2017年7月30日(日)

 「B−1B」戦略爆撃機が飛来しても北朝鮮のミサイル発射を止められない!

別名「死の白鳥」と呼ばれる米軍の戦略爆撃機「B−1B」


米軍の戦略爆撃機「B−1B」2機が今日(30日)、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行した北朝鮮を威嚇するため朝鮮半島上空を飛行し、武力示威を行ったそうだ。毎度お馴染み光景だ。

 朝鮮半島上空でデモンストレーションする前には九州周辺空域で日本の航空自衛隊と、朝鮮半島に入ってからは韓国空軍と共同訓練を実施したようだ。

 別名「死の白鳥」と呼ばれる「B−1B」は核戦略爆撃機「B―52」やステルス戦略爆撃機「B−2」と並ぶ米国が誇る3大戦略爆撃機の一つで、北朝鮮が最も恐れ、警戒している爆撃機と言われている。

 戦略爆撃機の中では速度がマッハ1.25と最も早く、グアムのアンダーソン基地からは2時間もあれば平壌上空に飛来する。核兵器は搭載してないが、930km離れた場所から北朝鮮の核心施設を半径2〜3km内で精密打撃することが可能で、空対地巡航ミサイル24基など61tに及ぶ兵器を搭載している。地中貫徹爆弾「バンカーバスター」も保有しており、金正恩委員長ら北朝鮮最高司令部が作戦を担う地下バンカーなど核心施設への空爆が可能だ。

▲衝撃の米国の対北朝鮮開戦シナリオ 

 「B−1B」は今月8日にも飛んで来て、日韓と合同訓練を実施したばかりだ。北朝鮮が米国の独立記念日の4日にICBMを発射したためだ。昨年9月9日にも北朝鮮が5度目の核実験を実施した直後に朝鮮半島に飛来し、北朝鮮を牽制し、今年も3月以降、毎月飛んで来ているが、北朝鮮はミサイル発射を躊躇うどころか、逆に拍車を掛ける一方だ。

 前回の飛来も北朝鮮に対して「今度ICBMを発射したらただでは済まさない」と警告を発することが目的であったはずだ。しかし、北朝鮮は全く意に介さず20日後に「火星14号」と称するICBMを再度発射している。トランプ政権は手が出せないと、完全になめきっている。

 韓国はトランプ政権が4日かかった前回とは異なり、今回は北朝鮮のICBM発射から30時間で出撃させたことについて「これまでで最も早かった。朝鮮半島有事の際に直ちに出撃し、爆撃任務を遂行できる連合防衛体制能力を示すことができた」と説明し、米国による韓国への防衛コミットメントを評価しているが、韓国の上空を飛行するだけでは所詮、犬の遠吠えにしか北朝鮮には映ってないようだ。

 北朝鮮が江原道の元山から「スカッドC」(火星6号)改良型の地対艦弾道ミサイル(ASNM)を発射した5月29日にも確か発射から5時間後には出撃していたが、北朝鮮は10日後の6月8日に同じ元山から地対艦巡行ミサイル「KH−35」数発を発射する始末だ。

 米国は今年3月から4月にかけて「金正恩暗殺作戦」を遂行する米特殊部隊も参加した史上最大規模の米韓軍事演習を行い、5月には「動く海上軍事基地」と称される原子力空母の「カールビンソン」と「ロナルドレーガン」を日本海沖で同時訓練させ、6月には射程距離3千kmのトマホーク巡航ミサイルを搭載した新型の原子力潜水艦を釜山に入港させるなど軍事プレッシャーを掛けてみたが、それでも構わず北朝鮮はミサイル発射を継続させている。

(参考資料:韓国特殊部隊の「金正恩暗殺作戦」に米特殊部隊も合流

 まして、前回出撃した際には3月に続いて韓国空軍のF−15Kと在韓米軍のF−16戦闘機と合同で江原道のヨンウォル郡にある韓国空軍の「必勝射撃場」で北朝鮮の弾道ミサイル発射台に見立てた目標物にピンポイント爆撃する訓練まで行い、その爆撃能力を誇示してみせたが、北朝鮮はどこ吹く風で、ミサイル発射を止めなかった。

 米太平洋空軍のテレンス・オショーネシー司令官は「我々は迅速で致命的で圧倒的に対応する準備ができている」と述べ、トランプ大統領の命令次第ではいつでも北朝鮮を空爆する用意があることを示唆したが、実際に行動で示さない限りは、北朝鮮がミサイル発射を断念することはないだろう。

 その証拠に今朝の「労働新聞」(30日付)は「いかなる圧迫も通じない」との論評を掲載し、北朝鮮外務省もまた「米国が制裁策動に固執するならば正義の行動で応える」と今後も大量破壊兵器の開発、実験を繰り返すことを宣言している。

 「B−1B」の飛来はマンネリ化してしまい、トランプ政権が本気度を示さない限り、北朝鮮には効き目がなさそうだ。

 来月21日からは恒例の米韓合同軍事演習(フリーダムガーディアン)が始まる。レッドラインを越されたことでトランプ政権がどう出るか、注目の的だ。

(参考資料:軍事衝突は?不気味な8月の米韓合同軍事演習(UFG)