2018年8月1日(水)

 南北・米朝首脳会談後に著しく変化した韓国人の「対北意識」


 韓国の文化体育観光部は昨日(31日)、6月26日から7月6日にかけて世論調査機関の「韓国リサーチ」に委託して全国成人男女1、521人を対象に実施した「南北関係に対する韓国国民の意識調査」結果を発表した。

 それによると、韓国を取り巻く現在の安全保障状況に関する認識では「安定している」(52.9%)と「不安定である」(47.1%)がほぼ拮抗していたが、来年(2019年)の安保状況については「改善される」が84.2%と、多くが楽観視していることがわかった。

 また、朝鮮半島の平和構築のための協力パートナーとしては「南北協力」が70.9%と最も多く、「米韓協調」(17.6%)と「米朝協調」(8.8%)を大幅に上回っていた。文在寅政権の外交・安保政策については75.1%が「よくやっている」と高く評価していた。

 国際社会が最も関心を寄せている北朝鮮の核放棄については43.2%が「放棄しない」と答え、「放棄する」の33.7%を約10ポイントも上回る結果となり、韓国民が悲観的にみていることが明らかになった。

 その理由に関する直接的な設問はなかったが、シンガポールでの米朝首脳会談での約束事項に関する設問では「米国は約束を履行する」が65.1%で、「履行しない」(29.8%)を2倍以上上回ったのに対して北朝鮮については「約束を履行する」が54.9%と、米国のそれよりも10%以上も低く、「履行しない」が逆に39.2%と10%も高かったことからみて北朝鮮への不信感が災いしているようだ。

 従って、今後、韓国民が求める優先課題としては1位が「北朝鮮の非核化措置」で、続いて「平和協定の締結」「南北間の経済協力」「北朝鮮の改革・開放」「南北離散家族の再会」の順となっている。意外なのは「北朝鮮は改革、開放に向かうか」の設問に回答者の85.1%が「YES」と答え、楽観的に捉えていたことだ。

 韓国民の究極的課題である「南北統一」については「長期的に可能」との回答が79.6%もあり、国民10人のうち8人が統一を肯定的に展望していることがわかった。それでも「近いうちに可能」との回答は3.9%と極めて低い。統一に向けての現実的方策としては「斬新的な統一」が望ましいとの回答が最も多く62.9%を占めていた。

 また、「統一によって韓国民が得る社会・経済的利益」に関する設問では「利益は大きい」との回答が64.6%に達し、「利益にはならない」(26.7%)を大きく上回っていた。また、統一税への反感が強かった2010年(李明博保守政権)の調査時とは異なり、統一費用支出に関する質問では半数近い47.1%が統一費用を用意するために追加税金を出すことに賛成していたが、「負担しない」も30.6%もあった。適切な統一税の負担額については「毎月約1、000〜2、000円未満が望ましい」が26.2%と最も多かった。

 なお、韓国民の北朝鮮に対する感情やイメージについては「肯定」と「否定」が交錯しており、現在の韓国民の複雑な感情をそのまま表していることもわかった。

 例えば、78.4%が北朝鮮を「韓国の安全を脅かす対象」と捉え、70.2%が「警戒すべき対象」とみている反面、その一方で77.6%が「力を合わせて協力していく対象」、76.3%が「究極的には統一すべき対象」とみていた。

 今回の世論調査結果については韓国のメディアの見出しも様々で核問題に関する世論調査結果を重視したのが「文化日報」と経済紙「韓国経済」で、文化日報は「北朝鮮の非核化が優先、文政府は直視せよ」との見出しを掲げ、世論調査結果を伝えていた。

 一方、統一問題にウエィトを置いたのが「東亜日報」と「KBS」と「News1」で一斉に「10人中8人が統一は可能」との見出しで報じていたが、「聯合ニュース」は「10人中8人、統一は可能とみているが、最優先政策としては北の非核化」と「統一」と「核」を平行して見出しに載せていた。

 異色なのは保守系の「中央日報」で今回の世論調査では83.6%が「北朝鮮は韓民族(同じ民族)である」と回答していたが、「中央日報」一紙だけは「20代の10人中、3人は『北朝鮮は韓民族ではない』保守化明白」との見出しを掲げ、韓国の若者の3割近くが北朝鮮を同一民族とみなしていないことを強調していた。ちなみに「同じ民族とはみない」との回答は50代では10.5%にとどまっていた。

 同紙は「20代が北朝鮮に対して感じる好感度を表す感情温度は46.6度で、中間数値である50度より低い。これは30〜40代の50度に比べても低い水準だ」と分析していた。