2016年6月30日(木)

 慰安婦問題は対日対抗措置の一つだった!?

日本のEZZで操業する韓国の漁船


日韓両国は6月22日から3日間、東京で今年7月から来年6月までの排他的経済水域(EEZ)での漁業をめぐる交渉を行い、漁獲割当量、操業条件などを協議したが、合意に達しなかったようだ。

両国は今年6月30日までの1年に関しては昨年1月にソウルで開かれた交渉での合意に基づき、操業が認められていたが、今回は決裂したようだ。韓国側が韓国漁船に割り当てられた太刀魚のクォータを現在の2,150トンからの倍増を要求し、要求が受け入れられない場合、韓国水域で操業する日本漁船の鯖クォータを縮小すると通告したことが決裂の原因のようだ。また、日本側が韓国漁船の違法操業や資源減少などを理由に日本のEEZ内における韓国漁船数を現在の206隻から大幅に減らす方針を打ち出したことに韓国側が同意しなかったことも原因とみられている。

漁業交渉が決裂したことで、両国の漁船は来月(7月)1日から相手国のEEZで操業ができない。今後は無許可操業となり、拿捕される。今年2月20日、日本のEEZ内で操業していた韓国のはえ縄漁船が漁獲量を実際より約97キロ少なく過小申告した疑いで拿捕されたばかりである。

韓国海洋水産部は韓国の漁船が拿捕されないように対策を講じる一方、早期に次回会合を開き、合意を目指す考えのようだが、交渉が長引くようだと、韓国側が圧力手段として対日強硬策を取る可能性も考えられなくもない。過去に日本政府が日韓漁業協定の破棄を通告したことに態度を硬化させ、報復措置を取ったことがあったからだ。

日本政府が1998年1月23日に日韓漁業協定の破棄を通告した際に韓国政府は報復措置として▲漁業自主規制協定の破棄▲日本政府が外国漁船の入漁を阻止している北方領土周辺での操業▲日本の水産資源保護に決定的な打撃を与える漁獲方法を取る構えをみせていた。実際に日本が日韓漁業協定の破棄を通告した翌日から操業自主規制区域であった北海道沖、襟裳岬沖で韓国漁船(8隻)の操業を許可していた。

また、外交的報復措置も検討され、韓国国会では日本の国連安保理事国加盟に反対し、従軍慰安婦問題の解決を国家として日本政府に要求することなどが議論されていた。

日本の国連安保理常任理事国への加盟問題について韓国政府はそれまでは沈黙を守っていた。また、従軍慰安婦問題については国家レベルでは補償を求めないとの立場を取っていた。しかし、日本政府が日韓漁業協定の破棄を通告するや日本の国連安保理事国加盟に反対の立場を明らかにするだけでなく、阻止運動を展開し、かつ慰安婦問題でも日本政府が法的に責任を負うべきとする政府見解の表明も検討していた。

当時から日本は慰安婦問題では1965年に締結された日韓条約により国家レベルでは解決しているとの立場を取っていたが、柳宗夏外相(当時)は破棄通告から3日後の1月26日、国会統一外務委員会で「1965年の韓日請求権締結協定当時は従軍慰安婦問題の不法性が論議されなかった」と述べ、「日本政府が今になって慰安婦問題で賠償責任がないと主張するのは道理に合わない」と日本政府を批判していた。

実際にこの年、韓国通商外交部は「金大中大統領が最近、日本人との会談で慰安婦問題は過去を清算する問題ではなく、人権問題であることを強調しているので、政府は人権問題の次元から日本の責任と直接的な賠償を促す方案を検討している」としてスイスのジュネーブで開かれた第54次国連人権委員会で従軍慰安婦に対する徹底した真相究明と被害者に対する日本政府の直接補償を促すよう動いていた。

当時、日韓漁業協定が破棄されれば、1,600隻の韓国の漁船が日本の排他的経済水域から締め出され、その損失額は3千億ウォン(約300億円)を超すとされていた。

朴槿恵政権が自らの手で日本政府との間で交わした従軍慰安婦に関する日韓合意を反故にするとか、後ろから手を回してマスコミをけしかけ、慰安婦問題を再燃させるような愚は犯さないと思うが、李明博前大統領が任期最後の年の2012年8月に従軍慰安婦問題で煮え切らない民主党の野田政権の対応に切れて、歴代大統領誰一人足を踏み入れたことのなかった「禁断の地」である「竹島」(独島)に上陸した前例があるだけに油断は禁物である。