2016年3月21日(月)

 注目の北朝鮮5回目の核実験の三つのポイント

北朝鮮が公開した核起爆装置


北朝鮮の動向を分析しているジョンズ・ホプキンス大の研究グループが運営する北朝鮮専門ウエブサイト「38ノース」は3月18日、北朝鮮の咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場の最新衛星写真(3月6日と14日)を分析した結果、核実験場につながる坑道の入り口周辺で除雪作業が行われていたことなどから北朝鮮は新たな核実験をいつでも行える状態にあると伝えていた。

新たな核実験、即ち5度目の核実験については金正恩第1書記が3月14日に弾道ミサイルの大気圏再突入の模擬実験を視察した際「核攻撃能力の信頼性をより高めるために早い時期に核弾頭の爆発実験を行うよう」指示していたことから時間の問題となっている。従って、今後の関心は次の3点に絞られる。

第一に 、これまでのように外務省が事前予告をするのか?

第二に 、核実験をやるとすれば、米韓合同軍事演習期間中(〜4月30日)か、それとも終了後か?

第三に 、どのような形態の核実験を行うのか?

事前予告については 、過去4度とも外務省は声明を出して、予告していた。

1度目(2006年10月9日)は10月3日に声明を出して核実験計画を発表していた。二度目(2009年5月25日)も4月29日にスポークスマン声明で「核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を含む自衛的措置を講じる」と発表していた。

また、3度目(2013年2月12日)も「高い水準の核実験」を示唆した国防委員会の声明(1月25日)が出る前日「自衛的軍事力を質量ともに強化するため物理的対応措置を取る」との声明(1月24日)を出していた。

直近の「水素爆弾」称される4度目(1月6日)は金第一書記が前年の12月9日に平壌市の平川革命事績地を視察した際「今日、我が祖国は国の主権と民族の尊厳を固く守る自衛の核弾、水素弾(水素爆弾)の巨大な爆音を轟かせることのできる強大な核保有国になり得た」と水素爆弾について言及していた。そして、この発言から1週間後の12月16日に「米国が対朝鮮敵対視政策にしがみついているならば米国が望むものとは正反対の想像もできない結果を招くことになる」との外務省スポークスマン談話が出されていた。その後、判明したことだが、4度目の核実験を金第一書記は12月15日に決断していた。

前回同様に今回も金第一書記自らが核弾頭の爆発実験を指示していることもあって、北朝鮮は外務省声明を通じて事前に何らかの意思表明を行うだろう。但し、北朝鮮の一連のミサイル発射がこれまでと違って、国際民間航空機関や国連海事機構への事前通告なく行われていることから唐突に行われる可能性も決してゼロではない。

実験の時期については 、1度目は外務省声明から6日後に、2度目が26日後に、3度目が19日後に、そして4度目は21日後に行われている。統計では外務省声明から1か月以内には実施されている。1か月以内ならば、確実に米韓合同軍事演習期間中(3月7日―4月30日)にぶつかることになる。

金第一書記が3月15日に「早い時期(近いうち)に発射しろ」と命じていることもあって金日成主席の誕生日(4月15日)や朝鮮人民軍創建日(4月25日)を待たずに強行される可能性も多分にある。早ければ、3月31日に世界の主要国首脳らを集めてワシントンで開催される核安全保障会議(サミット)に照準を合わせるかもしれない。

オバマ大統領が招請する核安全サミットには安倍総理、朴槿恵大統領、習近平主席ら約60か国の首脳らが出席する。2日間のサミット期間中に北朝鮮問題で日米韓の3か国首脳会談も予定されていることもあって世界の耳目を集めるには格好の機会といえる。

当然、サミットにぶつければ、日米韓のみならず国際社会の結束をさらに強めかねないデメリットもあるが、金第一書記はむしろサミットに冷水を浴びせることで核放棄の考えは毛頭ないとの意志を伝えるにはまたとない機会と捉えているかもしれない。

実際に2012年3月26日に核安全サミットがソウルで開かれた際には10日前の16日に「人工衛星(テポドン)を打ち上げる」と予告し、4月13日に発射していた。さらに、2009年4月2日にロンドンで主要20か国首脳らによる金融サミットが開催された時も一週間前の3月26日にテポドン発射の予告を行い、サミット終了3日後の5日に発射ボタンを押していた。

核実験の形態については 、金第一書記が3月10日にスカッドミサイルの発射に立ち会った際「新たに研究製作した核弾頭の威力を判定するための核爆発実験と核攻撃能力を高めるのに必要な実験を続けていかなければならない」と関係部門に指示していた通りならば、成功したとされる小型化した核弾頭の爆発実験が先行することになりそうだ。

この場合、プルトニウムもしくはウラン型核弾頭そのものを豊渓里の地下核実験場で爆発させるのか、核物質を入れずに起爆装置だけを弾頭に入れて爆発させるのか、どちらかだが、本物の核弾頭をミサイルに搭載し、海に落とすような実験はあり得ないだろう。

核弾頭爆発実験後は、金第一書記が「核攻撃能力を高めるのに必要な実験を続けていかなければならない」と言明し、それも「地上と空中、海上、水中の任意の空間でも敵に核攻撃を加えられるよう準備せよ」と命じていることから実験で核弾頭の威力が判定されれば、スカッドやノドンに続き、ムスダンや「KNー08」などの中・長距離ミサイルや完成したとされる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に模擬核爆弾を装着しての発射訓練が行われるものとみられる。