2016年6月26日(日)

 英国のEU離脱で深刻な影響を受けるのは日本?韓国?


英国のEUからの離脱決定で世界経済に激震が走っている。

日本の市場は急激な円高と株安で揺れに揺れ、輸出回復とデフレからの脱却を目標に3年間、安倍政権が推進してきた円安政策がもろに影響を受け始めている。輸出にブレーキが掛かれば、アベノミクスは完全に破綻するかもしれない。

韓国もまた、株式市場が軒並み下落し、安全資産とされる日本の円が買われていることからウォンが急落し、ウォン相場の先行きが不透明となっている。しかし、その一方で円高・ウォン安で日本と海外市場で競合している電子や自動車業界にとっては輸出を伸ばす好機と捉えている。

EUの経済規模は米国より2割も大きい。そのEUにおいて英国はドイツに続いて2番目に経済規模が大きい。

日本にとって英国は世界第7位の輸出国であり、EU諸国においては第3位の輸出先(1084億円=2013年基準)である。また、投資国としては米国に次ぐ第2位の投資先(投資額1兆60億円=2014年)である。英国に進出している企業数も約1,300社と、EUではドイツに次ぐ。日本が英国と経済的にも商業的にもいかに緊密な関係にあるかがわかる。

一方、韓国にとってEUは中国に次ぐ第2の経済市場ではあるが、英国に限っては韓国にとって11番目の輸出国である。

韓国産業通算資源部のデーターによると、昨年の韓英貿易規模は約135億ドルで、過去最高を記録した。対英輸出額は約74億ドルに達したが、それでも韓国の全体の輸出額(約5,260億ドル)の1.4%に過ぎない。船舶、自動車、半導体などが主要品目で、船舶が約25億4千万ドルと最も多く、次に自動車(約15億1千万ドル)、半導体(約5億3千万ドル)と続く。

EU市場では韓国の自動車業界は近年、二ケタ成長の勢いをみせている。昨年は85万台販売し、そのうち英国では17万台を販売。今年も好調で英国では5月まで昨年同比7%増の7万8千台を販売している。

現代・起亜自動車はEUではチェコとスロバキアに工場を持っているが、英国には工場はない。現代・起亜自動車は5月だけでEUで昨年同期比16.8%増の8万2730台を販売している。EU全体の自動車市場(133万599台)の約6.3%に達する。ちなみに半導体のサムソンもLGも英国には工場を置いていない。ポーランドで生産した製品を英国に搬入し、販売している。

日本の場合、トヨタやホンダ、日産などは英国に生産工場を持ち、英国をEU向けの輸出拠点としている。日本の自動車メーカーは英国ではそれなりの価格競争力を持っており、英国でのシェアは14%に上る。

昨年、日産自動車は約48万台、トヨタ自動車は約19万台を英国で生産したが、多くはEU向けである。しかし、2年後はEU諸国への輸出時には関税を負担しなければならない。仮に10%の関税が掛けられれば、必然的に競争力は低下する。

韓国はEUとは自由貿易協定(FTA)を結んでいる。EUとのFTA交渉は2007年5月に開始し、2年2ヶ月で合意。2010年上半期から発効し、工業製品の関税全廃など特恵関税が適応されている。

EUは米国などに比べて工業製品の輸入関税は総じて高く、協定締結前までは薄型TVは14%、自動車には10%の関税が掛けられていた。EUとのFTAによる経済効果はGDP(国内総生産)を2〜3%を引き上げたとも言われている。

しかし、2年後は英国とEUとの間で関税が掛けられることから英国に輸出する韓国の主要輸出品にも関税(英国政府が独自に設定する実行税率)が付加されることになる。仮に英国が韓国の自動車に10%の関税を掛ければ、英国での韓国の輸出価格競争力が落ち、販売量で影響を受けることになる。このため韓国は英国とFTA締結の交渉を早急に進めることを検討している。

日本はEUとの間で3年前の2013年4月から貿易の自由化、投資、人の移動、知的財産の保護など幅広い経済関係の強化を目指してEPA(経済連携協定)交渉を始めたが、まだ合意には至ってない。EUは日本が農産品や加工食品などの市場開放に応じないことを理由に日本の自動車に関税を科したままである。

韓国政府は日本に比べて総じて英国との貿易・金融比重が大きくないため直ちに英国のEUからの離脱が韓国の輸出に影響を及ぼすことはないと展望し、政府が設定した3%の経済成長率の下方修正を今のところ検討する考えはないとしている。

しかし、韓国貿易協会は「世界的な低成長の基調と保護貿易主義が拡散するなかで英国が脱退したことで世界貿易の回復に否定的な影響を及ぼす」と展望している。韓国は中国を含む新興国の市場への輸出が60%を占めているので、これら国々の経済が悪化すれば、17カ月連続して下降している韓国の輸出に悪影響を及ぼすかもしれない。特に韓国にとって最大の気掛かりは、英国のEU離脱で中国が最も影響を受ける恐れがあることだ。

EUへの輸出は米国(16.9%)が最も多く、次が中国(15.8%)である。中国の経済成長率は2013年7.7%、2014年7.3%、そして2015年6.9%で、今年第1―4分期(1〜3月)は6.7%と下降の一途を辿っている。中国がダメージを受ければ、親亀こければ子亀もではないが、韓国経済もその余波を受けることになる。

輸出が減少すれば景気の鈍化は必至。当然、政府が目標としている今年の3%の成長率の達成も難しくなる。韓国にとっても英国のEU離脱による経済的反動は大きいようだ。