2016年6月20日(月)

 沖縄米海兵隊を、普天間基地を韓国の済州島へ


元米海兵隊員による残虐な蛮行に怒った沖縄県民大会が19日に開かれ、米海兵隊の撤退を求める決議が採択された。米軍普天間飛行場の閉鎖・返還も併せて要求したようだ。

日本と同じように米軍の基地があり、また在韓米軍による犯罪が絶えない韓国はこの「沖縄問題」にもっと関心を払っても良さそうなものだが、世論の反応は総じて鈍い。メディアの扱いも小さい。それもこれも、韓国では、政府も国民も、沖縄駐留米軍、在日米軍を朝鮮半島有事の際の「助っ人」とみなしているからに他ならない。焦点となっている普天間飛行場についてもグアムなど国外に移設されれば「韓国の安全に深刻な影響が出る」と懸念している。

日本のメディアにしばしば登場する知日派の尹徳敏外交安保研究院院長にいたっては「沖縄基地問題に関する限り、韓国は当事者だ」とまで公言している。その理由について「グアムに移してしまうと、朝鮮半島との距離を考えた場合、沖縄の海兵隊が持つ有事の際の即応戦力の役割を果すことが難しいからだ」と言っていたが、韓国政府及び国防部の本音を代弁している。平たく言えば、朝鮮半島有事の際に最も緊急に展開される米海兵隊が沖縄から撤退すると韓国にとっては大変困るという話だ。

尹教授が言うように韓国も沖縄基地問題では当事者ならば、沖縄駐留米軍が日本の防衛だけでなく、韓国や台湾の防衛も兼ねているならば、両国にもそれなりのリスクとコストを負ってもらう必要もある。例えば、「グアムは遠すぎるので移転反対」と言うなら、両国に引き取ってもらうのも一つの手だ。米国と異なり防衛義務のない韓国や台湾のためにいつまでも沖縄が過重な犠牲を払う必要はない。

北朝鮮から延坪島を砲撃された際、李明博政権(当時)は「米韓連合態勢を一層強固にする」と誓い、国民に「安保意識を一層強めるよう」促していた。今の朴槿恵政権もこの考えに変わりがないどころか、米韓による更なる万全な防御態勢の構築を目指している。

北朝鮮の軍事的脅威に対処するため米国との軍事同盟の強化を急いでいるならば、日本が扱いに困っている沖縄の米海兵隊及び普天間基地を韓国内、例えば、同じく東シナ海に面している済州島に持ってきたらどうだろうか。

韓国に駐屯する在韓米軍は2万8千5百人と3万5千人の在日米軍に比べて5千人ほど少ないわけだから、好都合だろう。北朝鮮への抑止力にもなるし、拡声器よる宣伝放送よりも遥かに効き目がある。米軍維持の負担額でもこれまで韓国は日本の5分の1程度と少なかったわけだから多少増額しても可能だ。財源上困難と言うならば、日本が一部、あるいは全額肩代わりしてあげればよい。普天間にそのまま置いても、辺野古に移転させてもどっちみちコストは掛かるわけだから同じことだ。

沖縄本島と済州島を比較すると、面積は1,845平方キロメートルと1,207平方キロメートルと済州島のほうが広い。それでいて人口は沖縄本島の半分以下と少ない。飛行場もあるし、港もある。都合のよいことに今年2月に同島に海軍基地が建設されたばかりだ。揚陸艦や建設中の最新鋭潜水艦が集中配備され、機動艦隊用前進基地になるようだ。米国の軍艦も寄港する。「韓国のハワイ」と称されていることもあって米海兵隊にとっても悪くはない。済州島はグアムよりは遥かに台湾海峡に近いので米国にとっては「台湾有事」にも十分間に合う。尖閣で事があっても、直ぐに駆け参じることができる。

まして、韓国はトランプ共和党大統領候補の駐韓米軍撤収発言について一兵たりとも撤収してもらっては困るとの立場どころか、今後も軍備を増強してもらいたいと懇願している。実際に2012年4月に韓国に委譲する予定だった戦時作戦統制権も拝み倒して延長させている。「北の脅威」が除去され、平和が定着するまでは韓国にとって米軍は「仏様、神様」である。それならば、日米はこの機に普天間基地や米海兵隊をそのままそっくり韓国に移転させたらどうだろうか。

北朝鮮の脅威から韓国を守ってくれる「守護神」を朴槿恵政権もこの期に及んでまさか嫌とは言えないだろう。日本も扱いにくい「用心棒」の引っ越しに困っているならば、朝鮮半島の平和が確立されるまでの間、韓国にリースしたらどうだろうか。それで、韓国も安心、日本もほっと一息ならば、めでたしめでたしではないか。

実は、前任者の李明博前大統領はその気だった。李前大統領は2010年6月にカナダ・トロントで開かれた米韓首脳会談でオバマ大統領に対して普天間基地の韓国への移転を秘かに提案していたのだ。

このことは、この年の「文藝春秋」9月号に掲載された記事(「オフレコ公開 李明博が『普天間韓国移設』を極秘提案」)で明らかになったのだが、それによると、李大統領はなんとオバマ大統領に普天間基地移転問題が日米同盟で最悪のシナリオとなった場合、普天間基地の代替敷地を韓国が提供できると提案していたとのことだ。

日本は南北関係では戦後一貫して韓国の立場を支持してきたわけだから一度ぐらいは韓国から「恩返し」があっても良さそうなものだ。

仮に韓国も「No」ならば、「北の脅威」に直面している韓国にとっても沖縄米海兵隊は「招かざる客」「お荷物」ということになる。韓国にとっても迷惑千万ならば、一体、誰のための、何のための沖縄米軍駐留なのか、一から問わなくてはならないだろう。