2018年5月31日(木)

 米朝首脳会談は「メラニア―李雪主」の夫人同士か、「イバンカ―金与正」の娘と妹の組み合わせか

平昌五輪に特使として派遣された金与正党第一副部長に寄り添う金聖愛室長


 米朝は6月12日にシンガポールで予定している史上初の首脳会談に向けて板門店、シンガポール、そしてニューヨークの3箇所で最終調整を行っているが、会談の実現と共にもう一つ注目されるのはファーストレディー同行の有無である。

 トランプ大統領とメラニア夫人との夫婦関係はトランプ大統領の過去の女性遍歴が問題となり、ぎくしゃくしていると伝えられているが、それでも北朝鮮に囚われていた3人の韓国系米国人が保釈され、5月10日深夜に帰国した際にはメラニア夫人が夫と共に空港まで出迎えていたことからシンガポールへのお供には問題はなさそうだ。

 一方、金正恩委員長の場合は、李雪主夫人を4月27日の初の板門店での南北首脳会談だけでなく、3月の初の訪中(25−28日)にも同伴させているので夫人同伴はむしろ望むとこかもしれない。

 米朝双方とも夫人を連れて行けば、雰囲気が和らぎ、和気藹々となったことで成功裏に終わった先の南北首脳会談や中朝首脳会談のように内助の功が奏して会談がはかどるかもしれない。

 通常の首脳会談とは異なり不倶戴天の、国際法的には交戦関係にある両国の会談だけに、また核とミサイルという物騒なテーマを議題とするだけに首脳と参謀だけに絞った会談になるとの見方が一般的かもしれない。

 それでも、気になるのはポンペオ国務長官との最終談判のためニューヨーク入りした金英哲(キム・ヨンチョル)党国務副委員長(統一戦線部部長)率いる北朝鮮代表団の中に紅一点、「金聖恵」(キム・ソンヘ)という名の女性が含まれていることだ。

 彼女の対外的肩書は党中央員会室長となっているが、本職は統一戦線部策略室長。今年51歳の彼女は現在、シンガポールで米国側と儀典関連の交渉をしている金昌宣国務委員会部長(兼金正恩秘書室長)と同じく一昨年亡命した太永浩元駐英公使が先頃出版した著書(「3階書記室の暗号」)で取り上げた金正恩委員長の秘書室のメンバーでもある。

 統一戦線部策略室長という役職が示しているように金聖恵室長は長年、主に対韓、統一部門を担当している。

 朴槿恵前大統領が野党時代に訪朝(2002年5月)した際にも、また故・金大中大統領の夫人(李姫鎬女史)が金正日総書記の葬儀(2012年12月)に出席した際にも、さらには現代グループの女性オーナー、玄貞恩会長が訪朝した際にも必ず接待役として登場し、金正日総書記との会談をセッティングしていた。

 それなりに権限や実力もあって、2013年6月には南北高位級会談実現に向けた実務、交渉では祖国平和統一委員会部長という肩書で北朝鮮側の団長として参加していた。

 金聖恵室長は今年2月に平昌五輪開会式に金正恩委員長の特使として訪韓した金委員長の実妹、金与正第一副部長(宣伝担当)に密着随行していた。また、3月に北京で行われた中朝首脳会談、4月の板門店での南北首脳会談にも随行メンバーとして加わっていた。いずれの会談にも金委員長の夫人と妹が同行していたからである。

 金聖恵室長は金英哲副委員長が団長となって出席した平昌五輪閉会式にも随行していたが、閉会式に米国からトランプ大統領の娘であるイバンカ補佐官がアリソン・フッカー国家安全保障会議(NSC)朝鮮担当部長を伴って出席したからに他ならなかった。換言するならば、この二人の女性と金英哲部長との接触、あるいは会談を想定して派遣されたと言っても過言ではなかった。

 金聖恵室長は4月27日の南北首脳会談には随行したものの南北首脳会談を前に4月5日に行われた儀典、警護、報道に関する実務交渉には金昌宣部長が率いた代表団メンバー(6人)には加わってなかった。

 今回の米朝首脳会談でも金昌宣部長は会談場所や宿泊施設の選定や儀典、警護など米国との実務交渉のためシンガポールを訪れているが、金聖恵室長はシンガポールに行かず、金英哲副委員長と行動を共にし、米国を訪れている。

 金聖恵室長の訪米はどうやらトランプ大統領がメラニア夫人を同伴させるのか、それとも娘のイバンカ補佐官を随行させるのか、あるいは、二人とも連れて来ないのか、その一点にあるようだ。

 米朝接触が噂された平昌五輪では金正恩委員長は対米接触を試み、開会式に妹を特使として派遣したが、米国はペンス副大統領だった。逆に閉会式では北朝鮮は金英哲党副委員長を送ったところ、米国はイバンカ補佐官だった。結局のところ、いずれも噛み合わず、ちぐはぐとなり、五輪での米朝接触は不発に終わってしまった。

 世紀の米朝首脳会談のパートナーが「メラニア―李雪主」の夫人同士の組み合わせになるのか、それとも「イバンカ―金与正」の娘と妹の組み合わせとなるのか、あるいは女性抜きの会談になるのか、これまた興味津々である。