2017年5月28日(日)

 北朝鮮が3週連続で日曜日にミサイル発射 今度は北朝鮮版「PAC−3」

北朝鮮が日曜日に発射した新型迎撃ミサイル昨年発射に成功した潜水艦弾道ミサイル「北極星」


北朝鮮がまた、日曜日にミサイルを発射した。3週連続だ。それも予想したようにイタリアでの「G7サミット」(主要7か国首脳会議)にぶつけた。

「G7」が共同声明で北朝鮮に対して「核とミサイル開発計画を放棄しなければ、制裁を強化する準備ができている」と警告したことへの反発でもあり、トランプ政権が原子力空母「カールビンソン」と「ロナルド・レーガン」による合同訓練を来月朝鮮半島近海で実施することへの対抗措置でもある。それも、今回はこれまでの攻撃用ミサイルではなく、米国の空爆に備えた防空用の迎撃ミサイルである。

北朝鮮の国営通信・朝鮮中央通信は5月28日、金正恩委員長の立会いの下、新型の反航空(地対空)迎撃誘導兵器体系(ミサイルシステム)の発射実験が行われ、「成功した」と伝えた。

迎撃ミサイルの発射実験は昨年4月以来、約1年ぶりのことである。再実験の結果について金委員長は「昨年よりも目標発見・追跡能力が大幅に向上し、命中精度も高まり、昨年表面化した欠点も克服された。合格だ」と評価し、21日に実験に成功した準中距離弾道ミサイル「北極量2型」と同様に量産と配備を指示した。

朝鮮中央通信によれば、今回の試射は「迎撃誘導ミサイル体系の戦闘的性能の信頼性を検証し、より現代的、精密化すること」に目的が据えられ、試験射撃は「不意に我が領空を侵犯する敵の空中目標物を打撃、消滅させることを仮想し、状況を醸成し、任意の方向から飛来してくる様々な空中目標物を探知、迎撃する方法で行われた」と伝えられている。

北朝鮮には最大迎撃高度が数十キロメートルの新型ミサイル「KN−06」(射程距離100km)のほか「SA−5」(260km)、「SA−2」(48km)、「SA−3」(35km)などの地対空ミサイルを保有、配備しているが、今回試射されたのは、昨年と同じ「KN−06」の改良型とみられている。

「KN−06」は日韓両国が保有しているPAC−3(マッハ4〜5、射程20〜40km)の初期段階のミサイルとみられている。しかし、韓国内では北朝鮮のミサイル開発速度を勘案すれば、早期に高度化された迎撃ミサイルシステムを保有することになると警戒する向きもある。

まして、今回の迎撃ミサイルは、今月21日に発射された「北極星2型」同様に移動式発射台からコールド・ランチ方式で発射されていた。コールド・ランチ方式の技術が迎撃ミサイルにも適応されていることがわかる。

北朝鮮は「ノドン」や「スカッドER」,「ムスダン」、「北極星2型」など地対地弾道ミサイルだけでなく、対空ミサイル、特に迎撃ミサイル開発に力を注いできた。

過去8年間のデーターを検証すると、例えば、2009年5月26日、29日と咸鏡南道・咸興と、咸鏡北道・無水端から地対空ミサイルを二度発射していた。無水端から発射されたのは射程260kmの旧ソ連製「SA−5」の改良型であった。

また、2年前の2015年2月にも平安南道・南浦から射程48kmの「SA−2」の発射実験を行っていた。北朝鮮は「SA−2」を2000年の45基から15年の間にその数を180基に増やしている。さらに、この年は、3月にも金委員長の参観の下、咸鏡南道・先徳からSA系列の地対空ミサイル7発を発射しているが、射程260kmの「SA−5」の発射はこの時が初めてだった。

ミサイル誘導技術も2013年3月4日にテストされているが、400km先海上の目標物に正確に着弾していたと言われている。米軍の軍事衛星記録データー分析によると、海面すれすれに飛行したマッハ2.5の超音速巡航ミサイルだったことが判明し、米軍を驚かせたとも言われている。この時のミサイルは、ロシア最強の超音速巡航ミサイル「SSN−12」と酷似していた。仮に北朝鮮がすでにこの超音速巡航ミサイルを配備しているならば、航空母艦もイージス艦にとっては大きな脅威となる。

北朝鮮は翌年の2014年6月にも金委員長の立会いの下、江原道・元山から射程190kmの300mm放射砲(KN−09)3発を発射しているが、これも新たに開発された超精密化された戦術誘導弾であった。超精密化された戦術誘導弾は武装装備の精密化、軽量化、無人化、知能化を実現することにある。北朝鮮はこの時の成功で、「短距離及び中長距離誘導兵器を含むすべての打撃手段を世界レベルに超精密化させ、打撃の命中率と威力を最大限に高めることのできる展望を開いた」と豪語していた。

「KN−09」は射程が100〜120kmの弾道ミサイルだが、米空軍は海岸から発射するクルーズ巡行ミサイルと分類した。クルーズミサイルは敵のレーダーを避けて超低空飛行したり、迂回航行してターゲットに命中させる巡航ミサイルのことである。

極めつけは、2015年5月に国防委員会政策局が「中・短距離ロケットはもちろん、長距離ロケットの精密化、知能化も最高の命中確率を担保できる段階」とした上で、米国に対して「われわれの自衛力強化措置に挑戦してはならない」と警告する内容の報道官声明を発表した。

北朝鮮の実験成功は、外交・軍事的には空母を相次いで朝鮮半島近海に派遣するなど軍事的圧力を強めているトランプ政権に対して迎撃能力を誇示し、牽制することに狙いがあるが、偵察機や無人機など米軍機が領空を侵犯すれば、実際に迎撃する可能性も否定できない。というのも、過去には米軍機やヘリコプターが北朝鮮によって撃墜されたことが何回もあるからだ。

偵察機では、1969年に電子偵察機「EC−121」が北朝鮮の領空を侵犯したとして撃墜されている。事件後、米国務省は同偵察機が北朝鮮沿岸地域に対して偵察活動を続けていた神奈川県厚木基地所属機で、事件が起きる前の3か月間に延べ190回も偵察飛行を行っていた事実を認めていた。

もう一件が、1981年の偵察機「SR−71」への迎撃未遂だ。

「SR−71」は1966年から実戦配備された偵察機で高度2万4千メートル、巡航速度マッハ3以上の性能を持つ当時米国が誇っていた世界最新鋭の偵察機であった。

米国務省は同年8月26日、「SR−71」が朝鮮半島上空で「北朝鮮のミサイル攻撃を受けた」と発表した。米韓は「重大な挑発である」と北朝鮮を非難し、当時レーガン政権は「北朝鮮近辺の偵察飛行は今後も続行し、米国の乗員、乗機の安全を守るため必要なあらゆる措置を取る」と北朝鮮を威嚇した。

これに対して、北朝鮮は「SR−71」が「領空を侵犯した」と非難しながらも「ミサイルを発射した事実はない」との談話を発表し、「新たな戦争を挑発するための口実を見出すための米国のでっちあげである」と反論していた

(参考資料:「北極星2型」の発射はICBM発射の前触れか!