2017年11月19日(日)

 中国特使、金正恩委員長との面会が実現するか!?

北朝鮮の実質NO.2の崔龍海氏(中央)に面会した宋濤対外連絡部長(左から2番目)


 習近平中国共産党総書記の特使として宋涛共産党対外連絡部長が17日から平壌を訪問しているが、金正恩委員長が宋涛部長に会うかどうかに国際的な関心が集まっている。

 北朝鮮は中国共産党幹部らの訪問の際には必ず最高指導者が面談している。特使の場合は、ほぼ例外なく接見している。

 例えば、2012年7月30日に前任者の王家瑞対外連絡部長が訪朝しているが、この時は胡錦涛主席の特使としての訪朝ではなかったものの金委員長は8月2日に王部長と接見していた。 

 政治局員の姜錫柱副総理(国際担当)のほか金養建党国際担当書記、金正男党副部長(中国担当)の3人が同席し、対外連絡部代表団からの贈り物も直接伝達されていた。

 金委員長は一行のため晩餐会を開いたが、晩さん会には当時軍総政治局長だった崔龍海政治局常務委員や処刑された金委員長の叔父である張成沢政治局員らも出席し、盛大に行われていた。

 この年の11月には当時中国共産党序列15位の李建國政治局員(全人代常務副委員長)も訪朝している。

 王家瑞対外連絡部長も同行していたこの訪朝団とも金委員長は一行の帰国日(30日)に金基南政治局員や金養建党国際担当書記らを伴って接見していた。この場で中国共産党代表団の贈物が渡されていた。

 この時は、金委員長主催の晩餐会はなく、宴会は党主催によるものだった。北朝鮮側からは会談相手の金基南政治局員のほか金永日国際担当書記と金成男党副部長らが出席していた。驚いたことに、北朝鮮は一行が帰国した翌日(12月1日)に人工衛星と称する「テポドン」の打ち上げを発表し、12日に予告通り発射してみせた。

 翌2013年7月には当時中国共産党序列16位の李源潮政治局員(国家副主席)が訪朝しているが、この時は、金正恩委員長は一行が到着したその日(25日)に接見している。外務省の金桂寛第一次官が同席していた。

 李源潮政治局員は「血で結ばれた中朝両国、両軍隊及び両人民の戦闘的な親善を代継いで固守し、光り輝かす使命を持って訪朝した」と語り、「中朝両国は親善的な隣邦であり、伝統的な中朝親善協調関係を絶えまく強固発展させるのは中国党と政府の確固不動な方針である」との習主席の口頭メッセージを伝えていた。贈り物も渡された。

 この時も金委員長主催の晩餐会はなく、到着した日に最高人民会議が宴会を催していた。序列11位の楊亨變政治局員(最高人民会議副委員長)や金英日党国際部長、朴義春外相らが出席し、帰国を見送ったのは楊亨變政治局員であった。

 直近では2015年10月に中国共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員が訪朝しているが、金正恩委員長はこの時も一行が到着した10月9日、その日に接見している。劉雲山政治局常務委員は金委員長宛の贈物をその場で伝達していた。

 劉政治局常務委員は「血で結ばれた中朝両国の党と政府、人民間の戦闘的親善を代継いで、固守し、光り輝かせ、政治、経済、軍事、文化などすべての分野の親善協調関係を新たな段階に発展させる使命を持って朝鮮を訪問した」と述べ、「栄光なる伝統を持つ戦略的な中朝関係を変わらず強固発展させることが中国の党と政府の確固不動で、揺るぎない方針である」と発言し、金委員長を喜ばせた。また、劉氏から手渡された習近平総書記の親書には「新しい情勢の下、我々は中朝関係の大局と両国の大計から出発し、朝鮮と交流を密接にし、協力を深めたい」などと記されてあった。

 しかし、金委員長は劉氏に対して「伝統的な朝中親善を一層強固に発展させることが労働党と人民の意志である」と述べたうえで「伝統は歴史本や教科書に記録することで終わるのではなく、実践で継承し、光り輝くようにすべきである」とある種の注文を付けていた。

 金委員長主催の晩餐会や宴会はなく、党主催の宴会が開かれ、会談相手である当日序列5位の崔龍海政治局常務委員や李昌根党副部長や李吉成外務次官らが出席した。帰国(12日)の際には金基南政治局員と李昌根党副部長が一行を見送った。

 この劉政治局常務委員の訪朝を機に関係改善の兆しが芽生えたかに見えたが、2か月後のモランボン楽団の中国親善公演(12月12日)が寸前でドタキャンになるや3日後の15日、金委員長は翌年(2016年)1月6日に核実験を実施することを決心し、命令文にサインしていた。

 テポドン発射の動きが表面化した昨年2月は中国の武大衛朝鮮半島特別代表(6か国首席代表)が2日から4日まで訪朝し、金桂寛外務第一次官らと会談したが、北朝鮮は帰国から3日後の7日にテポドンを発射した。

 武大衛特別代表は後に「当時、厳重な口調で核を放棄するようにメッセージを伝達したが、北朝鮮は片方の耳で聞いて片方の耳から聞き流していた」と舞台裏を明かしていた。

 今回、17日に平壌に入った中国の宋涛対外連絡部長はその日のうちに現在党序列3位の崔龍海政治局常務委員に面会し、崔政治局常務委員に金委員長宛の贈物を伝達している。

 翌18日には党序列10位の外交トップの李スヨン政治局員(政務局副委員長=国際担当)と会談し、その日のうちに李政治局員と李昌根党副部長(中国担当)らが出席して歓迎宴が開かれている。

 金委員長宛の贈物も伝達され、両党の会談も行われ、そして宴会もすでに終わっている。後は帰国を前に金委員長への表敬訪問(接見)のみとなったが、実現するかどうか、間もなくわかるだろう。