2017年10月14日(土)

 北朝鮮がICBMを発射すれば、嵐になる!?



 トランプ大統領は10月5日、軍首脳部との会合で「独裁政権が我々と同盟国に想像もつかない人命損失を与えるとの脅しを容認しない」としたうえで会合後、「今は嵐の前の静けさだ」と語った。「なんの意味か」との記者の質問に「この部屋には世界の最高の軍人らがいる。そのうちわかるだろう」と意味深な発言をしていた。

(参考資料:北朝鮮が前代未聞の声明を発表! 究極の「トランプVS金正恩バトル」

 その2日後には「歴大統領と政府は25年間北朝鮮と対話をし、多くの合意をしていた。多額の金も支出したが、効果がなかった。合意はインクが乾く前に棄損され、米国の交渉者はバカ者となってしまった。残念だ。ただ、一つ効果はある」と述べたが、その「一つの効果」についてはこれまた詳しくは言及しなかった。

 しかし、この謎を解くにはそう時間は要しなかった。マティス米国防長官は9日、ワシントン市内での講演後の質疑で「今後どうなるかは分からないが、大統領が必要とした場合に取ることができる軍事的選択肢をしっかり用意しておかねばならない」と述べたことなどからこの「一つの効果」が軍事オプションであることが浮き彫りとなった。

 トランプ大統領は11日にはFOXとのインタビューで「北朝鮮問題は25年前、20年前、5年前に終わらせるべきだった。周知のように今は(北の核は)進展してしまった。今、何かをしなければならない。我々はこのまま放置するわけにはいかない」と述べ、北朝鮮の核ミサイルを阻止するため行動を起こす用意があることを示唆した。

 朝鮮半島の今は、確かに「嵐の前の静けさ」の状態にある。しかし、この静けさは北朝鮮による一発のミサイル発射で破られ、嵐となる公算が高い。その北朝鮮は労働新聞が12日付の記事で「我々が敵の制裁と封鎖、軍事圧殺策動を水の泡にし、核武力完成目標をどのように達成するかを米国とその追随勢力は自分の目ではっきりと見ることになるだろう」とミサイル発射を予告した。

 米国は嵐の到来を前にその備え(戦力強化)を急ぎ、昨年に続き今年もこの時期に朝鮮半島の海上で韓国軍と合同軍事演習を実施することになった。

(参考資料:「ソウルを重大な脅威に陥れない」米国の軍事オプションとは何か?

 昨年は労働党創建日の10日から15日まで行われたが、今年は16日から20日まで実施される。「天安艦事件」(韓国の哨戒艦が撃沈された事件)以来6年ぶりに「不屈の意志」と命名された昨年の演習は東西南のすべての海域で行われたが、今年は東と西の両面で行われる。

 訓練に動員される米韓の艦船は40隻以上に上る。米軍からは第7艦隊所属の「ロナルドレーガン」原子力空母強襲団が参加する。「ロナルドレーガン」(全長333m、排水量10万2千トン)はサッカー場3個分に相当する1,800平方メートルの広さの甲板にF/A−18戦闘機、EA−6B電子機,E−2C空中早期警報器など80余機を搭載している。韓国からもイージス駆逐艦である「世宗大王艦」など水上艦や潜水艦が参加する。

 空母強襲団は4隻のイージス艦、2隻の原子力潜水艦、それに支援艦など7〜8隻で編成される。イージス艦一隻だけで巡航ミサイルを50〜80発を装着している。巡航ミサイルトマホークの射程距離は2、500kmで、命中誤差は3mで非常に正確度が高い。演習に参加するのは空母だけでなく、原子力潜水艦「ミシガン」もすでに13日には釜山に入港している。

 世界最大規模の原子力潜水艦「ミシガン」は全長170m、幅12.8mで乗務員150人、トマホークを154基搭載している。今年4月も原子力空母「カールビンソン」と共に朝鮮半島海域で展開していた。

 今年の演習にはP−3海上哨戒機、対潜ヘリのリングス(Lynx)、AW-159海上作戦ヘリ、 UH-60、MH-60Rなどの輸送ヘリ、アパッチ攻撃ヘリAH-64E、F−15K戦闘機やFA−18対戦車攻撃なども動員される。昨年よりも戦力のレベルが増強されている。

 昨年の演習では韓国軍が北朝鮮による5度目の核実験(9月9日)後に公開した「大量懲罰報復(KMPR)」概念が初めて適用された。

 「KMPR」は北朝鮮が核兵器で危害を加える場合、北朝鮮の戦争指導部を直接叩く報復体系である。従って、演習では海上から北朝鮮指導部を含む地上の核心施設を精密に打撃する訓練と韓国に浸透する北朝鮮の潜水艦を撃沈する対潜訓練も実施された。

