批判の声が上がっている。折しも、文在寅氏が上陸した昨日は日韓外相がラオスの首都ビエンチャンで会談し、「両国関係が進展したのは喜ばしい」と評価し、今後関係をさらに発展させるため協力することを確認しあったばかりだ。

文氏の行動は国民の関心を引くためのパフォーマンス、スタンドプレーにしか映らない。思慮に欠け、賢明ではない。大統領としての資質も問われる。韓国の国益にも日韓関係にもまた、本人にもプラスにはならない。日本政府が仮に対抗措置を取れば、文氏は日本に入国できないことを知るべきだ。

日本の立場からすれば、文氏は日本の主権を侵害し、不法入国したことになる。不法入国した以上、尖閣諸島で日本の領海を侵犯した中国漁船船長らと同様に文氏が来日すれば「毅然たる、断固たる外交」を標榜する日本政府としてはけじめとして法的処分をせざるを得ない。

文氏は韓国政府が2011年夏に独島でなく、独島への中継地である鬱陵島視察を計画した新藤義孝、稲田朋美両衆院議員、佐藤正久参院議員ら自民党議員らの入国さえ認めず、強制退去の処分を科したことを思い起こすべきだ。

韓国は与野党ともに日本国総理、あるいは閣僚や政治家らの靖国参拝をめぐっては公私に関わらず断固反対の立場だ。李前大統領の、文在寅氏の竹島訪問もこれまた日本の立場からすれば公私にかかわらず断じて許されないことだ。

いずれにせよ、次期大統領候補の竹島訪問で憂慮されるのは、他の候補や政治家らを触発することだ。特に、朴大統領には心理的なプレッシャーとなるかもしれない。

次期有力大統領候補である文在寅氏のこのスタンドプレーの責任は重いと言わざるを得ない。