2019年4月11日(木)

 韓国紙「建造中の北朝鮮3千トン級新型潜水艦は原潜?」と報じる

SLBM「北極星1」を発射した北朝鮮の潜水艦(労働新聞から)


 韓国紙・朝鮮日報は4月5日付で日本海に面した新浦で北朝鮮が「3千トン級の潜水艦を建造中」と報じていたが、韓国の日刊紙「文化日報」は昨日(10日)、「北朝鮮は2009年から核(原子力)潜水艦部品を輸入していた」との記事を掲載し、この3千トン級新型潜水艦が原子力潜水艦の可能性について言及していた。

 ▲台湾から原潜用の特殊看板鋼板を密輸

 北朝鮮軍で対外事業(貿易)に勤務していた脱北者が同紙に明らかにしたところによれば、今から10年前の2009年当時、最高権力機関であった国防委員会(国務委員会の前身)が対外事業局に対して原子力潜水艦用の特殊看板鋼板を輸入するよう指示していたことのことである。対外事業部はこの指示に従い、5年後の2014年に台湾から特殊鋼板を密輸入したが、この時点では「物理的成分が調達できず、完成品を生産できなかった」(亡命者)とされている。

 台湾は先日、自由アジア放送(RFA)が「北朝鮮軍部が潜水艦を台湾に売り込もうとしていた」と取り上げたばかりであった。北朝鮮が中国軍の脅威に対抗するための台湾の潜水艦建造事業に参入しようとしていたとは驚きだ。

 「文化日報」は北朝鮮が2009年から原子力潜水艦関連部品の調達を企図し、実際に2014年に部品の輸入に成功した事実からして実際に原潜を建造中である可能性が十分にあると分析している。

 同紙は現在建造中の3千トン級の潜水艦が原子力潜水艦であると想定したうえで「SLBM(潜水艦弾道ミサイル)は攻撃を受ければ脆弱なため原子力潜水艦に搭載してこそミサイル体制を保護し、かつ威力を発揮できるので、新浦造船所で建造中の潜水艦が原子力潜水艦の可能性を排除できない」との韓国国防安保フォーラムのムン・グンシク対外協力局長のコメントを掲載していた。

 原子力潜水艦は動力に原子炉を使用する潜水艦である。高温高圧の水蒸気を発生させる熱源として原子炉が利用される。北朝鮮は実験用だが、すでに自前の軽水炉を建設、稼働済だ。仮に小型加圧軽水炉もつくれるなら、原子力潜水艦も不可能な話ではない。

 北朝鮮は1990年代には軽水炉を開発できなかった。軽水炉については1994年のジュネーブ合意に基づいて米国が北朝鮮の核放棄の見返りに新浦に2003年までに100万kwの軽水炉を2基建設する約束をしたが、その後、ジュネーブ合意の破綻で工事は打ち切れたままとなっている。

 軽水炉を独自に開発できる国は国連常任安保理事国である米国、ロシア、英国、フランス、中国の5か国とカナダ、インド、日本、韓国の9か国に限られ、建設は容易ではない。

 

▲軽水炉を短期間で建設

 ところが、北朝鮮は2009年4月、「人工衛星」の発射を国連安保理が非難するや「軽水炉を自ら建設する」との外務省声明を出し、4年後の2013年には早くも実験用ではあるが、自前の軽水炉を完成させていた。遥か前から研究、開発に着手していなければ4年という短期間ではとてもできない話だ。

 金正日総書記生存中、当時人民武力部副部長の金光鎮次帥が朝鮮革命博物館を訪れた金総書記に原子力潜水艦の模型の前で何やら説明していた映像が金正恩政権下の2012年7月14日に流れたことがあった。

 この映像を分析したある在米韓国人軍事専門家によると、ロシアのデルタ4級潜水艦はミサイル垂直発射台空間が展望塔になっているのに対し、北朝鮮の新型原子力潜水艦は弾道ミサイル垂直発射台空間が展望塔の前にあったとのことだ。

 建造中の3千トン級の潜水艦がいつ完成するのか、「秘密の国」だけに把握するのは至難だが、これまた北朝鮮が「水中戦略核爆弾」と呼称している開発中のSLBM「北極星3」とリンクしているものとみられる。

 北朝鮮がICBMの発射実験を再開すれば、3千トン級の新型潜水艦の実体もわかるが、金委員長が弾道ミサイル発射猶予を解除しない限り、確認のしようもない。