 今回の訓練では原子力潜水艦に「斬首作戦」要員である特殊戦作戦部隊が初めて搭乗する。また、北朝鮮の地上、海上特殊戦作戦部隊の動きを監視するため地上目標捜索・監視機「ジョイントスターズ」(JSTARS)も投入される。

 湾岸戦争(1991年)にも投入された「JSTARS」は高度9〜12km上空で韓国攻撃用の北朝鮮地上軍の地対地ミサイルや野戦軍の機動、海岸砲や長距離砲基地など地上兵力装備の動きを精密に監視する任務を帯びている。

 昨年は日本海(東海)と黄海(西海)で後方浸透を企てる敵の特殊部隊を撃滅することを目標とした対特殊部隊作戦訓練が行われたが、「ロナルドレーガン」が参加した空母強襲団訓練は中国への配慮から後方の西南海域に限定された。今年は演習区域がまだ明らかにされてないが、原子力空母の北上もあり得るかもしれない。

 先月23日、米戦略爆撃機「B−1B」2機など米軍用機10機を休戦協定(1953年)以来、初めて海の軍事境界線と称される北方限界線(NLL)を越えさせ、北朝鮮の領空に近い空域で2時間にわたって米軍が軍事示威を行ったことから今回もNLLを越え、北朝鮮領海付近での演習も考えられなくもない。

 今年の米韓の演習はどれも実戦、本番、それも先制攻撃を想定した演習にシフトしている。

 戦略爆撃機「B−1」の飛来も、過去は1年に一、二度程度だったが、今年は毎月、それも直近の3回は、8月31日、9月23日、10月10日と期間が短縮している。予告もなく、夜間に浸透し、爆弾投下訓練を行っている。9月23日の演習では北朝鮮の領空には入らなかったもののNLLから150kmまで北上し、潜水艦弾道ミサイル(SLBM)基地のある新浦沖から120km〜150km、核実験場の咸鏡南道吉洲豊鶏里から130km〜140kmまで飛行していた。

 米軍は今月6日にカリフォルニアのサンティアゴに寄港していた原子力空母「ルーズベルト」も太平洋に向け出港させている。合流すれば、空母は2隻体制となる。空母強襲団は、基本的に核とミサイルの除去及び斬首作戦に投入されるが、その一方で北朝鮮との全面戦争への拡大の抑止の役割も担う。

 韓国の報道によると、北朝鮮で弾道ミサイルを搭載した複数の移動式発射台が移動していることが確認されたようだ。

 トランプ大統領は10月5日、軍首脳部との会合で「独裁政権が我々と同盟国に想像もつかない人命損失を与えるとの脅しを容認しない」としたうえで会合後、「今は嵐の前の静けさだ」と語った。「なんの意味か」との記者の質問に「この部屋には世界の最高の軍人らがいる。そのうちわかるだろう」と意味深な発言をしていた。

(参考資料:北朝鮮が前代未聞の声明を発表! 究極の「トランプVS金正恩バトル」

 その2日後には「歴大統領と政府は25年間北朝鮮と対話をし、多くの合意をしていた。多額の金も支出したが、効果がなかった。合意はインクが乾く前に棄損され、米国の交渉者はバカ者となってしまった。残念だ。ただ、一つ効果はある」と述べたが、その「一つの効果」についてはこれまた詳しくは言及しなかった。

 しかし、この謎を解くにはそう時間は要しなかった。マティス米国防長官は9日、ワシントン市内での講演後の質疑で「今後どうなるかは分からないが、大統領が必要とした場合に取ることができる軍事的選択肢をしっかり用意しておかねばならない」と述べたことなどからこの「一つの効果」が軍事オプションであることが浮き彫りとなった。

 トランプ大統領は11日にはFOXとのインタビューで「北朝鮮問題は25年前、20年前、5年前に終わらせるべきだった。周知のように今は(北の核は)進展してしまった。今、何かをしなければならない。我々はこのまま放置するわけにはいかない」と述べ、北朝鮮の核ミサイルを阻止するため行動を起こす用意があることを示唆した。

 朝鮮半島の今は、確かに「嵐の前の静けさ」の状態にある。しかし、この静けさは北朝鮮による一発のミサイル発射で破られ、嵐となる公算が高い。その北朝鮮は労働新聞が12日付の記事で「我々が敵の制裁と封鎖、軍事圧殺策動を水の泡にし、核武力完成目標をどのように達成するかを米国とその追随勢力は自分の目ではっきりと見ることになるだろう」とミサイル発射を予告した。

 米国は嵐の到来を前にその備え(戦力強化)を急ぎ、昨年に続き今年もこの時期に朝鮮半島の海上で韓国軍と合同軍事演習を実施することになった。

(参考資料:「ソウルを重大な脅威に陥れない」米国の軍事オプションとは何か?

