2018年5月20日(日)

 北朝鮮核実験場の爆破は変更されることはない――その4つの根拠

米国の北朝鮮専門媒体「38ノース」が公開した豊渓里の核実験場


 米韓連合軍が航空戦闘訓練「マックスサンダー」を強行したことを理由に、また北朝鮮の亡命元駐英公使が国会で出版記念会見を行ったとして、北朝鮮は5月16日に予定されていた南北高位級会談をドタキャンし、さらに金桂官第1外務次官の名で「米国が一方的な核放棄を強要するなら米朝首脳会談を再考する」と示唆したことから核実験場の爆破実施を危ぶむ声が出ているが、予定通り23日から25日の間に行われるものとみられる。

 その根拠として以下4つ挙げられる。

 一つは、北朝鮮の対外宣伝サイトが核実験場廃棄のための実務対策が核兵器研究所など該当機関で講じられていると伝えていることだ。

 北朝鮮の対外宣伝サイト「朝鮮の今日」は昨日(20日)、「しっかりと肝に銘じておけ」と題した記事を掲載し、北東部の豊渓里にある核実験場の廃棄について「朝鮮労働党中央委員会第7期第3次全員会議の決定に従い、核兵器研究所など該当機関が核実験中止を透明性をもって担保するため核実験場を廃棄するための実務対策を立てている」と紹介していた。

 同サイトが「(核実験場の廃棄は)板門店宣言の精神に基づき、朝鮮半島非核化のため我が共和国が主導的に推進する非常に意義ある重大な措置である」と強調していることや「世界の国々から支持と歓迎を受けており、韓国からも『非核化を行動で示すとの意思の表れ』と歓迎されている」と述べていることから中止されることはないだろう。

 次に、この北朝鮮のサイトの記事を裏付けるかのように米国の北朝鮮専門媒体「38ノース」が15日に撮影された核実験場周辺の衛星写真に基づき、招待された外国の記者団が爆破場面を安全に観測することができる展望台などを北朝鮮がすでに設置していると19日に報じたことだ。

 この展望台からは西側坑道のほか、昨年9月に水爆実験が実施された北側坑道やまだ一度も使われてない南側坑道の入り口も観察できるようだ。すでに北朝鮮は全ての坑道を爆破するほか、観測施設などを撤去し、研究員らを撤収させると表明している。

 第三に、核実験場に米国、中国、ロシア、英国など外国からの記者団を案内するため元山から核実験場の咸鏡北道・吉洲間の鉄道を補修し、試験運転がすでに行われていることだ。

 北朝鮮は外国記者団を北京から70人乗りの専用機(高麗航空)で日本海に面した北朝鮮東部・元山(葛麻空港)に運び、そこから専用列車で核実験場がある吉洲まで輸送することにしている・元山から吉洲までは約270kmの鉄道が敷かれているが、レールが老朽化していることもあって最大速度は40kmに制限されており、従って、移動には7時間程度かかるものとみられる。

 最後に、取材を許可された外国メディアに北朝鮮が入国手続きを通報していることだ。

 北朝鮮から招待されたABC、CNN,APなど米国のメディアは22日午前11時まで北京の北朝鮮大使館に集まるよう要請されている。

 北朝鮮はビザ取得だけで一人あたり1万ドルを要求していると言われているが、これに元山までの航空料金や吉洲までの専用列車の運賃代や核実験場の取材費を含むと、金額は3倍の3万ドルに膨れ上がる模様だと、外電は伝えている。

 記者らは現地を取材・撮影した後に元山の記者センターを利用し、26日または27日に葛麻空港から専用機で北朝鮮を離れるという。

 ちなみに、南北高位級会談のドタキャンの余波で名簿の受理を拒まれている韓国の記者団(8人)も22日まで北京の北朝鮮大使館に向かうことにしている。北朝鮮は韓国については「通信社と放送局の各1社から4人ずつ、計8人の記者を招待する」と通知していた。

 核実験場の咸鏡北道吉州郡豊渓里は北部には海抜2、205メートル、1,874メートルの山々があり、南部の最も低いところでも海抜は600メートルである。

 北朝鮮は1,500メートルの万塔山高地に垂直で700メートルの坑道を掘って核実験場をつくったが、坑道は釣り針の形になっており、中間には鉄筋コンクリートのドアが幾つもあり、爆発が起きる起爆室の壁や底・天井にも幾重もの鉄筋コンクリートとゴム・亜鉛で層を作って放射能(熱と風)が外部に出ないよう遮断している。

 豊渓里の核実験場は北朝鮮でも最も秘密の場所で、韓国や米国の情報当局も豊渓里周辺のトンネル入口3〜4カ所など外観上現れたところを知っているだけで地下坑道の個数や起爆室(核実験場)をいくつ作っておいたのかは正確に把握できてない。