2018年7月23日(月)

 異例中の異例!上半期はゼロの金正恩委員長の軍関連視察

特殊部隊の訓練を視察する金正恩委員長(労働新聞から)


 今年上半期の金正恩委員長の現地指導は国家科学院の視察(1月12日)から始まり、平壌製薬工場視察(1月17日)、無軌道電車工場視察(2月1日)、元山カルマ海岸観光地建設現場視察(5月25日)、平壌大同江水産物食堂視察(6月8日)など経済分野に限定され、軍関連視察は朝鮮人民軍創建日の2月8日に行われた軍事パレードへの出席以外は、一回もなかった。金正日総書記の時代(1994年―2011年)も含めて半年にわたる最高導者の軍部隊視察ゼロは極めて異例のことである。

 金正恩政権発足年の2012年から昨年(2017年)までの上半期の軍関連視察(軍部隊視察と軍事訓練及びミサイル発射参観)を調べると、平均で16回に及ぶ。

 2012年(1月7回、2月4回、3月5回、4月3回、5月2回、6月0回)21回。
 2013年(1月0回、2月4回、3月9回、4月0回、5月1回、6月3回)16回。
 2014年(1月3回、2月0回、3月2回、4月4回、5月1回、6月5回)15回。
 2015年(1月5回、2月2回、3月3回、4月1回、5月2回、6月3回)16回。
 2016年(1月1回、2月3回、3月6回、4月2回、5月0回、6月1回)13回。
 2017年(1月3回、2月1回、3月2回、4月3回、5月5回、6月2回)16回。

 ちなみに昨年(2017年)は1月に第233軍部隊直属部隊と第114軍部隊を視察したのを皮切りにタンク及び装甲車歩兵連隊の冬季渡河攻撃戦術練習を視察。3月は第966大連合部隊指揮部を、4月はタンク兵による競技大会と特殊作戦部隊による渡河及び対象物打撃競技大会を指導し、軍総合打撃示威も参観していた。さらに5月は西海岸の北方限界ラインに近い離島に駐屯している二つの部隊を視察した他、6月は航空及び防空軍の戦闘飛行技術競技大会を参観していた。

 人民軍は毎年12月から1月にかけて冬季訓練を実施しているが、金委員長はこの冬季訓練も敬遠していた。過去5年間で一度もなかった現象だ。

 在韓米軍のブルックス司令官は21日「今、我々は(北朝鮮の)挑発なしに235日を過ごした。(昨年)11月29日に(火星15型)ミサイルが発射されて以来、我々は大きな変化を目撃した」などと述べていたが、北朝鮮によるミサイル発射も上半期は一度もなかった。ちなみに過去3年間は;

 2015年は2月に元山から新型艦隊艦ミサイル(KN-01)を発射したのをはじめ咸鏡南道・新浦で新型艦隊艦ミサイルの発射実験と潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の水中実験(27日)を行い、3月は平安南道・南浦から日本海に向けスカッドC2発とSA地帯空ミサイル7発、黄海北道・サッカンモル一帯から500kmスカッドミサイル2発を発射していた。

 一昨年の2016年は1月6日に核実験、2月7日に平安北道・東倉里から人工衛星と称して事実上の長距離弾道ミサイル(テポドン)を発射したほか、3月には平安南道・粛川から「ノドン」2発を発射。4月にも東倉里から西海に向け短距離ミサイルのほか、中距離弾道ミサイル「ムスダン」を15日、30日と2回日本海に向けて発射していた。

 昨年(2017年)も2月12日に平安北道・亀城からSLBMを地上型に改良した中距離弾道ミサイル「北極星2型」が発射されたのをはじめ3月には東倉里から日本海に向かって弾道ミサイル「スカッドER4」4発と元山から「ムスダン」とみられる中距離弾道ミサイが発射されていた。

 また、4月にも5日、16日に新浦付近から日本海に向けて弾道ミサイル2発が、29日には西部の平安南道・北倉付近から北東方向に弾道ミサイル1発が発射されている。そして、5月には北西部の平安北道・亀城から「火星12号」がロフテッド軌道で発射され、「北極星2型」も平安南州・北倉から北東方向に再度発射されていた。

 金委員長は今年の新年辞で「北と南は情勢を激化させることをこれ以上やるべきではない。軍事緊張を緩和し、平和的環境を作り出すため共同で努力しなければならない」と発言し、弾道ミサイルの発射についても「4月21日から中止する」と公言していたが、現在のところ、行動で示しているようだ。