 昨年は労働党創建日の10日から15日まで行われたが、今年は16日から20日まで実施される。「天安艦事件」(韓国の哨戒艦が撃沈された事件)以来6年ぶりに「不屈の意志」と命名された昨年の演習は東西南のすべての海域で行われたが、今年は東と西の両面で行われる。

 訓練に動員される米韓の艦船は40隻以上に上る。米軍からは第7艦隊所属の「ロナルドレーガン」原子力空母強襲団が参加する。「ロナルドレーガン」(全長333m、排水量10万2千トン)はサッカー場3個分に相当する1,800平方メートルの広さの甲板にF/A−18戦闘機、EA−6B電子機,E−2C空中早期警報器など80余機を搭載している。韓国からもイージス駆逐艦である「世宗大王艦」など水上艦や潜水艦が参加する。

 空母強襲団は4隻のイージス艦、2隻の原子力潜水艦、それに支援艦など7〜8隻で編成される。イージス艦一隻だけで巡航ミサイルを50〜80発を装着している。巡航ミサイルトマホークの射程距離は2、500kmで、命中誤差は3mで非常に正確度が高い。演習に参加するのは空母だけでなく、原子力潜水艦「ミシガン」もすでに13日には釜山に入港している。

 世界最大規模の原子力潜水艦「ミシガン」は全長170m、幅12.8mで乗務員150人、トマホークを154基搭載している。今年4月も原子力空母「カールビンソン」と共に朝鮮半島海域で展開していた。

 今年の演習にはP−3海上哨戒機、対潜ヘリのリングス(Lynx)、AW-159海上作戦ヘリ、 UH-60、MH-60Rなどの輸送ヘリ、アパッチ攻撃ヘリAH-64E、F−15K戦闘機やFA−18対戦車攻撃なども動員される。昨年よりも戦力のレベルが増強されている。

 昨年の演習では韓国軍が北朝鮮による5度目の核実験(9月9日)後に公開した「大量懲罰報復(KMPR)」概念が初めて適用された。

 「KMPR」は北朝鮮が核兵器で危害を加える場合、北朝鮮の戦争指導部を直接叩く報復体系である。従って、演習では海上から北朝鮮指導部を含む地上の核心施設を精密に打撃する訓練と韓国に浸透する北朝鮮の潜水艦を撃沈する対潜訓練も実施された。

 今回の訓練では原子力潜水艦に「斬首作戦」要員である特殊戦作戦部隊が初めて搭乗する。また、北朝鮮の地上、海上特殊戦作戦部隊の動きを監視するため地上目標捜索・監視機「ジョイントスターズ」(JSTARS)も投入される。

 湾岸戦争(1991年)にも投入された「JSTARS」は高度9〜12km上空で韓国攻撃用の北朝鮮地上軍の地対地ミサイルや野戦軍の機動、海岸砲や長距離砲基地など地上兵力装備の動きを精密に監視する任務を帯びている。

 昨年は日本海(東海)と黄海(西海)で後方浸透を企てる敵の特殊部隊を撃滅することを目標とした対特殊部隊作戦訓練が行われたが、「ロナルドレーガン」が参加した空母強襲団訓練は中国への配慮から後方の西南海域に限定された。今年は演習区域がまだ明らかにされてないが、原子力空母の北上もあり得るかもしれない。

 先月23日、米戦略爆撃機「B−1B」2機など米軍用機10機を休戦協定(1953年)以来、初めて海の軍事境界線と称される北方限界線(NLL)を越えさせ、北朝鮮の領空に近い空域で2時間にわたって米軍が軍事示威を行ったことから今回もNLLを越え、北朝鮮領海付近での演習も考えられなくもない。

 今年の米韓の演習はどれも実戦、本番、それも先制攻撃を想定した演習にシフトしている。

 戦略爆撃機「B−1」の飛来も、過去は1年に一、二度程度だったが、今年は毎月、それも直近の3回は、8月31日、9月23日、10月10日と期間が短縮している。予告もなく、夜間に浸透し、爆弾投下訓練を行っている。9月23日の演習では北朝鮮の領空には入らなかったもののNLLから150kmまで北上し、潜水艦弾道ミサイル(SLBM)基地のある新浦沖から120km〜150km、核実験場の咸鏡南道吉洲豊鶏里から130km〜140kmまで飛行していた。

 米軍は今月6日にカリフォルニアのサンティアゴに寄港していた原子力空母「ルーズベルト」も太平洋に向け出港させている。合流すれば、空母は2隻体制となる。空母強襲団は、基本的に核とミサイルの除去及び斬首作戦に投入されるが、その一方で北朝鮮との全面戦争への拡大の抑止の役割も担う。

 韓国の報道によると、北朝鮮で弾道ミサイルを搭載した複数の移動式発射台が移動していることが確認されたようだ。

 北朝鮮が米韓合同軍事演習中にミサイルを発射すれば、トランプ政権は「飛んで火にいる夏の虫」として北朝鮮を叩くのか、早くも最大の山場がやってきそうだ。

(参考資料:軍事オプションに傾くトランプ大統領)